1 -7 究極の美の称号ネオビーナス⑦
【アニエスの秘策】
つまり、このような経緯があって、本名、アンドレア・エルヴァスティ・プルクネンは、他国の参加者もいるため、美の処刑人との関連を避けるためにも、普段の個人名、アンナ・ソフィア・ベルガーで出場していた。そして、アニエスにだけ自らの正体を明かし終えると、再び、3回目の攻撃の構えに入った。
「このオプティタイザーは、痛みも苦しみもないのが、本当に素晴らしいのよ。そのせいで、仕掛けるこちらとしても、気兼ねなくできるのが、本当にうれしいわ。では、いくわよ。」
次の、ものすごいエネルギー波は、地面が揺れたようだった。そして、これまでの2発を遥かに上回るエネルギー波で、今回は、アニエスに直撃していた。アンナも、その手ごたえを感じていた。
さっきまでの攻撃を超える、高エネルギー波による空気の澱みが静まるのを待ち、アンナは、アニエスの姿を確認したが、全く容姿も、そのままで、何の変化も見られない。
「なんということ!確実に、今度は、直撃したはずよ。ええ、決してよけられてはいないはず!」
すると、アニエスは、少し微笑んで、
「確かに、今回のエネルギー波は、さっきまでのものとは、比べ物にならないくらいに、早く強力だった。だから、正直避けるのは難しかったわ。でもね、アンナ、あなた、自分が、もう勝てると思って、自分のことを話しすぎたわね。すべての手の内を明かした感じよ。話しを聞きながら、対処方法をじっくりと考える時間までもらえてね。あなた、自分に自信がありすぎなのと、自分の能力に関して、理解が足りなすぎるのよ。」
「なんですって!そんな、はったりをかまして!いい気にならないで!」
そう言うなり、4発目を発射し、これもアニエスに命中した。だが、今回も、何の変化もみられない。それに、すでに、アニエスは、この攻撃に完全に対応しているように見えた。
「うそよ!なぜ!なぜ、何もかわらないの!確実に、美のエネルギーを弾き飛ばしたはずよ!完璧に手ごたえがあったもの!」
それをみていたクラリスは思った。
「これは、難しい戦いになったわね。それにしても、アンナは、自分が、レッドクリスタルが覚醒していることを、まだ知らないのね。オプティタイザーは、レッドクリスタルが覚醒したことで、手に入れた能力だとは、気づいていないんだわ。だから、レッドクリスタルに、まだ他にも能力があることも知らない。その点、アニエスは、オプティタイザーが、どんな能力なのかを知った今、美の戦闘モードを、3段階目の最終レベルまであげて、美のエネルギーをすべて弾かれる瞬間に、レッドクリスタルから、一瞬のうちに、美のエネルギーを補充しているわ。これも、実は、最高に難しい技だわ。攻撃される前から、先に補充することなど、そのエネルギーの大きさから考えれば、むしろ自らがオーバーヒートしてしまう。かといって、完全にエネルギーを弾かれてしまってからでは、先に、あっという間に、美貌を失うことになるのよ。そのエネルギー補充のタイミングの瞬間を狙っているのが、見事だわ。」
アンナには、思いがけない展開に、少し焦りの表情がみえてきた。一方で、すでに、オプティタイザーに完璧に対応できているアニエスだが、実は、その補充のタイミングを図るための精神集中は、とんでもなく難しく、あと何回できるのかギリギリのところであった。
守りばかりで、やりすごしていると、アンナが自ら美貌をあげて、勝利が確実となり、アニエスには、勝利の道はないのと、このまま、アンナがオプティタイザーをあきらめるなら、アニエスは、自らの美貌のエネルギーを、このタイミングでアップして、直接の美貌対決で、アニエスが勝利することもできる。そこのちょうど中間に2人は立っていた。
ところが、アンナは、少し微笑みを浮かべると、
「アニエス、なかなか、やるじゃない。でもね、あなた、オプティタイザーの本当の恐ろしさが、まだわかってないわ。
まあ、攻撃に集中してたし、2人とも、これだけ離れているから、気がつかないのも、無理はないわ、、、、。アニエス、私の顔を、もう一度よく見てごらんなさい。」
それを聞いたアニエスは、まず、さっきまで攻撃に対応することばかりに集中していたので、それをやめて、冷静になってみた。
すると、そこで大変なことに気がついた。
今、この目の前にいるのは、アンナじゃないわ!さっきまで、目の前にいたアンナではないわ!これは、いったい、どういうこと?!
