21 闇への誘い
「王のご容体は!?」
「テジン様にお怪我は無いな!?」
ダルキア王宮は蜂の巣をつついたような騒がしさだ。
テジンは自室に籠り、青ざめていた。椅子にはセ=ジラルガンとナルーがいる。
「王子・・・お辛いでしょうが、今こそ堂々としていて下さい。皆不安なのです。」
ナルーが小声で囁く。
「分かっている・・・けれど、どうしよう。私は今まで王になることを考えなかった。そりゃあ、いつかは王になる。だが、こんなにも・・・だめだ、私はまだ王の器量ではないんだ。何としても父上には助かっていただかなくては。」
独り言のようにぶつぶつと呟く。ナルーとジラルガンは顔を見合わせた。
「王子。もしこれがまことトルキアの計略でありましたなら、もしや我々が組んだからでは・・・?」
「そうかもしれぬ。父上が亡くなればダルキアは混乱する。少しの間でも隙を作れば、そこから攻めることだって出来る。」
少し落ち着いたテジンは暫く黙って考えた。
「すぐに兵を整えろ。ジラルガン殿も、いつでも出立出来るようにしておいて下さい。」
「な・・・王子、こんな時に国を離れるおつもりですか!?」
ナルーとジラルガンがびっくりしている。
「こんな時だからこそだ。トルキアは混乱が大きくなるのを待っている。きっと大軍で押し寄せるはずだ。先にこちらから攻める!もう宣戦布告はしてあるのだからな。」
「ハルジー様!キナリ様!大変です!ダルキアとハルキアが組んで攻めてきました!」
トルキア王宮に声が響き渡る。キナリはそれを聞いてほくそ笑んだ。
「わざわざ来たのか・・・こちらから行く手間が省けたわ。」
そして、全軍を終結させるよう命令した。
「敵の数は?」
「ダルキアとハルキア、合わせて一一〇万ほどです。・・・キナリ様、失礼ですが勝算はあるのですか。」
キナリは得意そうに笑った。
「怯えるな。我等はどこよりも強い魔術の国だ。命令通りに動けば何一つ困りはしないさ。」
強気なキナリの表情に、トルキアの将軍は皆安堵した。
テジン達はすでに都を狙って進軍している。だが、これもキナリの計算の内だった。
「気を抜くな。どこに仕掛けがしてあるか分からんからな。」
いつもの月光の衣を纏ったテジンが、スナアシを操りながら言う。
実際、テジン達の使う魔術と違って黒魔術は高度だ。質が問われる。キナリや魔王だって、他国を侵略しようなどと思わなければ、その高い魔力を評価されるだろう。
「来た!テジン達だ。ご命令通り、奴らを王宮のキナリ様のもとまでおびき寄せるのだ。」
トルキア兵が一斉に杖を構えた。
「撃て!」
司令官の声と共に、青白い玉が飛び出る。
「止まれ!」
テジンの命令に、軍が止まった。
「ジラルガン殿、別れましょう。」
「先にお行き下さい。この程度、我等にお任せを。」
ありがたい、と言うとテジンは、ダルキア軍を率いて離脱した。
「どうなさいますか。」
「少々回り道になるが、このまままっすぐトルキア王宮に行く。一気に攻め落とすぞ。」
砂ぼこりをあげてスナアシが走る。
「くく・・・来い、テジン。」
トルキア王宮でキナリが鏡を見ながら怪しく笑う。その鏡には、テジン達が映っていた。
「骨の林は突破させてやる。兵士に自信をつけてやれ。トルキア王宮にてその希望を打ち砕いてやる。」




