1 -5 究極の美の称号ネオビーナス⑤
【究極奥義 オプティタイザー】
アルタコーネス国からきたという、美のスペシャリスト、アンナ・ソフィア・ベルガー、その本名は、アンドレア・エルヴァスティ・プルクネン、といい、アルタコーネス国のプリンセスの3番目の娘であった。
以前、フランソワ高木は、自分がトップモデルとあげる、オービスとエミリアをつれて、国の名前を別の国名と偽られてアルタコーネス国にコスメたちと共に招待された。しかし、そのモデルたちが、実は、敵国のコトールルミナス国の人間であることを知り、美の対決を言い出したプリンセス エメリスは、美の対決に未経験の2番目の娘スターシアを対決の場にださせるが、エミリアの微笑みに緊張が高まって、辱めを受け、あっさりと敗北してしまう。
その後、敗北させられたエミリアに復讐をするスターシアは、日本で失敗して、逮捕され国に戻り、有罪となり静顔の刑となるが、プリンセスがその刑を代わりに受け、笑顔を封印されて、残りの生涯を送った。その後、プリンセスが笑顔を失ってから生まれた3番目の娘アンドレアは、母親の素顔を直接見ることもできずに、母親は生涯を閉じた。その後、10才となったアンドレアは、静顔の刑を代わりに母親が受けたことを知り、呆然として、それによって、2つのことに強い思いを持ち、ある決意をした。
それは、この国の最高刑が、静顔の刑という、顔の表情を凍り付かせて、一生笑顔を奪うという刑であることに対して、これまで多くの美貌の女性たちが、その美貌を悪用してきたことに対して、あまりにも刑が軽すぎるのと、その時点での最高刑を、自分の母親のプリンセスが受けてしまったことをとても悲しんだ。
そこで、王室にいる立場の彼女が、1つ考えたのは、静顔の刑を受けたにもかかわらず、その女性たちの再犯が多いことから、もっともっと重い刑を犯罪者に科す必要があるということ。それから、生きていながら、母親と直接、接することができなかったのは、姉のスターシアがコトールルミナス国との対決に負けたことから始まったことであり、いつかは、自分がコトールルミナス国のプリンセスを美の対決で自分の手で倒して、この屈辱を晴らしたいという、もう一つの思いがあった。この2つの思いを、アンドレアは、わずか10才の時に、自分の力で必ず、この思いを晴らしたいと、それはまさに執念であった。
そして、アンドレアは、王家に生まれていたせいもあってか、もともと、知能指数の高さも生まれつき桁外れであり、運動能力も常人を遥かに超えていたし、もちろん、その血筋のせいか、その美貌も桁外れなのは言うまでもなかった。そのわずか10才当時より、美のエネルギーについての研究を始めて、自らの持つエネルギーについても理解し、そのコントロールを可能とするまで修行を積んでいた。
そして、日々瞑想法などを重ねて、なかなか、そのレベルアップがはかれない時期を迎ていたアンドレアは、超えられない壁にあたっていた。
そんな、ある時、外を歩いていると、目の前にある交差点で、そこを渡ろうとする少女に、車が突っ込んでいくのをみて、おもわず飛び出したアンドレアは、その少女に抱きついて、道路の脇へと押し出した。すると、少女の代わりに、跳ね飛ばされたアンドレアは、全身を強打し、瀕死の状態となってしまう。アンドレアは、ただ助けるつもりが、そのタイミングが遅れて、なんと自分が犠牲になってしまったのである。すると、やってしまったと気がついた時には、もはや、その命は、手遅れの状態であった。
こんなところで死ぬなんて、予定外だったわ、そう思いながら、小さくなっていく命の意識。同時に、自分の意識も少しずつ消えて、薄れていく意識の中で、アンドレアは、仕方なく、覚悟をした。
すると、もはや、その身体は、痛みすらも感じず、自然にゆっくりと目が閉じていく。その命の最後の糸が切れるのを感じながら、まさに、眠りにつく瞬間の、一瞬、その手前で、なんと、脳内にある赤い結晶体が活動を始め、その意識は、再び、目を覚ますように、はっきりとしてきた。すると、その結晶体は、覚醒を始め、たった今、身体からすべてのオーラが消失した瞬間、結晶体からは、メガオーラが放出され始めている。やがて、それは、全身を満たすと、これまでにない、全身にみなぎるエネルギーを感じたアンドレアは、これまでにないパワーを感じて、復活したのである。
その時を境に、オーラや美のエネルギーのコントロールする能力を手にすることができた。その時、アンドレアは、16才となっていた。
そして、ある日、次期プリンセスとなっていた、長女のセリシアの元を訪れていた。
「久しぶりね。プリンセス。」
「あら、アンドレア、久しぶり。今なら、セリシアと呼んでもかまわないわよ。今なら、だれもいないし、あなたと会うのも、久しぶりだったからね。本当に懐かしいわ。ところで、あなたのやっていた研究が、とうとう成果が上がったってきいているわよ。そうだったの。」
