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砂漠の月  作者: 沖津 奏
12/41

12 紫の星

 ジゴクサナギは容赦なく襲いかかった。途中、テジンに脚の爪がかすった。しかし衣のおかげで怪我をせずに済んだ。

ダルキア本陣に戻ると、テジンはテントに一人になり、椅子へ深く腰掛けた。ふうっと大きなため息をついた。キナリの言葉が頭の中をこだまする。だがどんなに考えても、あの量のジゴクサナギが自然に何とかなるとは思えなかった。

 暫くして、ナルーがやって来た。少し砂に汚れていた。宴の誘いだった。


「ナルー・・・何かあったのか。」

 テジンが将軍達の前でナルーに尋ねた。すると、北から進軍していたユグリムが恥ずかしそうに答えた。

「将軍のはしくれでありながらお恥ずかしい・・・。実はトルキアの伏兵に気づかず、まんまと囲まれてしまいました。伝令を何とか走らせ、ナルー殿が援護に来て下さったのです。」

 テジンは少し黙った。

「命令違反だぞ、ナルー。」

 ナルーははっとした。ユグリムも他の将軍達も目に怯えを浮かばせた。

「だが・・・。」

 そこでテジンはため息混じりに呟いた。

「兵といえども我が国の大切な民。よくぞ救ってくれた。褒めて遣わす。」

 一気に暖かい空気に変わった。質素だが宴の席に灯りが灯る。暫くしてテジンはこっそりテントを抜けた。ナルーも静かに後を追った。

 外は日が暮れ、星が煌めいていた。澄んだ空気のせいか、いつもより星が明るくて大きい。だが少し肌寒かった。

「ナルー・・・。」

「テジン様、申し訳もございません。決して謀反の心はございません。ただ、どうしても・・・。」

 テジンは笑いながら振り返った。

「お前がいてくれて良かったよ。」

 ナルーは言葉を失い、深々と頭を下げた。

「悪いが暫く一人にしてくれ。」


 静かだ。空には星とここ以外、光が見えない。南東の方角に、地平線ギリギリに光る小さな星があった。

 なぜクナ姫は、ダルキアも守ってくれる気になったのだろう。それに、大丈夫だろうか。途中、いきなり結界が切れた。トルキアの黒魔術に耐えきれなかったということか。結界を張るのはかなりの力を使うという。ハルキアを守るだけでも相当辛いはずだ。

 隣にいれないのが辛い。テジンは空を見上げた。薄紫の透明な光を放つ星を見た。

「誓おう。俺が、必ず守る。」

 星が一瞬、大きく瞬いた気がした。



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