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砂漠の月  作者: 沖津 奏
22/41

22 骨の林

 テジン達は林の中にいた。薄暗く、一歩先を薄絹のような霧が覆う。木々は灰色で、枯れた部分が白い。たまに魔物の叫び声が響いた。ここは、トルキア領内にある骨の林だ。

 スナアシが地面を踏みしめる度に、何かが折れたり割れたり、カサカサという音がする。地面は白いような、灰色のようなもので覆われている。

「テジン様・・・早く抜けましょう。ここは本当に恐ろしい。トルキアの者も近寄らぬというではありませんか。」

 テジンは低く落ち着いた声で答えた。

「死にたくなければ、心を乱すな。魔物に出会っても堂々としていろ。さもなくば、こいつらみたくなるぞ。」

「え、こいつらって・・・。」

 視線を下に落とす。だが、やはり灰色のようなものがあるだけだ。

「まさか・・・!」

「そうだ、この石か木の枝かわからぬものは、骨だ。」

 ひっ、と小さな悲鳴があちこちから上がる。

「怯えるな。下手に騒いだりしなければ大丈夫だ。それに、俺がいるんだぞ?魔物なんかに負ける筈がないだろう。」

 兵の表情に希望が舞い戻る。テジンは少しほっとした。しかし早く出てしまいたいのもやまやまだ。



 ふいに、パキッと枝の折れる音がした。テジン達ダルキア軍のたてた音ではない。進行方向から聞こえてきた。

「ま・・・魔物!?」

 ダルキア軍が立ち止まる。

 テジンは霧の向こうを強く睨んだ。

 違う、魔物じゃない―――。

「トルキアだ!戦闘用意!」

 慌てて構えさせる。


「水球の魔法を使え!下手に火なんか使うと燃えるからな。しっかり狙えよ。」

 トルキアの司令官の合図と同時に、いくつもの水の球がテジン達を襲った。


「くっ・・・恐れるな、ただの水だ!」

 ひたすら防御魔法で盾をつくる。

 こんな時にはやはりハルキアの魔法の腕を羨ましく思う。だが、テジンは手応えを感じた。

 そして、トルキアの水球の一瞬の隙をついて命令した。

「ここだ!一気に攻めろ!」

 命令に従って、ダルキア軍がスナアシを走らせる。

 早く骨の林から出たい―――その思いが勝るのか、数では圧倒的に勝っているトルキア兵に突っ込んでいく。トルキア兵は泡をくって背を向けた。

「退却!退け!遅れをとるな!」

 司令官が叫ぶ。言われずとも、皆勝ち目のないことを悟ったのだろう。必死の形相で逃げていく。

「追え!」

 勢いづいたダルキア軍は我先にとスナアシの腹を蹴る。地面では、いつから転がっているのか見当もつかない骨が、音を立てて割れていた。


「走れ!いいか、遅れると死ぬぞ!」

 手綱を握った司令官が部下を励ます。だが、その口元には不敵な笑みがあった。

「よもや囮と思うまい・・・なにせ、弱い兵を前面にもってきたのだからな。」

 その思惑通り、テジンは確信をもって追ってくる。雑魚相手に簡単に勝って、自軍に自信をつけさせるつもりか。だが、そうはさせるものか。

 そろそろ林が終わる。霧が晴れてきた。


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