38 告白
「テジン様、ゴダーイ様が・・・身罷られましてございます・・・!」
その場の空気がはりつめた。
「そんな・・・いったい、いつだ。」
ショックを隠しきれない様子で、テジンが尋ねた。
「はっ。二日前の夕方に・・・。テジン様にご遺言がございます。」
「申せ。」
「書記官が一言一句洩れることなく写しとりましたので、これをどうぞ。」
差し出された封筒を乱暴に破り、テジンは中から紙を取り出した。
緑の目が紙の上を舐めるように読んでいく。下へ移るにつれ、テジンの手は震えた。
読み終えると手紙をぐしゃっと握り潰し、その目には恐怖があった。
「どうしよう、ナルー。父上はダルキアの全てを私に明け渡すとおっしゃっている・・・。」
「では・・・!ダルキアの新王は!」
人々が期待の入り交じった声で囁きあった。
「私だ。」
歓声があがる。それと裏腹に、テジンは青ざめている。ナルーが話しかけた。
「どうなさったのです。確かに父君の死は残念なことです・・・でも、これからはテジン様がダルキア国王として君臨なさるのですよ。」
「それはそうだが・・・不安で仕方がないのだ!私はトルキアの地も治めねばならぬというのに・・・!」
テジンがますます顔を青くして唸る。
その時、クナがテジンの手をそっと握った。テジンはまるで雷に撃たれたかのような表情だ。
「大丈夫です。大丈夫です、テジン様なら。」
戦いに気を向けすぎて、すっかり忘れかけていた。胸がほっと温かくなる。心臓の鼓動がいつもより大きい気がした。
「姫様。いや、クナ。」
はい、と返事をして、クナは一歩踏み出そうとするジラルガンを制した。
「どうしても伝えたいことがある。言わずに死んでしまった時・・・どうしようもないくらい後悔した。」
テジンはクナの目をまっすぐ見つめた。クナの白い頬に、うっすらと赤みがさす。
「いつの頃だったか初めて見た時からずっと、お慕いしておりました。」
クナが赤くなって俯く。その頬に手を添え、テジンはまた目を見つめた。
「どうかこれから先・・・このルキアの地を、俺と一緒に見守ってほしい。」
クナは震える手でテジンの手に触れると、はい、と消え入りそうな声とともにこくんと頷いた。
回りの者が興味津々で見ている。
「約束してくれるか、何年先もこの地をその微笑みで守ると。」
「はいっ!」
磁石が吸い寄せられるように、歓声の中、二人は抱き合った。
ジラルガンは拗ねたようにしていたが、ふとクナに言った。
「姫様・・・しかし、ジラン様はなんとおっしゃいましょう。」




