その③
爆発、爆音、爆熱。
原因はなにかなんて考えるまでもない。敵の砲撃だ。
アコ達みたいな『加護持ち』が居ないからと少し舐めていた、
響の下位互換だと自分の口で言っていたけれど『加護』はおろか『魔法』の概念も空想上の物と扱ってる
世界の人間に探知されて先制攻撃されるとは思ってなかった。
『うっかりカード使ってないわよね?』
俺の耳を両手で塞ぎながらアコがこっちを真っすぐみてそういった。
正確には声は俺の耳には届いてないのだけれどとにかく頷く。
『しかし早々に攻撃を開始してくれたのは都合が良い。
これで国際的にも向こうが侵略者だ』
『攻撃と同時に進軍始めたみたいだから殿が結界範囲に入ったら動くわよ』
「護衛には杏子をつける。残り全員で蹂躙しろ」
ミサイルの着弾が終わると同時にそう言うが早いか、
煙と爆炎が収まるより早くアコ達は俺の視界から消えた。
――――
ミサイルの着弾もかくやという轟音と共に地面が抉れる。多脚戦車が一撃で砕けて爆ぜる。
パワードスーツの兵士達が引き金を引いて赤光した球が飛び交う中を彼女たちは悠々と駆け回って
拳を落とし、槍を振るい、魔法を放ち、眼前に広がる敵を薙ぎ払う。
「思ったより早く片が付きそうだな」
戦況はめちゃくちゃ。数で勝る相手方の軍勢はもはや隊列も崩れ高速で移動し暴れる彼女たちに成すすべなく蹂躙されている。
戦車の内側で起きている兵士たちの阿鼻叫喚が見えるようだ。
「ほどほどでストップかけないとなぁ」
一応今回のクライアントからはある程度の敵兵器の鹵獲も頼まれているのだが、
このまま彼女たちに任せれば使える部品なんてネジの一つも残らないだろう。
『帝国の進んだ兵器をリバースエンジニアリングしたい』という要望を叶えるにはそこそこのタイミングで手を止めてもらわないと困る。
俺としてはこの魔法少女達の科学兵器蹂躙シーンを最後まで余すことなく見ていたいのだが指揮官を任されてる身としては
仕事を放棄するわけにはいかないのが残念なところだ。
「がんばれがんばれー」
完全に他人事であるが事ここに至っては俺にできることなんてさしてない。
ただの戦車や強化外骨格程度ならまぁ俺でも一応相手取ることくらいはできるが本職の魔法少女やらなんやらである
彼女達からすれば居てもいなくても変わらない存在であることに変わりはない。
「うーわっ」
考えてる間にまた一台戦車が虚空を舞う。
八つの鋼の足は散り散りになって千切れ飛び木々をなぎ倒して地面に突き刺さる。
時折まだ無事な戦車の主砲が彼女らに向かって放たれるが後頭部に直撃しても首の角度を変えることすら叶わず拉げて地に落ちる。
狂乱に陥って逃げようとする輩は結界に阻まれ戦域から逃れることができず自決する始末。
「はーい一旦全員しゅうごーう」
ぱんぱんと柏手を打って声をかける。
戦場というには一方的すぎる現場の騒音に対して小さすぎる合図だけれど
それで十分。彼女たちの耳にはそれでもキチンと届くことを過去の経験から知っている。
実際俺が両の手を合わせ声を発するとほぼ同時にすぐそばに全員が集まった。




