19 コルコドの砂漠
クナが次に目を開けると、牢屋の中だった。どうやら気絶していたらしい。
手と足には見えないが金縛りの呪文がかけられている。気配からすると、キナリの黒魔術だろうか。
暗闇の中で、コツコツと響く足音がした。視界の隅に蝋燭の明かりを捉えた。
「ほお・・・これがかのハルキアの姫君か・・・。」
現れたのはハルジーだった。黒い長マントに身を包み、汚い手を伸ばしてきた。その手で鉄格子を握る。
「何のつもり!?」
クナは強い口調で言ったが、ハルジーが動じるはずもない。
「似ている・・・マハルに。」
「え・・・?」
その時のハルジーの声は、とても優しいものだった。
「なぜこんなことをするのか?教えてやろう。切り札さ。ハルキアを確実に落とすための・・・。」
「私一人ごときでハルキアが揺らぐわけがないわ。」
「さあ・・・それはどうかな。それに、ハルキアだけではない。ダルキア・・・テジンの動きを封じることも出来る。」
ダルキア?テジン様がなぜ・・・。いや、それよりも、マハルって誰?キナリも口にしていた。
ハルジーは部下に呼ばれて暗い牢を出て行った。クナはいくつか試しに呪文を唱えてみた。しかし、何の魔法がかけてあるのか、何一つ魔法は使えなかった。
「まことか・・・クナ姫様が拐われたというのは!」
顔面蒼白なテジンが低く唸った。
「はっ。どうやら話は本当のようです。」
派遣していた密偵が鋭く答えた。
クナが・・・なぜ!息苦しいのと同時に吐き気をもよおす。いつからだろう、ことあるごとにクナを意識するようになってしまったのは。それにしてもハルジー、魔王め。クナをどうしようというのか。だが、迂闊には動けない。・・・これが目的か。
思わず舌打ちしたところに、早馬で伝令官が来た。辺境の警備をしていた部隊だ。
「テジン様に申し上げます!先ほどハルキア王国より、セ=ジラルガン殿が参られました!どうしてもテジン様と直々にお話しがしたいと言って聞きません。」
「セ=ジラルガン・・・!?」
セといえば、酒泉の宴で暗殺されたド=ジラルガンの弟だ。いったい何用で?
「すぐ行く!馬を用意しろ!!」
テジンはナルーと数人の護衛を伴い、ジラルガンの待つ場所へ向かった。
ジラルガンはコルコドの砂漠にいた。ハルキアとダルキアの国境線だ。
ジラルガンはテジンを見つけると、すぐさま跪いた。
「ジラルガン殿・・・何事です。」
「お聞きのことと存じますが・・・クナ様がトルキアに拐われましてございます。」
ジラルガンは顔色が悪い。
「ああ・・・聞いている。」
「どうか・・・力をお貸しください。」




