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1 -6 究極の美の称号ネオビーナス⑥

【美の処刑人 アンドレア・エルヴァスティ・プルクネン】


 それは、今から、10年前から起こっていた、カタリナ事件である。これは、昔から、とても話題になっている凶悪犯カタリナ・ウィンスローによる、すべての事件は、そう呼ばれているのであった。


 カタリナ・ウィンスローは、初犯の当時20才であり、生まれつき、その美貌は、ただ美しいという言葉、一言ではとても表現できないほどの美貌の持ち主であった。だが、しかし、その、究極という言葉を用いるほどの美しい見た目とは裏腹な、残酷で凶悪な性格の持ち主であり、多くの男性を手玉に取り、金品を巻き上げ、その美貌を武器にして、様々な悪事の限りを尽くしてきた。もちろん、静顔の刑を科せられたが、顔形の部位の配列が変わったり、破壊されたものではないことを考慮した上で、その無表情の顔ですらも、単なる1つの個性として、新たに作り上げ、それすらも再び武器にして、多くの人たちを騙してきた。その、生まれつきの顔の、多くの者たちから完璧とも表現される部位そのものについては、静顔の刑の前では微塵も壊されるわけではなく、他国のように、死刑という命にかかわる刑もないことから、美貌管理警察も、完全に手を焼いていた。


 もはや、笑顔が失われて、無表情になることなど、現代の美人たちには、痛くも痒くもないのであった。それに、特に、太々しいカタリナ・ウィンスローには、まったく通じないものとなっていた。


現在のプリンセスになってからも、もはや万策尽きたという状態で、セリシアも思い悩んでいた。


 そして、今、妹のアンドレアから、新たなる刑の提案を受けて、これまでの自分を変えたいほどの気持ちから、その慈悲の心を解き放ちたい衝動に駆られていた。


すると、セリシアは、今までかつて生まれなかった気持ちが湧き上がり、自分でも信じられない言葉を発していた。


「アンドレア、それなら、私、どうしても、試してほしいことがあるのよ。いいかしら。」

「もちろんよ。プリンセス自ら、刑の新たなる取り決めを変えるなら、誰も反対はできないわ。それが、この国の決まりだもの。」


 アンドレアは、カタリナ・ウィンスローの話しを聞いた。そして、もはや、何回捕まっても、何回となく、静顔の刑を受けようとも、彼女は、常に、その上を行ってくる。それなら、刑についても、それ以上のことで対処するしか、方法は残っていないのであった。


 そして、逮捕したら、ただ静顔の刑を執行したのち、再び釈放するだけである、ということを聞いたアンドレアは、それなら、逮捕状を持っていき、その場で自分があらたなる刑を執行することに問題はないかと、プリンセスに改めて確認をとった。


 こうなったら、もはや急いでいることなので、刑の執行場所が変わることに異論を唱えている暇はない。今回は、それでも構わないと、アンドレアからの提案を受け入れた。プリンセスには、セリシア個人としても、カタリナに対して、多くの被害者たちと同じ悔しさがあふれていた。


アンドレアは、あらためて逮捕状を受け取ると、黒の全身スーツを着用すると、黒塗りの車に乗り込み、カタリナを探しにでかけた。


 そして、これまでの被害者からの情報と、その犯罪に手を染めた仲間たちへの聞き込みの上、とうとうカタリナの居場所を突き止めた。すると、車中から、カタリナを確認すると、黒のマスクを装着して、車を降りた。


「こんにちは。カタリナ・ウィンスロー。私は、美貌管理警察からきたのよ。あなたには、またもや逮捕状がでているわ。ただし、ここから連行するのは、今回は、なしよ。今回は、特別に早急な対処を求められていて、今、ここで、刑の執行も、すべてが終了するから、少し時間をもらうだけでいいわよ。」

「美貌管理警察ですって。また、静顔の刑だわね。ここでやるって?まあ、それなら連行もなしで、簡単に済んでいいわね。いいから、早くしてね。私、忙しいんだから。」


両足を肩幅に開き、構えるアンドレア。両手を中央にあげて、指で三角形を作ると、


「いつもの静顔の刑は、もう飽きているでしょ。今日は、今回のやり方は、あなたが第1号よ。これで、これからの犯罪が変わる。そのための初めてをあなたにしてあげる。光栄と思いなさい。」


