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【完結】最強捜査官、呪いすら科学で解き明かす 〜悪魔も天使も魔術無効の街セレニス州〜  作者: 久茉莉himari


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【23】ノアの光、キャデラックの影

――ノア……。   ――ノア……。


「起きられるか?」


やさしく、包み込むような声。

その響きに導かれて、ノアの瞼がゆっくりと開いた。


「……イーサン……?」


ぼんやりした視界の中で伸ばした手を、温かい掌がしっかりと握り返す。


「そうだ。おはよう、ノア」


ノアが、体温を確かめるように握られた手へ、かすかに力を返す。

大きな欠伸をひとつして「もう朝?」と呟くノアに、イーサンが静かに微笑み掛けた。


「今は七時過ぎだ。慌てなくても良い。

薬の注入を済ませよう。シャワーは?」


「じゃあ、行ってくる!」


ノアがにっこりとイーサンに笑顔で答えた。





薬の注入を終え、ノアがベッドに横たわると、スーツに着替えたイーサンが側の椅子に腰掛ける。


「昨夜のことは覚えているか?」


そう聞いただけなのに――


ノアは、ブランケットを頭からすっぽり被ってしまった。


「こら、ノア。仕事に行く前に顔を見せてくれないのか?」


その一言に、ノアも潜ったままではいられない。

恐る恐るブランケットをずらすと、イーサンの視線と正面からぶつかった。


「……ノア、光が戻ってきたな。」


イーサンのアイスブルーの瞳の色が、ノアの胸の奥に小さく残る。


「それだけ元気なら心配はいらないな。

じゃあ行ってくる。また昼に」


イーサンはそう言って立ち上がり、スタスタとドアへ向かう。


背中に飛んできたのは、ブランケットの中からのくぐもった声――


「い、行ってらっしゃい!」


噛み殺すように笑いを零しながら、イーサンは寝室を後にした。





寝室の柔らかな空気がイーサンから消えてゆく。


足音がコンクリートの冷たさを取り戻した瞬間、彼の表情は捜査官のそれに戻っていた。


S.A.G.E.本部。


イーサンが自分のオフィスがある階でエレベーターを降りると、受付の警備員が声を掛けた。


「捜査官、伝言があります」


メモを受け取って開いた瞬間、イーサンの表情がわずかに引き締まる。


そのまま早足でオフィスへ向かった。





「ベック、捜査中に済まない。現場の保存は?」


椅子に座るベックが笑顔で応じる。


「捜査中といっても聞き込みだ。

ちょうど一段落したところだよ。

現場は完璧に保存してある。

カリスタたちの到着を待ってる。

それで、何を掴んだ?」


イーサンはデスクの上で指を組み、身を乗り出した。


「二年前、モーテルの支配人が強盗殺人容疑をかけられた事件を覚えているか?」


「もちろんだ。

モーテル・シップスの経営者、エド・モローだろ?

アパートを借りられない連中や売春、浮気に使われるような安宿中の安宿。


あいつは終身刑寸前だったのを、お前が無実を証明して真犯人を挙げた。

新聞の一面に載り、テレビでも特集が組まれた。

……そのモローからのタレコミか?」


「そうだ。今朝、S.A.G.E.に伝言があった。

モーテルの電話は盗聴されているかもしれないから、公衆電話から九時半にかける、と。

俺に直接話したいと」


「……病院の破裂事件か?」


ベックがゴクリと息を呑んだ。





イーサンが頷く。


「まだリオ・ゴードンがクラブ・ジョーの事件の被害者か、ノア拉致の共犯か判別できない。

だからマスコミには容疑者情報を伏せている。


だがモローは神経質になっていた。

警察無線を傍受しているようだ。

そして俺の『キャデラック・エメラルド1967年型を発見したら即連行せよ』という指示を聞いたらしい」


「まさか…キャデラックがモーテルに!?」


「ああ。モロー曰く、ツギハギのオレンジ色の車、キャデラック・エメラルド、そして白い古い車の三台を預けられたという。


事務所裏に停めさせ、宿泊費は前払い、宿泊客たちはやけに用心深かった。……そして昨夜」


イーサンの声が低くなる。


「キャデラックのトランクから銃、ナタ、血のついた杭……塩の缶に十字架を沈めた水まで運び出された。


モローは必死で望遠カメラで撮影したそうだ。

その後、ナンバープレートを付け替え、キャデラックは別の男が運転して去った。


残りもチェックアウトして白い車で消えた。

――そして悩んだ末、俺に連絡してきた」


ベックがニヤリと笑う。


「宿泊客“たち”。男三人に女一人だな? 

髭面、大男、柄物スーツ、そして黒毛……」


「その通りだ」


イーサンも口元を緩める。


「モローはロビーに高性能カメラを仕込んでいる。

赤外線カメラでも撮った。

うちの技術ならカラーに補正できる。


これで銃刀法違反でも引っ張れるかもしれない。

そして、交換後のナンバープレートの撮影に成功した」


ベックの目が見開かれる。


「所有者が割れる……!」


「すでに割れている」


イーサンはファイルから一枚の紙を出し、机に置いた。


ベックが掴み取り、瞬時に眉間に皺を寄せる。


「……大物だな。第一、会ってもらえるのか?」


イーサンの表情は一片も動かない。


「現場はチームに任せる。

――駒を動かすのは、次の一手を見てからだ」

ここまでお読み下さり、ありがとうございます(^^)

明日も17時更新です☆

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自作のキービジュアルやキャラクターカード貼ってます♪

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