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砂漠の月  作者: 沖津 奏
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04 宣戦布告

「魔王が・・・!奴は正気か!」

 王城に声が響いた。

「落ち着け、セ。」

 横でたしなめているのはハルキア軍大将、ド=ジラルガンだ。叫んだのは弟のセ=ジラルガン中将だ。

「しかし、トルキアの魔王は本当に何を・・・。ハルキアとダルキアに同時開戦など・・・気がふれたとしか思えない。」

 トルキアのハルジー王がハルキアとダルキアに宣戦布告をしたのだ。

「ダカン国王は中立を守るらしい。これはあくまでルキア三国・・・いや、ルキア王国の内乱ととらえるようだ。」

 ド=ジラルガン大将が冷静に言った。

「ジラン様、ダルキアと同盟を組むべきです。我等は防御魔法に秀でてはいますが、攻撃魔法ならダルキアの方が強い。ダルキアも防御魔法は我が国に劣ります。必ず同盟を許可しましょう。一国なら勝てずとも、ダルキアと組めば・・・。」

「ならん!」

 ジランは叫んだ。

「ダルキアはかつてのルキアの血を引く。同盟を組んだ後、たとえトルキアに勝ったとしても、必ずダルキアと争うことになる。それよりは、防御魔法をありったけ使って、まずはハルジーにダルキアを攻めさせるのじゃ。その後どうなろうとも・・・ハルキアがトルキアの下に降ることになっても、ルキア一族に降るよりはましじゃ。」

 聞く耳を持たない。仕方なく、ダルキアからの同盟を希望する使者も皆断った。

 ド=ジラルガン大将を中心に、対トルキア戦の準備が進められた。国内の使える魔術師を集めた。各将軍に一人を必ず参謀としてつけ、余ったものは前線と王都周辺に組み込んだ。


 いよいよだ。銀の鎧を着けたスナアシに、武装した兵士とハルキアの紋章が入った衣を着た魔術師が乗る。ハルキアの紋章は双頭の蛇だ。バヌーク砂漠といって、ハルキアとダルキアとトルキアの国境線が交わる地点にある砂漠が戦場だ。広大な赤っぽい砂の波に陣を構える。

「敵はトルキアだけではない。混乱に乗じてダルキアが攻めてくるかもしれない。」

 敵は人間だけでもない。

「ジゴクサナギにも気をつけろ。捕まった奴は、悪いが捨ててゆくからな。」

 灼熱のバヌーク砂漠には、ジゴクサナギという大きな虫がいる。大の男を越す体長のものもいるらしい。砂の中に住んでいて、はっきりと姿を見た者はないが、人や、とにかく動物を砂の中に引き込んで食べるのだ。その代わり、奴のいる巣は不自然に砂が盛り上がる。注意していれば大したことはないが、戦いの中でそこまで状況を見れるかは怪しい。防御魔法にも限度がある。大きなものは、勢いで結界を突き破ることもある。

 最近ますます病気の重くなってきた国王を王都に残し、戦場にはクナ姫が行くことになった。表に立つことはないが、防御魔法ならハルキア一の使い手だ。


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