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7話目

俺は、ノウンに呪われてから少しだけ気質が優しくなっていた。もしかしたら、長年生きていて人間丸くなっただけかもしれないが、どちらにせよ、昔のようになりふり構わず人を殺すようなまねはなくなった。もっとも、冒頭でああは言ったけれど、昔も俺の命を狙うものだけを殺していたし、それはちゃんとした決闘だ。

なので、元々そこまで壊れた人間ではなかったのかもしれない。今や俺の基準により、悪と思える人間以外は殺せなくなっていた。その基準を満たす人間も、一向に減りはしないけど。

けどもう人間で、俺に戦いを挑んでくる者ももういなくなってしまった。それにもうわかっている。本当に殺すべきは今隣にいるノウンであり、他の殺しはおまけだ。

「会いに行ってみないか?」

自分でも驚くほど珍しく、俺からノウンに話しかけた。めったにないことだが、ノウンの反応はさほど変わらない。悪魔と神の裏切り者のくせに(悪魔の裏切り者ではなかったか)哀愁に浸っているのか、歩きながら傾き出した太陽の日を浴びながら、まるで黄昏ている。わざとらしいほど体も金色に染まっていた。

いつもそうだ。「宿には泊まる必要ない」とか言っといて、ノウンは街にある枯れた空家を探して徘徊する。そのまま街と太陽を五感で楽しみながら黄昏る。なんなんだろうか?

「会いに行くって、まさか娘にか?会わせてもらえると思っているのか?」

ノウンは俺の意見にはいつも否定的だ。自分が神の肉体を持つ者を殺そうとしているのに、率先して行動するかと思いきや、消極的なのが不思議だ。その目的である神の生まれ変わりですらも、とどめを指すのは俺の役割になるのだろう。

ノウンは恐れているのだ。何にか?神の肉体を持つ者・・・その者次第では、下手したら逆に力を奪われて蘇ってしまう。自分の力を失う上に、そいつもあの神を探し始めてしまうことだろう。そして、確実にノウンに牙をむく。

裏切り者には裏切り者にしかわからない恐怖があるようだ。俺にとっては関係ない話。観光に来ているわけではない。目的があるんだから、その目的に準じて行動すべきなのだ。

「どんな奴なのか、見ておくのも必要だと思うが」

「そうか?相手ももう気が付いているだろう。この街に私が来ていることに」

言いながらノウンが足を止めた場所。見るからにボロボロで、立っているのがやっと、ただ朽ちるのを待つだけの空き家。ノスタルジーに浸るように俺たちの間を寒い風が通った。今夜の宿はここらしい。埃臭く、黴臭い。辛気臭くこの街に似つかわしくない空き家。もう日がなくなりかけている。

「なら丁度いいじゃねーか。そいつはまだいるんだろ?逃げてないなら会ってもいいということじゃないのか?」

金色のノウンはまだ黄昏ている。なんなんだろう。本当になんなのだろうか?空き家の前で立ち止まってないで入るなら入れよ。

「今日はもう行かないのか?それとも、このボロで休むのか?」

「そうするか。リューキももう疲れただろ」

疲れていない。疲れないことを知っていてそんなことを言う。ノウンはもう今日は動かないらしいので、俺はしかたなく一人で行こうと思った。でも、やはりめんどくさくなり観光することにした。暇つぶしだ。どうせ、俺の居場所はノウンに筒抜けだし。

「ノウンも行くか?観光に」

「まさか・・・だろ」

偉そうに、悟るようにいうノウンのその言い方に腹が立った。まあ勝手にしろって感じ。俺達は別に仲良しこよしの仲間じゃない。ノウンは俺の殺すべき者だ。なら今、隙だらけのこのあほを殺せばいいと思うかもしれないが、今の俺には殺せない。まだ、殺すことができない。それ相応の準備が必要なんだ。

「じゃあ行ってくるわ」

部屋を出るとき後ろから「一人で会いに行くなよ」と言われたのが聞こえたが、答えることなく部屋を出た。


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