36 光
「全力を尽くします・・・失敗しても何度も試せば良いのですから。」
クナもまた、手を強く握り返した。
「この魔法は目そのものを移すのではなく、目の力を移します。しかし、テジン様は魔力のお強い方ですから、同じように魔力の強い方の目が必要なんです。」
回りの者達は目を見合わせた。テジンと同じくらい強い魔力の持ち主など、限られている。ガリシクとて足りるか分からないほどだ。
その時、ナルーが偵察に出していた兵達が走って帰って来た。
「ナルー様、申し上げます!影の森の湖近くで、キナリが死んでいるのを確かに確認しました!」
ナルーがはっとした。
「クナ様・・・亡くなった者の目ではいけませんか。」
「どういうことです。」
驚いてクナが聞き返す。
「キナリの目であれば・・・彼は魔力も非常に強い。」
クナは戸惑った。仮にもテジンにキナリの目を使うなど、なんだか嫌な気しかしない。
「クナ姫様、やっていただけないでしょうか?」
テジンの声にふと我に返る。テジンの目はかすかにクナとずれた所に焦点があった。
「分かりました。やってみます。でも、どうなるか保障は出来ません。亡くなった者の目を使ってなど、私はやったことがありませんし・・・。」
構いません、とテジンは答えた。
ナルーが部下を使って、キナリの体を運ばせた。キナリの体は血まみれで、クナは思わず目を背けた。
ザードの描いたのとは別に、新たに魔法陣を描く。中央にキナリを横たえ、クナは薄手の碗を持ってキナリの顔の横にしゃがんだ。
不老の魔法とは聞いていたが、いったい見た目で歳の分からない顔だ。外見だけで瞬時に判断するなら、二十代前半か、クナ達と同じくらいだろう。ルキア分裂の十五年戦争から生きているのだから、相当な歳になるのは確かだ。
クナは呪文を唱え始めた。
「・・・ジルラハント・イエ・ダ・シャリデア・・・」
キナリの頬に、涙が一滴伝った。クナが小皿にそれを受け止める。
「テジン様・・・これをお飲みください。」
おそるおそる受け取ったテジンは、注意しながらそれを口元に持っていき、一気にあおった。




