39 新王 ユピテル
クナは押し黙った。
しかし、それに助け船を出すようにジラルガンが口を開いた。
「姫様、私からもジラン様に申しておきます。どうかテジン様も深くはお考えなさいますな。」
ダカン国王ハクドや、ダルキアの援軍として駆けつけてきたガリシクとはその場で別れ、ハルキア軍とダルキア軍はトルキアから撤退することになった。トルキア兵はハルジーの遺言に忠実に、テジンを新たな王として迎え、テジン達を元の国境まで見送ると申し出た。
「テジン様、国に帰ってから正式な即位式となりますが、何とお呼びすればよろしいでしょうか?」
ナルーがテジンに言った。
ルキアでは王は代々即位の際、それまでの王子時代の呼称を改めるのが習わしとなっている。ダルキアもそれを引き継ぎ、トルキアとハルキアも今はそれに習っている。
まだそんな心づもりも出来ていなかったのだろう、テジンは暫く戸惑ったような素振りを見せた。そして、ゆっくりと口を開いた。
「では・・・ユピテル、と。俺は、全ての者の平安を願う。」
兵達がざわついた。
「ユピテル様・・・。」
ユピテルは古代ルキアの言葉で、平和や調和、安息を意味する。
ナルーが誇らしげな顔をしている。
黒雲は晴れて、いつの間にか陽が差している。テジン、いやユピテルは帰り支度をするよう命じた。
そこへ、トルキア兵がやってきた。
「ユピテル様・・・。」
「どうした。」
「キナリ様のお体、いかがいたしましょう。」
気まずそうに言う。なにしろ、さっきまでは自分の上官だったのだ。
「丁重に葬ってやれ。」
ありがとうございます、と一礼して兵は下がろうとした。しかし、ユピテルがそれを呼び止めた。