実は、このことについては、アルタコーネス国の上層部の係官たちも、話題にしていた。
「それにしても、相手の美貌を下げて、自分のレベルを上げるなんて、すごいわね。」
「ほんとよ。これまで、犯人の女性たちって、100人以上処刑されてるけど、その度に、アンドレアは、その美貌が増しているじゃない。」
「そうよね。アンドレアの、あの技が発揮され出してから、もともとも、相当に綺麗だったけど、今じゃ信じられないレベルになってるわよね。」
「本当。ここだけの話しだけど、今は、プリンセスや他の姉妹たちよりも、アンドレアは、トップレベルに綺麗だと思う。」
「だって、今、もしも、また、あの国と美の対決があったら、プリンセスの代わりに任命されてるって話しよ。」
「そうなのよね。だけど、もうあの国とは、仲直りではないけど、もう争わないことになったからね。まあ、次回、万が一を想定した任命らしいけどね。」
「だけど、アンドレアだったら、もう無敵じゃない。そんなに、圧倒的に勝てるなら、もう一度だけ、あの国と対決して、完璧に勝つところを、ぜひ見てみたいわ。今までは、負けっぱなしだったしね。」
「しっ!それは、口にしたらダメよ!絶対に!」
「しまった!あぶないあぶない。でも、皆だって、口にしてないだけで、そう思ってるでしょ。」
すると、そこにいる全員、大きく頷くのだった。
舞台上の2人は、かなり離れた位置に立っていることもあり、互いのことは、細かいことまでは、それほどよく見えてはいなかった。
そして、対決が始まって、アンナから言われ、あらためて、アンナの顔に気がついた。
それは、かなりの美貌のアップが起こっており、そのレベルアップは、本人の意思でも、とてもできるようなレベルではなかった。
驚きをかくせないアニエスは、
「これが、、、、これが、オプティタイザーなのね。」
「やっと、気づいたわね。エネルギー波によって、弾き出された美のエネルギーはね、自然に、私が、すべて吸収してしまうのよ。だから、私、自分の力を使わずに、美貌が、アップしていくの。
それに、もしも、これが命中したら、あなたの美は失われて、私はレベルアップする。そうしたら、もう、あなたは、負けることになる。そして、今みたいに、弾かれてエネルギーを補充することを繰り返しても、私の美貌がアップするためでしかないのよ。もうわかるでしょ。どういうことなのか。」
悔しさをかくせないアニエスは、
「それじゃあ、、、私、勝てるわけないじゃない。」
すると、アンナは、喜び、手を叩きながら、
「その通り。ご名答よ。だけど、それにしても、今、あなたからもらった美のエネルギー、驚いたわ。私、今の顔って、あなたからみても、さっきまでとは全然わからないほど、綺麗になっているでしょ。あなたの美のエネルギーは、思った以上にすごいわ。今の一回分だけでも、かなりの美貌の女性の、その数十人分くらいに匹敵するわね。このままだと、私、あと3回くらいもらったら、たぶん、このあと、オプティタイザーなしで、優勝までいけるんじゃないかしら。」
すると、何を思ったか、アニエスから何かをしかけようと動きがあった。が、次の瞬間、再び、アンナが、エネルギー波の放出へと、指を組んだ。
だが、ここで、とんでもない展開が待っていた。突然、ものすごい光の爆発するような輝きが起こって、会場は、しばらくの間、閃光に包まれた。
会場のモデルたちや、招待者や関係者、観客たちは、その後、数分、目が開けられなかったが、気がつくと、2人の姿は、どこにもなかった。
確かに、2人のエネルギーは、どこにもなかった。いったい、何が起こったのか。2人は、なぜか、完全に消えてしまったのである。