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12話目

俺は素直に階段を上り、甲板に上がる。すぐさま悪魔に姿を捕らえられたのが分かった。6つの瞳の光が同時に、有り得ないはずなのに、そのすべてと同時に目が合った。いつの間にか、3匹ともこの漁船に乗り込んでいた。悪魔の重みで船体が大きく揺らぐも、船が沈まなかったのには感動すら覚えた。

俺は、その反動を利用する。三匹も乗った船は、当然、悪魔のほうに傾いた。目線が揃った。持ち上がる力を利用し、思いっきり飛び跳ねた。伸びた大蛇の口は、俺がいた場所に激突し、俺がいた何もない空間を握りしめ、グーと、見えない相手とじゃんけんをしたような形になった。

大蛇の背中に俺はうまく着地したが、俺は斬り付けもせずにそこから本体に昇りつめた。しかし、着地と同時に背中からも大蛇の腕が伸びてきて、俺の体に無数の腕が絡みつく。体が黒い影に包まれ、見た目柔らかくも今度は体が強靭な力で圧死されかけている。つ・・・つぶれる。声にならない声が漏れる。

がむしゃらに動かしたナイフが、大蛇の腕を切り飛ばした。死にたくないという意思だけで、俺は何も考えていなかった。どう体を動かしたのかすら、記憶がない。それどころか、切り刻まれ散った無数の腕を見るまでの間の記憶が既に存在しない。

「俺は・・・何をやったんだ?」

誰にもわからない問いだ。死にたくないとは、逆に自分自身にすら恐怖を与えるとは。悪魔の吹き飛んだ腕から大量に吐き出されたどす黒い血飛沫が、雨風のごとく俺に降りかかる。体すべてが悪魔の血で染まる。

ナイフの刃渡りは20cm弱。ムカデの腕の太さはそれでも直径約1m。糞大蛇本体の体自体は何千年も生きた大木のように太い。その体にその腕が無限に生えているのだ。それに見た目がムカデだからといっても、その腕はちっぽけなムカデのように柔らかくはない。俺自身、よく斬り飛ばせたなー。と、感心してしまったが、感賞に浸っているほど、悪魔は甘くない。

斬り飛ばした数十本の腕は、空中で塵と化してもうなくなってしまったが、代わりに違う無数の腕が伸びてくる。俺の命を求めるように迫りくる無数の手を、俺は一本一本丁寧に躱していく。そのどれか1本にでも当たれば、当たったところから体が割れるように引き裂かれ、内臓ごと散らばりそうだ。その圧力に感心しながらも、俺はひらひら避けまわる。

「これは食らいたくはないよなー。一撃目は・・・かな・り痛かったしな」

何度も言うが俺は不老であり、不死ではない。寿命では死ねないだけで、肉体的な苦痛などでは死ぬ。死んでしまう。目の前を通り過ぎる腕たちは、まるでミサイルのようであり、1つに囚われれば簡単に視界はその1本に囚われ、他の腕を躱すことすらままならず、死ぬだろう。躱すごとに死と生を実感する風圧。体に纏わりついた悪魔の血がすでに乾き、体を動かすごとにボロボロと剥がれ落ちる。

横にぶった斬ってやった腕は斬り飛ばされずに消えず、厄介なことにそのまま何事もなかったかのように二本の腕となり、襲いかかってきた。暗に失敗した。

「そういえば」

圧倒的にピンチだというのに、第三者が俺に言ってきた。俺の中の客観的な俺はまだ、船内に多く残っている漁師たちの存在を知らせた。彼らは逃げるタイミングが分からないのだ。促し忘れた。自分も死にそうだというのに、力いっぱいに叫んだ。

「おい、お前ら!!!にげろーーーーーー!!!!!!今なら・・・へ平気だから・・・にげるんだーーーーーーー!!!!」

あまりにも俺が攻撃を躱すものだから、イライラしてきた悪魔たちが3体で同時に攻撃を仕掛けてきた。相変わらず躱すのに必死だったのに、更に逃げ惑う漁師たちにも悪魔の攻撃の目は向けられてしまった。

どっちにしろ、沈みかけた船にいたのではただ死を待つだけだ。結局は彼らを守らなくてはならない。見捨ててもいいのだが、自分で逃げろと言っておいて見殺しにするのも意味が分からない。むしろ、それなら船内にいてもらった方が楽だった。自分で選んだ選択肢だ。それは全うすべきだし、出来るから選んだ選択肢。

「1対3の戦いに水差して悪かったけど、あくまで俺を狙えっての!!このくそ悪魔が」

憎むべく言葉を発してはいるが、俺は対してこの大蛇型悪魔たちに憎しみは感じていない。むしろ、高鳴っている。心臓が高鳴り、興奮している。久しぶりの自分自身の解放だから。肉体・・・?精神・・・?気・・・?知能・・・?リューキという人間を形成するすべての理由、道理などを解放していく。俺は感謝した。この悪魔たちに本気で感謝をした。

今いる船に乗っていた漁師たちはわりかし簡単に脱出に成功した。俺の後ろから抜けていくからそりゃー簡単だ。問題はやはり、そのほかの2隻の船に乗っている漁師たちだろう。船を出てから一度この船に乗り込まなくては陸が遠すぎて降りられないのだから。むしろ、そいつらはほっといた方がマシか?

まだ、悪魔たちの意識は俺に向いている。適当に腕を斬り飛ばし、もう二本も行けるか?・・・行けた!迫りくる腕の力を利用し、突き立てたナイフが勝手に喰らいついた腕を真っ二つにし、そのままだと二本の腕になって厄介なだけなのでちゃんとに斬り落とす。

それでも悪魔には痛覚がないのか、一切の緩みがない。それに思った。初めの縦の二分割は余計だったと。もう一本は無難に躱し、横から斬り落とした。


読んでくれた方、ありがとう

電子ではなく、本にしたいぜ(@_@)

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