22 骨の林
テジン達は林の中にいた。薄暗く、一歩先を薄絹のような霧が覆う。木々は灰色で、枯れた部分が白い。たまに魔物の叫び声が響いた。ここは、トルキア領内にある骨の林だ。
スナアシが地面を踏みしめる度に、何かが折れたり割れたり、カサカサという音がする。地面は白いような、灰色のようなもので覆われている。
「テジン様・・・早く抜けましょう。ここは本当に恐ろしい。トルキアの者も近寄らぬというではありませんか。」
テジンは低く落ち着いた声で答えた。
「死にたくなければ、心を乱すな。魔物に出会っても堂々としていろ。さもなくば、こいつらみたくなるぞ。」
「え、こいつらって・・・。」
視線を下に落とす。だが、やはり灰色のようなものがあるだけだ。
「まさか・・・!」
「そうだ、この石か木の枝かわからぬものは、骨だ。」
ひっ、と小さな悲鳴があちこちから上がる。
「怯えるな。下手に騒いだりしなければ大丈夫だ。それに、俺がいるんだぞ?魔物なんかに負ける筈がないだろう。」
兵の表情に希望が舞い戻る。テジンは少しほっとした。しかし早く出てしまいたいのもやまやまだ。
ふいに、パキッと枝の折れる音がした。テジン達ダルキア軍のたてた音ではない。進行方向から聞こえてきた。
「ま・・・魔物!?」
ダルキア軍が立ち止まる。
テジンは霧の向こうを強く睨んだ。
違う、魔物じゃない―――。
「トルキアだ!戦闘用意!」
慌てて構えさせる。
「水球の魔法を使え!下手に火なんか使うと燃えるからな。しっかり狙えよ。」
トルキアの司令官の合図と同時に、いくつもの水の球がテジン達を襲った。
「くっ・・・恐れるな、ただの水だ!」
ひたすら防御魔法で盾をつくる。
こんな時にはやはりハルキアの魔法の腕を羨ましく思う。だが、テジンは手応えを感じた。
そして、トルキアの水球の一瞬の隙をついて命令した。
「ここだ!一気に攻めろ!」
命令に従って、ダルキア軍がスナアシを走らせる。
早く骨の林から出たい―――その思いが勝るのか、数では圧倒的に勝っているトルキア兵に突っ込んでいく。トルキア兵は泡をくって背を向けた。
「退却!退け!遅れをとるな!」
司令官が叫ぶ。言われずとも、皆勝ち目のないことを悟ったのだろう。必死の形相で逃げていく。
「追え!」
勢いづいたダルキア軍は我先にとスナアシの腹を蹴る。地面では、いつから転がっているのか見当もつかない骨が、音を立てて割れていた。
「走れ!いいか、遅れると死ぬぞ!」
手綱を握った司令官が部下を励ます。だが、その口元には不敵な笑みがあった。
「よもや囮と思うまい・・・なにせ、弱い兵を前面にもってきたのだからな。」
その思惑通り、テジンは確信をもって追ってくる。雑魚相手に簡単に勝って、自軍に自信をつけさせるつもりか。だが、そうはさせるものか。
そろそろ林が終わる。霧が晴れてきた。




