12 紫の星
ジゴクサナギは容赦なく襲いかかった。途中、テジンに脚の爪がかすった。しかし衣のおかげで怪我をせずに済んだ。
ダルキア本陣に戻ると、テジンはテントに一人になり、椅子へ深く腰掛けた。ふうっと大きなため息をついた。キナリの言葉が頭の中をこだまする。だがどんなに考えても、あの量のジゴクサナギが自然に何とかなるとは思えなかった。
暫くして、ナルーがやって来た。少し砂に汚れていた。宴の誘いだった。
「ナルー・・・何かあったのか。」
テジンが将軍達の前でナルーに尋ねた。すると、北から進軍していたユグリムが恥ずかしそうに答えた。
「将軍のはしくれでありながらお恥ずかしい・・・。実はトルキアの伏兵に気づかず、まんまと囲まれてしまいました。伝令を何とか走らせ、ナルー殿が援護に来て下さったのです。」
テジンは少し黙った。
「命令違反だぞ、ナルー。」
ナルーははっとした。ユグリムも他の将軍達も目に怯えを浮かばせた。
「だが・・・。」
そこでテジンはため息混じりに呟いた。
「兵といえども我が国の大切な民。よくぞ救ってくれた。褒めて遣わす。」
一気に暖かい空気に変わった。質素だが宴の席に灯りが灯る。暫くしてテジンはこっそりテントを抜けた。ナルーも静かに後を追った。
外は日が暮れ、星が煌めいていた。澄んだ空気のせいか、いつもより星が明るくて大きい。だが少し肌寒かった。
「ナルー・・・。」
「テジン様、申し訳もございません。決して謀反の心はございません。ただ、どうしても・・・。」
テジンは笑いながら振り返った。
「お前がいてくれて良かったよ。」
ナルーは言葉を失い、深々と頭を下げた。
「悪いが暫く一人にしてくれ。」
静かだ。空には星とここ以外、光が見えない。南東の方角に、地平線ギリギリに光る小さな星があった。
なぜクナ姫は、ダルキアも守ってくれる気になったのだろう。それに、大丈夫だろうか。途中、いきなり結界が切れた。トルキアの黒魔術に耐えきれなかったということか。結界を張るのはかなりの力を使うという。ハルキアを守るだけでも相当辛いはずだ。
隣にいれないのが辛い。テジンは空を見上げた。薄紫の透明な光を放つ星を見た。
「誓おう。俺が、必ず守る。」
星が一瞬、大きく瞬いた気がした。




