10 本陣へ
「あと少し・・・あと少しだ。」
キナリは部下を励ました。褐色の砂の波の向こうに、線のような黒いものが見えた。部下に命じ、赤と黄の光の玉を空に放った。トルキア軍の合図で、追手がかかっていることを示す。幸いにも、ハルキアとダルキアのまぬけ共は一定の距離を空けてついてきていたが、トルキア本陣が近いと見ると、一気に速度を上げてきた。
キナリは部下に魔力の玉を作るよう命じた。そろそろか。予備の戦線の人影がそろと確認出来る距離まで来ると、トルキア軍は一気に速度を落とした。ハルキアとダルキアはこれ幸いと突っ込んでくる。
「トルキア、覚悟!!」
ジラルガンが叫んだ。キナリはにやりと笑った。奴らはもう手が届きそうな距離まで詰めていた。スナアシの手綱をぐっと引く。スナアシは勢いよく後ろを向いた。
「しまった!」
テジンが気付き、後退するよう叫んだ。
「くくく・・・今更気付いてももう遅い!」
スナアシに乗ったトルキア兵は一斉に魔力の玉を放った。
「散れ!ハルキアのゴミ共め!」
防ぎきれない―直感で確信した。キナリの放った特に大きな一撃は、テジンを確実に捉えていた。
バチッと大きな音がして、キナリの放った玉は光と共に消えた。
「何だと・・・。」
俺の魔力を弾き返すだと?結界・・・そうか、この力は、クナか!トルキアで教えてやった恩も忘れてこの俺に歯向かうとは、何とも神経の図太い女だ。
「怯むな!我らには姫様の守りがあるのだ!」
ジラルガンが叫んだ。ハルキアとダルキアが雄叫びを上げる。まずいな・・・数では圧倒的に不利だ。魔術も力的には連合されると敵わない。
「本陣まで撤退・・・!」
諦めて籠城作成でもとろうかと思った矢先、いきなり砂が盛り上がった。悲鳴を上げながらハルキアとダルキアの兵が引きずりこまれた。キナリははっとして振り返った。黒いマントに身を包み、突然変異で産まれた黒いスナアシに跨がり、杖を構える人物がいた。
「魔王様・・・。」




