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【完結】最強捜査官、呪いすら科学で解き明かす 〜悪魔も天使も魔術無効の街セレニス州〜  作者: 久茉莉himari


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21/28

【21】尾行されたセーフティハウスと、ペントハウスハウスの死体。〜その肝臓温度は10℃〜

そして夜が明けた。


セレニス・ベイ署。


S.A.G.E.の捜査官たちと地元警察が、ローラー作戦の準備で慌ただしく動き回っている。


署内に足を踏み入れたイーサンに、カリスタが「おはよう」と声をかけた。


イーサンは足を止めずに「ああ。おはよう」と返す。


カリスタはすぐ隣に並び、歩調を合わせた。


イーサンが一言訊く。


「出動の準備は?」


「ええ、抜かりはないわ。

今日こそ『リオ・ゴードン』一味を捕まえる」


カリスタの声は力強い。


だが次の瞬間、少し柔らかい声音に変わる。


「でもチーフは、全ユニットに号令をかけるだけでいいの。

――分かってるでしょう?」


イーサンは短く息を吐いた。


「……カリスタ」


「ノアは、チーフの仕事を理解してる。


それでも――昨日も襲われたばかりで、不安でいっぱいなはずよ」


カリスタの眼差しはまっすぐだった。


「私たちはチーフの部下。


立てた計画に従って動くし、どんな小さな手がかりも逐一報告する。


だから今日は――ノアを病院からセーフティハウスまで送ってあげて。

ベックの代わりに」


イーサンはしばし沈黙したのち、静かに頷いた。


「ありがとう、カリスタ。

そうさせてもらう」





午前8時55分。


レイアウトルームの巨大スクリーンには、各ユニットが配置についた映像が次々と映し出されていた。


そして午前9時きっかり。


イーサンは無線を握り、低く、しかし揺るぎない声で命じた。


「――作戦開始だ」





イーサンが病室のドアを開けると、ノアが一気に安心した顔になる。


「イーサン!」


「やあ、ノア。

退院おめでとう」


イーサンが柔らかく微笑む。


「主治医から聞いた。

どこも異常はなかったそうだな」


「うん!

家に帰っていいって!」


ノアの声は明るく弾んでいた。


イーサンは微笑み、紙袋を差し出す。


「着替えてこい」


「サンキュ!」


ノアは嬉々として袋を受け取り、カーテンの向こうへ消える。


着替えながら、ノアが口を開く。


「イーサン、仕事は?」


「今の俺の最優先事項は、ノアをセーフティハウスに連れて帰ることだ。


ベックは現場から離れられないからな」


ノアが小さく呟く。


「……ありがとう……」


「礼はいらない。

最優先事項だと言ったろう」


そうして、着替え終わったノアがカーテンを開いた。





特別に許可された地下駐車場を抜け、SUVは静かに病院を後にする。


助手席のノアは、何度も同じことを繰り返していた。


「なあ、イーサン!


今日からもずっと、セーフティハウスで暮らせるんだよな?


俺ってまだ証人!?」


イーサンが「そうだ」と答えるたび、ノアは無邪気に笑う。


だが、10分も走らぬうちにイーサンの表情が鋭く変わった。


無線を取り、厳しい声で告げる。


「こちらイーサン・クロフォード主任分析官。


黒のSUVに尾行されている。

ナンバーは外されている。


私の位置情報を使って追跡、確保しろ。


――私はこのまま振り切る」


『了解!』


「ノア、運転が荒くなる。

しっかり掴まれ」


ノアは蒼白になりながらも「うん」と答える。


次の瞬間、イーサンが運転するSUVはタイヤを鳴らして急加速した。


そして、セーフティハウスまでスピードを落とさず走り抜け、ガレージのシャッターが閉まると、車は静止した。


イーサンは震えるノアのシートベルトを外し、告げた。


「もう大丈夫だ、ノア。

よく持ちこたえた」


「尾行してきた車は……?」


「乗り捨てられていた。

徒歩での追尾も不可能だ。


――心配するな」


「……家に入りたい」


「もちろんだ」


イーサンはノアを護衛しながら、共に玄関をくぐった。


生体認証をクリアし、家の中へと入る。


そして、ノアがセーフティハウスに戻って15分も経たないうちに――。


穏やかな時間は、一本の無線で唐突に破られた。





『兎に角すぐ来てくれ!

殺人だ!


ホテル・ハバズのペントハウスで大変なことが起こった!』


ベックの切迫した声。


イーサンの表情が一変する。


「ノア、俺が出たら、レベル3の防御体制が発動される。


これからの連絡はすべて無線電話を通す。


それ以外は無視だ。

――分かったか?」


「……うん!」


ノアがしっかりと頷く。


「何も心配はいらない」


イーサンはそう言い残し、ガレージに向かった。





イーサンが黄色い規制線をくぐると、ベックが駆け寄ってきた。


「イーサン!

早かったな。


病院から尾行されたって!?

ノアは!?」


「後で話す。

状況を報告しろ」


歩きながらベックが早口に説明する。


「バレスの班が、車椅子を使う若い大学教授がここに宿泊していると突き止めた。


連れは金髪の若い秘書と、髭を生やした父親。


宿泊はペントハウス。

しかも一か月分をキャッシュ前払い。


ただし支払ったのは本人たちじゃない――“ジョン・ラウラー”と名乗る背の高い白人男性だ。


教授親子と秘書は昨日の午後から戻っていない。


怪しいと思ったら……やはりだ!」


「イーサン!

こっちよ!」


奥からシンクレアの声が響く。


部屋に足を踏み入れると、証拠採取に当たるカリスタ、ヴィヴィアン、マドックスの顔に安堵の色が浮かんだ。


シンクレアの前には――

胴体だけの死体が無造作に転がっていた。


「シンクレア、頭は?」


「そこ」


指差す先、わずか二メートル先に首だけが転がっている。


バレスが淡々と写真を撮っていた。


さらに奥では救急隊員がストレッチャーを囲んでいる。


「あれは?」


イーサンの問いに、シンクレアが即答する。


「奥のラウンジで倒れていた男。

大量の麻酔薬を点滴されて、瀕死よ」


イーサンの眉根が寄る。


「麻酔薬?」


「全身麻酔に使う強力な薬。


点滴パックを移し替え、十リットルのキャンプ用容器で延々流し込まれてた。


空パックは二十以上。

首筋にも別の注射痕。


血圧は低下、脈も弱い――辛うじて生きてる状態」


イーサンは頷いた。


「では、この切断死体の死因は?」


「そこが奇妙なの。


肝臓の温度が10℃しかないのよ」


「10℃?


……だが硬直と腐敗具合から見れば、殺害されたのは18時間以内だろう」


「ええ。

でも冷却の痕跡もない。


こんな死体、初めてよ」


イーサンが死体を見下ろす。


「スパッと切られているな」


「そう。


刃物に慣れた手口……いえ、“やり慣れている”と言うべきね。


拘束痕も防御創も無い。


顔見知りか、不意を突かれて、一撃で仕留められたんでしょう」


さらにシンクレアが続ける。


「二人とも財布も身分証もない。


しかも――ここは犯行現場じゃないわ」


「やはりな」


「首を切られたのに、カーペットはほとんど汚れてない。


どこか別の場所で殺され、ここへ運ばれたのよ」


「分かった。

調査を続けてくれ、シンクレア」


イーサンは鋭い眼光を光らせ、さらに奥へと歩みを進めた。

ここまでお読み下さり、ありがとうございます(^^)

明日も17時更新です☆

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自作のキービジュアルやキャラクターカード貼ってます♪

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