1 -8 究極の美の称号ネオビーナス⑧
【美の極みの称号エレンシア・アイヴォリー VS クラリス】
その時、フランソワ高木から、
「残念ながら、2人は、消滅してしまいました。本当に、信じられないことですが、とても信じられない、ありえないことが起こってしまいました。」
すると、泣きながら、やっと言葉を発したオービス。
「もう、こんなことになるなんて、これ以上、続けられないわ。もう、コンテストは、中止よ。」
すると、クラリスも、
まさか、こんなことになるなんて。それにしても、信じられない。私としたことが、油断したわ。
すると、フランソワ高木から、
「こんなことになるなんて、本当にもうしわけない。主催者側としては、無念の気持ちですが、それでは、残った出場者たちで、続けることで、このせっかくの、世界的にも滅多にない世界最大のコンテストを無駄にしないようにしていきましょう。」
オービスは、思わず、何を言うの、という顔で、フランソワ高木の方をみるが、それは、無視された。そして、残りのモデルたちにも無視したまま、そのことには、それ以上は触れず、自然と継続していく流れになっていった。
だが、やっと口を開いたメリディスは、
「こんな予想外の展開は、とても楽しめるものとは言いがたいですが、生の現場で起きることというのは、正直言って、何が起こるかわからない。まさか、ここまでのことが起こるとは、想像すらできなかったですが、消滅してしまった2人には、それぞれの国同士の深い因縁めいたつながりがあるので、それのせいもあったのかもしれません。非常に悲しく残念ではありますが、残りのメンバーで、このコンテストを続けて、無駄なものにはしたくないわ。それは、ビバリアレメディス世界美人認定協会からの意向で、万が一の場合でも、できる限り適応して、コンテストを無事やり遂げてほしいということでもあります。それでは、次の対戦を発表してください。」
すると、再び、フランソワ高木から、
「本当に、仕方ないことが起こってしまいましたが、それでは、気分を取り直して、次のエントリーは、コトールルミナス国の美の極みの称号のプレミアミリストのエレンシア・アイヴォリー、対する、モデルラボ事務所所属のクラリスです。それでは、第2組目の対決、開始します。」
「はじめまして。クラリス。あなた、28才って、本当なの。どうみても、20才。いいえ、10代かと思ったわ。すごいわね。私は、25才よ、よろしくね。」
「はじめまして。美の極みの称号には、殿堂入りというものがあるのは、知らなかったわ。たしか、特別に、美警察関連の仕事に当たっていると聞いていたわ。」
「そうなのよ。最近できた美麗隊・特殊部隊サージのこともよく知っていて、事務所に行くことも多いわ。」
挨拶が終わると、舞台上に立った2人。だが、先程の対決と比べると、エレンシアには、驚くほど緊張感が感じられない。気軽に考えているわけではないのに、どういうことだろう。自分も、そこまで緊張しているわけではないけど。
この人、美の極みの称号のプレミアミリストって、美の極みの称号の殿堂入りの人だって言ってたけど、もはや、そんな括りじゃ片付けられないレベルの女性ね。それで、なんて物腰の柔らかい、素敵な女性だわ。私なら、別に勝ちたいと思って、この世界に来たわけじゃないから、あっさりと負けても構わないけど、そんなわざと負けるなんてことできないわよね。
だけど、おかしいわ。ちょっと皆の反応がだいぶ違ってきているわ。どんどん、会場からは、エレンシアの美貌のレベルが上がっているような反応をすごく感じる。もちろん、私の目からみても、たしかに、その美貌はすごくレベルが高いのだけれども、私から見ていると、エレンシアの見た目は、そのまま全く変わらないのに、ただ、会場からの反応だけが上がっているように見えて、とても不自然に感じるのよ。
あまりにも、会場の関係者や、残りのモデルたちも、感心しきりという感じなので、クラリスは、いったい何が起こっているのか、どうやら、自分だけがわかっていないのか、不思議に感じて、思わず、ジャッジのフランソワ高木に目をやると、その表情は、もはや、決着がついた、とでも言いたいような表情をしている。
なんですって!まだ、この第2組目の対戦は、始まって、15分しかたっていないのに、いったい何が起こっているの!私は、特に、勝ちたいなどと、個人的には、正直言って、どうでもいいけど、事務所のためなら、簡単に負けるわけにはいかない。だけど、私以外は、すでに、私の負けを認めているようなモードに入ってるわ。
すると、次の瞬間、いきなり、フランソワ高木から、
「残念ながら、第2組目は、簡単に勝敗がはっきりとついてしまいました。エレンシア・アイヴォリーの勝利です。クラリスは、失格となりました。エレンシア・アイヴォリーは、次に進んでください。」
すると、拍手が巻き起こり、そのジャッジには、文句ないといった反応であった。
ちょっと呆然としたクラリスは、舞台を降りると、コスメや事務所のモデルたちが駆け寄ってきた。皆は口々に、
「クラリス、残念だったわね。だけど、仕方ないわね。相手がすごすぎたのよ。とんでもなく綺麗だったものね。」
皆、当たり前のように、私の敗北を認めているわ。
すると、勝利したエレンシア・アイヴォリーは、私のところにやってきた。
そして、とても丁寧に、やさしく声をかけてきた。
「お疲れ様でした。クラリス、あなたも、すごく綺麗だから、最初、私、ちょっと負けてしまうかもって、思ったけれど、なんとか私に軍配が上がったのね。ここまできたら、なんとか優勝を狙いたいわ。あなたも応援してね。」
彼女は、とても私の敗北を残念そうにして、声をかけてくれて、実際、私はそんなに、がっかりはしていないけれども、ちょっとコスメたちには、申し訳なかったなと思ってはいたの。ただ、ちょっと、まだ理解できないのは、あの時点では、絶対に私の方が美しさでは、勝っている状態だったと思うのよね。客観的にみてもね。
まあ、百歩譲っても、どちらか決めかねるということだったら、まだしも、理解できるのに、それなのに、簡単に、私の敗北が決まってしまって、何かあるんじゃないかと思ってしまうのよ。でも、これでは、今、クレームを入れたり、主張するのは、この場の皆の雰囲気から、察しても、ただの卑怯者のように映るだけね。エレンシア・アイヴォリーの次の対戦に、ちょっと注目しているわ。絶対に、何かあるに違いないわ。
「それでは、思いがけずに、早くに第2組目が終了してしまったので、第3組目に移ります。次のエントリーは、美麗隊の2人目、ヴィクトリア・レインネス・リストマート 対 セブリア国から「レインボージュエル」です。それでは、第3組目を開始します。」