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6話目

本編スタート(@_@)

たどり着いた街は魚の街。名前の通り、魚が名産の海が隣の町だ。街人のほとんどは漁師であり、夜中から昼の間だけ、男は街にほとんどいなかった。本当にこんなところにいるのだろうか?海が真横にあるが、少し歩けば森、山にも囲まれ、山の幸も存分にあるいい街だけれど。

太陽が一番天辺まで昇ったのはすでに何時間か前の話。歩き疲れはしない。雲も静かに流れ、追いつく気などないとは思うが俺たち二人には追いつけなかった。太陽の光と雲の影、並んで歩く二つの影。海の匂いと山の匂い。虫などの匂いに街の匂い。すなわち人間と自然の匂いが入り混じり、行きついた街が匂いだけで良い所だという予感を確信に変える。

「こんなところに、本当にいるのか?お前の言うその、神の遺伝子だか肉体だかを持つ人間は?本当はお前、観光に来たとか骨休めに来たとかは・・・マジでやめてくれよ?」

俺はノウンを睨んだ。ノウンはそんな目ももう気にしちゃいない。なんせ1000年もその顔をされてきているのだから。ノウンは傍から見ても人間だ。誰も神だとは思わない。悪魔の力も、今ある神の力で相殺している。

神は、もうこの世にはこの男しかいないので、誰にも気が付かれるはずがない。人間にとって神など、もう書物などにしか出てこない偶像のような存在だ。誰も姿を知らない。知っていても、誰も信じはしない。

「当たり前だろ。くだらないことを聞くな、あほ。間違いなくこの街にいる。私は神たちの魂を保有しているんだ。その魂の一つが言っている。肉体がここにあると」

ノウンは今、シスターのような恰好をしている。顔も男か女かわからないような顔立ちなので変な目で見られることもない。まあ、もとより神なので、男と女とかいう概念はない。

俺は逆にノウンとはまったく違い、聖者とは程遠い、その下をマントで隠しているが戦士の格好をしている。少し古い時代の、この場所とは違う地域の戦士の衣装なので、それだけで物珍しさはある。シンプルだが見る者が見れば明らかに戦闘する服装だ。

なのでよっぽどのマニアでもいなければ普通なら、それが戦いの衣装だとは気が付かないだろうが、その物自体、かなりボロボロで、年期も感じられる。そのボロボロさは荒くれ者と思われ、ノウンなんかとは違い、常に白い目で見られている。むしろノウンと一緒に居るから、まだそんなに変人とは思われないでいるのかもしれない。思われてもノウンのボディーガード。まさに三国志・・・西遊記だ。

実際はこの世界でそんな旅をするお坊さんはいない。でも、文化が違えばいてもおかしくはない。そんな感じでいつも勝手に解釈、納得されている。

この街は、他の街と比べ、比較的平和だ。悪魔の被害も少ない。大体の街はそれぞれ大小まちまちだがガーディアンがいる。なのに、ここにはそれがない。普通の街なら街人たちがそれぞれ家に武器を置き、万が一の時は村全体で追い払う。素人でも今の悪魔なら十分間に合うようだ。だから、普通は漁師の街でも男は多少街に残り、交替で防衛をしている。

俺たちは街で店を開いている女に話を聞いた。今日の宿を探しているついでに。

「この街は、ここ10年悪魔どころか犯罪も起きていないわよ。至って平和。いいことなんだけどねー」

女は魚屋で売り物の魚を並べながら言った。意味深な言い回しだ。いいことではないか?いいことに決まっている。ながら作業なのでこちらを見向きもしない。

「でも、その前は普通に悪魔やらなんやらにも襲われていたし、あの子が生まれてからね。それからよ。平和になったのは」

女の言葉に、ノウンが聞き返した。

「あの子?あのことは誰だ?」

ノウンの声も男か女かわからない。だから格好に違和感もない。

「旅の人には不思議に思うかもしれないけど、この街には守り神がいるのよ。この街のはずれにバカに大きい家があるんだけど、そこの娘が生まれてからというもの。こんな言い方するとあれだけどねぇ。その子が生まれてからあの家は大きくなり、更に、街も平和になったわ。わたしはそんなの信じていないけど、あの家に貢物をする人も多いわよ」

 思わず本音が出た。俺は一言も話す気などなかったのに。

「その娘さんは本物だよ」

ボソッと。誰にも聞こえないぐらいに暗い声で。魚屋の女も「え?」と聞き返したが、俺に答える気はない。代わりにノウンが「ところで、この辺に泊まるところはありませんか?」と尋ね、一瞬の間を置きながらも教えてくれた。

「お客さん。少しおもしろいですね」

と、魚屋の女に言われ、ノウンだけ笑顔であいまいに対応する。俺は暗い人ぐらいに思われたのだろう。

宿は、この店のほんの鼻先にあった。けど、俺たちはそんなところには泊まる気もない。女に宿の場所を聞いといてあれだが、あれはノウンのフォローによるものだから仕方がない。

金は、意外と持っていた。仕事はしていないが、何かと必要なので、稼げるときに出来るだけ稼いであるのだ。旅をしていると悪魔に困っている村や町も山ほどある。その時にここぞとばかりにいただくのだ。そこら辺の悪魔なら俺一人で十分だ。たまに盗賊やらにも襲われるので、その時も絶好のチャンス。奴らならなお一層、何のためらいもなく殺せるし、悪魔よりも楽で運が良ければ大金が転がり込む。


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