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砂漠の月  作者: 沖津 奏
38/41

38 告白

「テジン様、ゴダーイ様が・・・身罷られましてございます・・・!」

 その場の空気がはりつめた。

「そんな・・・いったい、いつだ。」

 ショックを隠しきれない様子で、テジンが尋ねた。

「はっ。二日前の夕方に・・・。テジン様にご遺言がございます。」

「申せ。」

「書記官が一言一句洩れることなく写しとりましたので、これをどうぞ。」

 差し出された封筒を乱暴に破り、テジンは中から紙を取り出した。

 緑の目が紙の上を舐めるように読んでいく。下へ移るにつれ、テジンの手は震えた。

 読み終えると手紙をぐしゃっと握り潰し、その目には恐怖があった。

「どうしよう、ナルー。父上はダルキアの全てを私に明け渡すとおっしゃっている・・・。」

「では・・・!ダルキアの新王は!」

 人々が期待の入り交じった声で囁きあった。

「私だ。」

 歓声があがる。それと裏腹に、テジンは青ざめている。ナルーが話しかけた。

「どうなさったのです。確かに父君の死は残念なことです・・・でも、これからはテジン様がダルキア国王として君臨なさるのですよ。」

「それはそうだが・・・不安で仕方がないのだ!私はトルキアの地も治めねばならぬというのに・・・!」

 テジンがますます顔を青くして唸る。

 その時、クナがテジンの手をそっと握った。テジンはまるで雷に撃たれたかのような表情だ。

「大丈夫です。大丈夫です、テジン様なら。」

 戦いに気を向けすぎて、すっかり忘れかけていた。胸がほっと温かくなる。心臓の鼓動がいつもより大きい気がした。

「姫様。いや、クナ。」

 はい、と返事をして、クナは一歩踏み出そうとするジラルガンを制した。

「どうしても伝えたいことがある。言わずに死んでしまった時・・・どうしようもないくらい後悔した。」

 テジンはクナの目をまっすぐ見つめた。クナの白い頬に、うっすらと赤みがさす。

「いつの頃だったか初めて見た時からずっと、お慕いしておりました。」

 クナが赤くなって俯く。その頬に手を添え、テジンはまた目を見つめた。

「どうかこれから先・・・このルキアの地を、俺と一緒に見守ってほしい。」

 クナは震える手でテジンの手に触れると、はい、と消え入りそうな声とともにこくんと頷いた。

 回りの者が興味津々で見ている。

「約束してくれるか、何年先もこの地をその微笑みで守ると。」

「はいっ!」

 磁石が吸い寄せられるように、歓声の中、二人は抱き合った。

 ジラルガンは拗ねたようにしていたが、ふとクナに言った。

「姫様・・・しかし、ジラン様はなんとおっしゃいましょう。」


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