33 分岐点
「私に、テジン様を生き返らせよとおっしゃるのですか?」
ザードがナルーを見据える。ナルーは一歩退いた。
「ご自分が言ったことを理解しておいでか?甦りの魔法は禁忌の魔法、黒魔術ですぞ。」
暗い表情でナルーはうつむいたっきり、言葉を返せない。
「ザード、でもあなたは甦りの魔法を習得した、そう聞き及んでいます。」
クナがよく響く声で呟いた。
「姫様・・・何のために私が地の果てまで旅をし、甦りの魔法を習得したとお思いですか?姫様は私が旅立つ時、その訳をお耳にしたはずです。」
クナは涙を流した。雫が熱い。
ザードが甦りの魔法を習得するために旅に出たのは、今から十年前のこと。その時ザードは娘が一人いたが、ある時病気で亡くなってしまった。ザードは妻も早くに亡くしていたので、とても悲しみ、何とかして魂を呼び戻す方法を身に付けようとした。そしてジランの許可を得て、地の果てと言われるナリム王国へ行ったのだ。
しかし、甦りの魔法は誰にでも使えるわけではなく、習得できる人に規則性はないらしい。その上、再びこの世に呼び戻せる人はたった一人なのだ。
分かっている。ザードにとっては、テジンよりも娘が大事だ。救えるのが一人きりであっては、わざわざ生き返らせてはくれないだろう。
しかし、ザードはクナをしっかりと見て言った。
「承知しました、姫様。テジン様を再びこの世に呼び戻せるよう努力いたします。」
全員がはっと息を飲んだ。クナが皆の気持ちを代弁するかのように話す。
「しかし、ザード・・・あなたは一人娘のために魔法を習得したのではないのですか。救えるのは一人だけのはずです。」
ザードは首を横に振った。
「私の娘は・・・もうこの世に呼び戻せないのです。ここいらには甦りの魔法について、あまり噂も届きませんでした。だから、知らなかったのです。・・・甦りの魔法が使えるのは、まだこの世に魂が引き留められているほんの僅かの間だけ。どれだけ留まるかは人それぞれのようですが、私の娘はもういません。試したのです。村に帰ってからというもの、毎日。けれど、だめでした。いえ、もともと分かっていたのです。私の娘は呼び戻せないと。けれど、口実が欲しかった。何でもいいから打ち込んで、忘れたかったのです。ですからこの力、今使わずしていつ使いましょう。他ならぬクナ様の頼みですから。」
「ザード・・・。」
クナが涙の奥で微笑む。
「ありがとうございます・・・!」
ナルー が地に伏して礼を述べた。
しかしザードは険しい口調で言った。
「ただし、この魔法は完璧ではないのです。」




