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8 奇跡の水

 そして、それから、20年が過ぎ、水の製造が始まって50年がたち、とうとう、その瓶がいっぱいになった。


 しかし、毎日、一滴ずつの供給は、見た目でわかるわけもなく、その達成した日も、いっぱいになったかがわからなかった。だが、その日、いつものように、供給が終わり、アームが蓋をすると、その奥の扉らしきものが開いて、何かがゆっくりと手前に進み、瓶にかぶさった。


すると、どこからともなく、


「完成しました!」


と声が響いた。驚くコトールだったが、その次に、例の人物の声が、50年ぶりに発せられた。


「久しぶりね、コトール。今日、50年かけた水が、初めて完成したわね。」


すると、コトールは、思わず叫んだ。


「あなたねえ、私たちを、からかうのもいいかげんにしなさいよ。この水、ただの水じゃない。50年かけて作るどころか、水道をひねったら、すぐに、いくらでもでてくるわ。」


すると、その声は、


「なんですって!コトール、さては、あなた、あのボタンを押したわね!あのボタンを押さなければ、あの水を飲める分なんてあるはずないからね。」

「そうよ、あんなに、50年もかけて作る水なんて、飲んだらどうなるか気になって仕方ないじゃないの。だけど、ナリント国で、普通に飲んでた水だったわ。わざわざ、こんな、手の込んだことして、作り出すマネさせて、どういうつもりなのよ。」

「そのボタンはね、あなたたちに与えた、万が一こぼした時にその分を補充するための緊急の装置だったのよ。それから、あの水が、普通の水だったのは、あなたたちが、まだナリント人だからなのよ。」

「なんですって!私、コトールルミナス人になったんでしょ!」


驚くコトール、

「実はね。あなたも、アルタも、肉体はなくなったけど、まだナリント人そのままなのよ。だから、まだ顔も、その美貌は、そのままよ。」


「まさか!この80年間、もう私、ナリント人でなくなったと思っていたのに!まさか、そんなこと!」


「ただね。今、あなたたちは、まだ今までのままの美貌だとはいっても、ここには、鏡はないし、他には誰もいない。だから、誰もあなたの今の顔が、どんな状態なのか、ましてや本当にこれまでのままの顔なのかは、確認はできないのよ。その顔が永遠に確認できないのも、一つの罰なのよ。容姿の落ちた顔をみるよりも、綺麗なままの自分を確認できないという苦しみを味わっていくのよ。あなたたちに、相応しい罰ね。」


「あなた、どこまで私たちを苦しめるというの!」


「あなたたち、これまでの罪の深さを知るには、まだまだ、これからよ。」


 そして、ここまでの出来事は、もう一方の、アルタにも、全く同じことが起こっていた。謎のパネルを見つけて、赤いボタンを押して、ノズルから水が出たあと、飲んでしまい、ただの水だと知り、ショックを受けた。ここまで、同じことが起こり、しかも、その謎の人物の声は、全くコトールと同時に発せられ、2人の人格が起こっていたのである。ここまでは、その会話や様々なやり取りは、すべて、全く同じように行われていた。この人物は、何ヶ所にも同時に存在ができるのであった。


そして、その水についての話しになった。


「さて、50年かけて、作り出した、この水は、コトールルミナス国の、オリリナース山にある美と命の泉から、50年に一度湧き出てくるの。ほら、あの瓶をみて。」


 すると、水がいっぱいになった瓶をみると、その水位がすーっと下がっていった。その水位が下がって空になっていく様子をみたコトールは、せっかくの50年の作業が、実はたった今、ゼロになったのではないかと、声の主に、またもや騙されたのではないかと、再び絶望するのであった。そして、もう1人の、アルタもショックをかくせないのであった。

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