表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
砂漠の月  作者: 沖津 奏
29/41

29 怒り

 固い音がして、床の隅の一つが砕けた。同時に、クナが倒れている周辺の床に、黒い陣が浮かび上がる。

 キナリはいまいましそうにそれを見た。

「やっぱりな・・・。」

 テジンがにやりとする。

「蜘蛛の巣の魔術か。手の込んだことを。」

 壊れた床には破片と一緒に、黒い石が置いてある。テジンが魔力を飛ばして石を壊すと、陣はすうっと消えた。

 キナリがクナの方へ歩み寄り、腕を掴んだ。

「ティラナ・・・。」

 悲しげな目に見据えられ、クナは驚いた。

 キナリは手に持った剣の切っ先をクナの首筋に当てた。

「キナリ!」

 テジンが攻撃魔法を使った。キナリはクナを抱え、ひらりとかわした。

「ティラナはお前には不釣り合いだ。」

「クナはティラナじゃない!」

 怒りを制御出来ずに、テジンの剣から魔力の玉が飛び出した。クナの足元で破裂する。

 衝撃で金縛りの魔法が解けたのか、クナはキナリの手を振り払い、テジンの方へ駆け寄った。テジンはクナを背にして立った。

 キナリの手が虚空を掴む。

「私のことを・・・覚えていないのか?」

 呟きが城の軋みに掻き消えた。

「あんなにも誓い合った仲なのに・・・他の者のものになるくらいなら、共に死のうと誓ったではないか、ティラナ!」

 叫び声と共に、火の玉が飛んできた。クナとテジンは同時に結界をはった。


「クナに―――クナに手を出すな!」


 テジンは剣を構え、キナリに向かって走っていった。

「どけ小僧、貴様ごときにティラナとルキアを渡してたまるか!」

 キナリは杖を持ち、大きな円を描いた。黒い炎がテジンを包む。

 テジンは剣を盾にし、それをしのいだ。そして、その炎を巻き込んでキナリに火の竜を差し向けた。

 狙いは逸れ、竜は玉座に衝突して消えた。

 それと同時に、城が大きく揺れた。天井が歪んでいるのが分かる。降ってくる砂の量が増え、粒も大きくなった。

 グラリと揺れるのに合わせたように、ガリシクが部屋に転がり込んできた。

「ガリシク殿!」

「あっ、テジン殿!ご無事で!」

 その一瞬の隙を逃さず、キナリは攻撃魔法を使った。

 キナリの攻撃から二人を守るようにしてテジンが走り出て、立ち塞がる。

 手で庇うこともせずに、テジンが床に倒れ伏す。月光の衣に赤いシミがあった。衣に覆われていない足がざっくりと切れている。

「クナを連れて逃げろ!」

 ガリシクは既にクナを守るように抱えていたが、テジンを見て叫んだ。

「テジン殿は・・・!」

「悪いが俺は動けぬ、早くしろ!城が崩れる!」

 キナリが攻撃魔法を仕掛ける。テジンは結界をはるので精一杯だった。

「早く!」

「しかし・・・。」

 ガリシクはまだもたついている。

「言っただろう、俺の命令には従うと。行け!命令だ!」

 ぐっと目を瞑ると、ガリシクはクナを抱えて駆け出した。

「ガリシク様!待って、まだテジン様が!」

「姫、それだけはご勘弁ください!」

 砂埃にむせながら、クナは腕輪を外した。そして、テジンに向かって投げた。いくつか宝石のはめられた金の腕輪は、放物線を描いて落ちた。


「ふん・・・貴様、姫を逃がしてそれで安心したつもりか。愚か者めが!」

 キナリの叫び声に重なるように、石が本格的に崩れ始めた。

 その一瞬の隙間を縫って、キナリが襲いかかる。

「終わりだ!」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