言い終わると、アンドレアの手から、高エネルギー波が、ほとばしった。


 すると、軽い衝撃に驚いたカタリナだったが、特にダメージは感じられないことに気づくと、

「なんなの、いったい。痛くも痒くもないわよ。失敗したんじゃないの、あなた。」


 すると、体勢を立て直し、普通に立ったアンドレアは、胸から手鏡を取り出し、カタリナの前に放り出した。


「ほら、これで、あなた、自分の顔をみてごらんなさい。あなたの新しい人生の始まりよ。」


何を言う、というような表情で、鏡を拾い上げると、勝ち誇ったまま、鏡を覗き込んだ。すると、一瞬で、その表情は激変し、凍りついた。


「ああ、なに!わ、私の顔が、いったい、、、どういうこと!」


「あなたね、もう、そこまで変わった自分の顔、驚いたでしょ。もう、あなたの顔は、この国の底辺となったのよ。その無表情のままで、さらに、今の、その崩れた顔って、最悪の顔でしょ。」


「なんなの!私、今までこんなにひどい顔、見たことないわ!これ、私の顔なの!信じられない!悪夢よ!私、悪夢を見ているんだわ!」


「今日は、このままで、もう自由にしてあげるわ。もう、どこにでも行くがいいわ。でも、これからは、あなたの顔に嫌悪感があっても、その顔に魅せられたり、騙される人は1人もいないわよ。」


「私を、こんな顔にして、、、!!!どういうこと!ひどい!ひどすぎる!」


アンドレアは、泣きくずれるカタリナをあとにして、その場を去っていった。


 そして、王宮に戻ったアンドレアは、その一部始終を撮影した動画をプリンセスに見せた。なぜか、それをみて、プリンセスは、感極まって涙を流し、

「これは、今までの刑とは、比べものにならないわ。相当なショックを与えるにちがいない。だって、今、この顔をみたら、自分のことではないのに、そのショックが大きすぎて、言葉に詰まってしまったわ。この顔を、今みた瞬間、さすがにやりすぎかと思ったけど、最近のあまりの再犯率を考えたら、これからは、このくらいの刑が必要なのかもしれない。むしろ、これまで、静顔の刑では甘すぎたのかもしれないわ。」


プリンセスは、その映像を観て、かなりショックを受けているようだった。

「もしも、あなたに、続けてもらえるなら、1ヶ月だけ、これを試してみましょう。これからは、逮捕状がでたら、犯人の居場所を、こちらの本部で特定してから、教えて逮捕状を渡すわ。1ヶ月だけ、まずは、お願いするわ。」

「いいわよ。私の方こそ、続けてお願いしたいわ。まずは、1ヶ月、やってみるわ。」


そして、1ヶ月の間に、実に、7件もの連絡があり、7人の犯人から美貌を奪っていったアンドレア。


 すると、その1ヶ月で、瞬く間に、闇での噂が広まりだしていた。そこで、闇でのあまりにも早い噂の広まり方に驚いた美貌管理警察本部では、アンドレアに対して、とりあえず、あと半年、その試し期間を延長してほしいと、プリンセスを通じて連絡があった。


再び、王室を訪れたアンドレア、プリンセスは、前回とは、打って変わって、笑顔で迎えた。


「アンドレア、ご苦労さま。すごいわね。もちろん、一般的には、誰も知らないのだけれど、悪人たちの闇の世界では、この噂で持ちきりよ。今現在、騙して財産を持ち去ろうと計画中の人たちは、急に連絡が来なくなったという話しも、美貌管理警察本部から情報が入っているわ。すごいわよ、アンドレア。それに、この試し期間も、半年延長してほしいって、美貌管理警察本部長から、直々に連絡がきたわ。ひょっとしたら、その間に、本部から正式に許可が降りて、正式な部署として組織されるかもしれないわ。もしもそうなったら、できるのは、あなたしかいないけど、このまま続けられそうなの?」