「実は、そうなんだけど、そのことで、プリンセスにお願いがあって、来たのよ。」
「あら、そうなの。それは、どんなお願い?」
それは、彼女が、10才の時から考えていた2つのこと。まず、その1つについて、プリンセスに提案をした。
「実はね。今、昔から比べて、犯罪者がだいぶ増えているじゃない。」
「そうね、特に、美貌の女性たちの犯罪が、かなり目立って増えているわね。彼女たちは、その美貌を武器にして、この国で、何よりも価値のあることがわかっているからね。昔は、そんな犯罪は、あまりなかったのにね。」
「プリンセス、私が思うには、最高刑が軽すぎるからだと思うのよ。静顔の刑、これは、無表情となって、笑顔が一生封印されて、冷たい顔になってしまう。昔なら、これでも、美人顔の笑顔から比べたら、とてもショックだったでしょうね。でも、今の女性たちは、精神的にも強くなっているし、だいぶ違うわ。その冷たい顔でも、悪びることもなく、それを1つの個性として、再び別の形で、その顔を活かして犯罪を繰り返してるじゃないの。悪い女性たちは、どこまでも懲りないわ。」
「そうね。それで、アンドレアのお願いって、一体なんなの。」
「実は、私ね、美貌管理警察に入れてほしいのよ。」
美貌管理警察とは、コトールルミナス国でいう美警察と同様のものであり、美人や美貌関連に特化した管理、偽美貌の取り締まり、処罰などを行なう行政機関であり、この国でもっとも価値が高い女性の美貌を悪用させないためにも、その管理をしている機関なのである。
「なんですって。あなたが、美貌管理警察に。それは、なぜ?」
「私ね、美貌を悪用している女性たちが許せないのよ。私たちの母親だった前期のプリンセスが、訳あって、静顔の刑を執行されて、その後は、とても辛い生涯を送ったわ。それなのに、本当に悪いことをした女性たちは、静顔の刑を処されたにもかかわらず、別に特にショックを受けることもなく、再犯を繰り返してる。そんなに、平然と再犯ができるような刑なんて、何の意味もないわ。彼女たちは、平気なのよ。」
「それで、あなた、美貌管理警察に入って何がしたいの。」
「私は、そういう犯罪者を、私なりの方法で処罰したいのよ。それで、その処罰方法も、私が考えたので、プリンセス直々に認めてほしいの。静顔の刑よりは、遥かに効果があると思う。私なら、絶対に、犯罪を減らしてみせるわ。でないと、女性の美貌を象徴する文化が今に壊されてしまうわ。私は、それを阻止したいのよ。」
「なんですって。あなたが処罰するって、そのために、何ができると言うの。」
「何ができるというよりも、これは、もはや、私にしかできないわ。とにかく、説明を聞いてちょうだい。」
これは、アンドレアが、美のエネルギー研究をする中で、赤い結晶体が覚醒して、メガオーラを手にした末に編み出した究極奥義であるオプティタイザーという技であった。
これは、人は、生きている中で、基本的に、その生命を維持するために、生体エネルギーというものに支えられて生きているが、その次に、2次的に、体内にある、それぞれの内蔵や精神的な部分である、多種な心や、様々な感情というものは、それぞれに独自のエネルギーを持って維持活動をしている。その中でも、人それぞれ、個人的に持つものの1つとして、美貌のエネルギーがある。その女性の美貌の程度は、100か0というはっきりと区別されるものではなく、その美人度の度合いによって、美のエネルギーの量と質が変化して存在している。そもそも、美貌というものは、その顔形が、ただそこに存在しているわけではなく、内在している、美のエネルギーによって、その芸術的な形、部位が存在し、全体的に芸術的なバランスが保たれている中で、その美しさのオーラを作り上げて、放出している。日本国内においても、常識を超えた域の美人というのは、一般人がみても、そのオーラを感じることがあるが、それこそが、美のエネルギーである。そして、その、美のエネルギーを失うと、そこには、芸術的な形とそれを形成するバランスが崩れ、その崩れ方によって、美貌とは比べようもない顔形の芸術性を失った部位と、その不均衡な羅列になってしまう。
そして、そのエネルギーが、0の場合は、この特殊な国では、美人の範囲とは、とても認められないどころか、最低線の顔認定を与えられてしまうのである。
アンドレアは、その美のエネルギーを、その相手の女性の中に単独で見極めて、自分の中で作り出すメガオーラのエネルギーを放出してぶつけることで、美のエネルギーのみを体外に弾き出すことができる。すると、その女性から美のエネルギーがなくなってしまい、美貌のバランスを完全に失ってしまうという、とても残酷な技である。つまり、これがオプティタイザーであり、美貌をなくしてしまう究極の技なのである。
この説明を聞いたプリンセスは、少し動揺を隠せなかったが、1つだけ、どうしても、自分の中で長年悩み苦しんできたことがあった。