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砂漠の月  作者: 沖津 奏
21/41

21 闇への誘い

「王のご容体は!?」

「テジン様にお怪我は無いな!?」

 ダルキア王宮は蜂の巣をつついたような騒がしさだ。

 テジンは自室に籠り、青ざめていた。椅子にはセ=ジラルガンとナルーがいる。

「王子・・・お辛いでしょうが、今こそ堂々としていて下さい。皆不安なのです。」

 ナルーが小声で囁く。

「分かっている・・・けれど、どうしよう。私は今まで王になることを考えなかった。そりゃあ、いつかは王になる。だが、こんなにも・・・だめだ、私はまだ王の器量ではないんだ。何としても父上には助かっていただかなくては。」

 独り言のようにぶつぶつと呟く。ナルーとジラルガンは顔を見合わせた。

「王子。もしこれがまことトルキアの計略でありましたなら、もしや我々が組んだからでは・・・?」

「そうかもしれぬ。父上が亡くなればダルキアは混乱する。少しの間でも隙を作れば、そこから攻めることだって出来る。」

 少し落ち着いたテジンは暫く黙って考えた。


「すぐに兵を整えろ。ジラルガン殿も、いつでも出立出来るようにしておいて下さい。」

「な・・・王子、こんな時に国を離れるおつもりですか!?」

 ナルーとジラルガンがびっくりしている。

「こんな時だからこそだ。トルキアは混乱が大きくなるのを待っている。きっと大軍で押し寄せるはずだ。先にこちらから攻める!もう宣戦布告はしてあるのだからな。」



「ハルジー様!キナリ様!大変です!ダルキアとハルキアが組んで攻めてきました!」

 トルキア王宮に声が響き渡る。キナリはそれを聞いてほくそ笑んだ。

「わざわざ来たのか・・・こちらから行く手間が省けたわ。」


 そして、全軍を終結させるよう命令した。


「敵の数は?」

「ダルキアとハルキア、合わせて一一〇万ほどです。・・・キナリ様、失礼ですが勝算はあるのですか。」

 キナリは得意そうに笑った。

「怯えるな。我等はどこよりも強い魔術の国だ。命令通りに動けば何一つ困りはしないさ。」

 強気なキナリの表情に、トルキアの将軍は皆安堵した。

 テジン達はすでに都を狙って進軍している。だが、これもキナリの計算の内だった。



「気を抜くな。どこに仕掛けがしてあるか分からんからな。」

 いつもの月光の衣を纏ったテジンが、スナアシを操りながら言う。

 実際、テジン達の使う魔術と違って黒魔術は高度だ。質が問われる。キナリや魔王だって、他国を侵略しようなどと思わなければ、その高い魔力を評価されるだろう。


「来た!テジン達だ。ご命令通り、奴らを王宮のキナリ様のもとまでおびき寄せるのだ。」

 トルキア兵が一斉に杖を構えた。

「撃て!」

 司令官の声と共に、青白い玉が飛び出る。

「止まれ!」

 テジンの命令に、軍が止まった。

「ジラルガン殿、別れましょう。」

「先にお行き下さい。この程度、我等にお任せを。」

 ありがたい、と言うとテジンは、ダルキア軍を率いて離脱した。

「どうなさいますか。」

「少々回り道になるが、このまままっすぐトルキア王宮に行く。一気に攻め落とすぞ。」

 砂ぼこりをあげてスナアシが走る。



「くく・・・来い、テジン。」

 トルキア王宮でキナリが鏡を見ながら怪しく笑う。その鏡には、テジン達が映っていた。

「骨の林は突破させてやる。兵士に自信をつけてやれ。トルキア王宮にてその希望を打ち砕いてやる。」


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