「もちろんよ。私はね。前期のプリンセスであったお母さんが、この刑を無念の気持ちで受けなければならなかったのに、本当に罪を犯して、この刑を科せられた罪人たちが平気でいられるのが、我慢できなかったのよ。刑を受けたら、必ず苦しんで後悔して、2度とやらないと思ってほしいのよ。だから、今度は、この刑が怖くて、犯罪に手を染めないでほしいわ。これから、徹底的にやってやるわ。」


 そして、半年で、20件にかかわる犯人、36人の美貌が失われていった。そして、そのまま、正式に、美貌管理警察本部に、美貌喪失の刑という名称のもと、そのための処刑執行部の関係管理部署という部署が設定され、アンドレアは、その執行担当となり、その中には、情報捜査担当が設けられ、そこに逮捕状の発行の通知が入ると、それを受けて、容疑者の現在位置を情報捜査担当者が調査して、位置を確かめると、アンドレアに要請が伝えられる。その実行の際には、黒い特殊な女性用のシックなスーツに、現場では、直前に、黒のマスクを装着して、その腰には、万が一逃走を防ぐために、麻痺銃が装備されている。 


その後、犯人たちは、やりかけたまま犯罪を中止にしたとしても、黒い服装の女性が近寄ると、反射的に震えて逃げてしまうというように、皆、彼女に対する警戒心を常に持つようになっているという。そして、アンドレアは、美の処刑人と、呼ばれるようになったが、実際には、アンドレアが、その本人だとは、刑の執行部関係者以外には、知る者はいなかった。


 そして、とうとう、政府の上層部や、王室において、いよいよ、他国との美の対決についての、改善提案が起こるようになってきたのであった。つまり、ここで、コトールルミナス国での美の対決の戦闘要員の育成という提案と同じことが、アルタコーネス国でも、提案されることとなったのである。


だが、コトールルミナス国の場合では、必ず、美の対決を行なっていたプリンセスの美貌に同等か、それ以上のレベルの人員確保が困難なために、覚醒するステラたちが見つかるまで、かなりの年数を要した。


一方で、アルタコーネス国の場合には、すでに、アンドレアが存在していた。もちろん、彼女自身の美貌も、そのままでも、美の対決に相応しい容姿を持っているのだが、彼女には、対戦相手から、美貌を消し去る能力、オプティタイザーがあるので、もはや、無敵であることに間違いはなかった。この時点で、今後、プリンセスの代わりに、美の対決があろうとも、アンドレア以外には、世界中で、美貌対決で勝てる者などいないと、アルタコーネス国では、何かあれば、アンドレアがすべて引き受けることに決定していたのである。


 そして、今回、ビバリアレメディス世界美人認定協会は、この世界的規模のコンテストの候補メンバーとして、アンドレアを選んでいたのは、もちろん、王家の血筋から受け継ぐ、その美貌によるものであるのは明白であったが、もはや、美の対決ではアンドレアは無敵となっていることを知らない協会の人選ミスではなかったのかと、アルタコーネス国の上層部は、冗談を言いながら話していた。


「それにしても、アンドレアがビバリアレメディス世界美人認定協会から候補者に選ばれたなんて、協会の担当者たちったら、全く無知もいいところね。それとも、その目は、ふし穴なのかしら。」


すると、もう1人の女性も、笑いながら、

「いや、本当よ。なにしろ、アンドレアの、あの美貌でしょ。候補者じゃなくて、そのまま、ネオビーナスに決まりじゃない。その上、あの技を使ったら、他の候補者たちは、大恥かいて帰るしかないのにね。」

「あああー、そんな対決なんて、実際に見てみたいわ。きっと、スカッとするわよ。」

上層部の女性たちの話しは、盛り上がる一方で、なかなかおさまらなかった。


だが、今後、もしも再びライバル国であるコトールルミナス国との対決があることを考えれば、ここで、アンドレア、いえ、ここではアンナの名前だが、彼女が完全勝利することで、両国のはっきりとしたケジメがつけられて、良い機会なのだろう、とも思って、政府は、喜んでアンドレアをコンテストに送り出していたのである。

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