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砂漠の月  作者: 沖津 奏
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35 還

「テジン様・・・!」

 泣きそうな声で呟いた。

 それに合わせたかのように、テジンがふっと目を開けた。

「う・・・。」

 一言呻いて、手をついて起き上がった。

「テジン様!」

 ナルーやガリシク達も駆け寄った。

「テジン様が目を開けられた!」

「テジン様万歳!ザード様万歳!」

 ナルーがしゃがみこみ、ザードの目を見て言った。

「ザード殿・・・ありがとうございましす。誠に・・・感謝してもしきれません。」

 しかしザードは険しい表情だ。

「喜ぶのはまだ早い・・・どんな責があるかわかりませんぞ。」


「テジン様・・・良かった・・・。」

 兵達の見ている前にも関わらず、クナはテジンに抱きついた。暫くそうして後、テジンから離れると、再びいとおしそうに見つめた。

 だがテジンは何が何やら分からない様子だ。そして、次の言葉に全員が愕然とした。


「この声・・・クナ姫様?」


 テジンは辺りを手探りした。

「テジン様・・・?」

「クナ姫様、どこにいらっしゃるのです。ナルー・・・ナルーは!」

「どこって・・・。」

 ナルーの声がした。テジンは左右を見回す。相変わらず、どこだと繰り返す。

 ナルーが答えた。

「私はテジン様の左に・・・クナ姫様は目の前にいらっしゃるではありませんか。」

「目の前にって・・・こう暗くては何も見えないではないか。」

「え・・・。」

 嫌な沈黙が流れた。

「テジン様・・・まさか・・・。」

「目が・・・!!」

 ざわめきが大きくなる。

 テジンは自分の目に手をやった。そして、茶色い目を見開いてぽつりと呟いた。

「そんな・・・俺にはまだ見たいものはたくさんあるのに。」

 ナルーがザードを振り向く。ザードは目を閉じて首を横に振った。

「これが・・・責でしょう。」

「これが・・・。ザード殿、なんとか光を戻す方法はないのですか。」

 詰め寄るナルーに、ザードは無理ですよ、と首を振る。

「私の使う魔法とは質が違いすぎる。」

 ザードがそう言った時、突然声が上がった。

「私が・・・。」

 皆が振り向く。クナがテジンの手をとった。

「私なら、出来るかもしれない。」

「本当に!?クナ姫様、どうか乗りかかった舟です。お願いします。」

 ナルーが頭を下げる。

「でも、私のも成功するとは限らないし・・・。」

「いや、俺からも頼もう。」

 テジンが言った。

「歴代の王の中には盲目の者もいなかったわけではない。だが、俺にはまだ見たいものがあるのだ。」

 そう言ってクナの手を強く握った。


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