7-3 与えられた仕事③
これまで、生きてきた中で、これほど興味をもたらされたことはかつてなかった。そのパネルを開けると、はっきりと見えた赤い丸いボタン。
コトールは、その赤いボタンを、しっかりと見つめなおして、ごくりと唾を飲んだ。ここ何十年もなかった緊張に、手が震える。
右手をゆっくりと上げたコトールは、その人差し指を赤いボタンに持っていくと、その震える指先を、そのボタンに触れていく。
そして、意を決して、ゆっくりと、そのボタンを押し込んだ。
すると、そのボタンは、赤く光り、プーンという音が繰り返し鳴り始めた。
今、その研究室にいるのは、コトールだけであり、他にそれを聞く者は、コトールしかいない。そのためか、その音はそれほど大きくなく、しかも、1分もたたずに、すぐ鳴り止んだ。
すると、コトールは、次の瞬間、直感的に、何かに気がついて、機械の最後の工程にある、あの瓶の下に走った。
その瓶を見ると、ゆっくりと迫り上がり、アームが動き出した。アームは、蓋を開けて、ノズルが下がってきた。
そのノズルからは、なんと信じられない量の水が落ちてきた。それは、いつもの一滴ではなく、一筋の水が注がれていく。それは、おそらく、2、3年分くらいではないだろうか。
注ぎ終わると、再びアームが蓋をして、終了した。コトールは、その信じられない量の水の出方に驚き、再び、さっきのボタンに戻った。
すると、先程は気がつかなかったのだが、そのめくったパネルの裏側には、何か文字が見えた。それは、みたことのない文字のようなものが書いてあった。それは、未知の文字のようで、読むことはできないのだが、四つ文字があり、一つ目は、数字の「3」であり、続いて、あと3文字。その文字は、読めないのだが、赤い太い文字ではっきりと書いてあり、まさに緊急を知らせるようなイメージで、記されているので、さっきの注がれた水のことであったのは、間違いはない。ということは、あの水を示したことであることを考えると、おそらく、最初の文字の数字の「3」は、 3回、か、3年、を意味するのではないだろうか。ということは、何か事故や緊急時に水が失われた時に、急遽、3回、いや、どうみても3回分の量ではなく、3年分か、そして、ボタンの色の赤は、やはり、緊急を思わせる表示の色であることから、おそらく3年分取り戻せるための緊急ボタンだったに違いない、と思っていた。
すると、コトールは、あることを考えた。と、いうことは、今、あの瓶には、少なくとも、より多い分の水が入っている。そう考えると、コトールは、一度あることを試してみたいと思ったことが脳裏をよぎった。それは、あの水は、いったい、何なのか、あれを飲むとどうなるのか、ということであった。
そう思ったコトールは、あの瓶のある場所をよく調べてみた。そして、その瓶に手をかけると、その台から、ゆっくりとひきだすことができた。そして、その蓋をゆっくりと捻ると、開けることができた。
あ、開いた!そう思うと、その予想外のことに、ドキドキが止まらない!これを飲んだら、いったい、どうなるのか、どんな効き目があるのか、ドキドキがさらに強くなり、手が震えている!
そして、注意深く、その瓶の中に、すでに入っている水の量を改めて確認した。昨日まで、入っていた水の量、つまり、水位を確かめると、その辺りを指先で押さえて、その位置を確認しながら、少しずつ、中の水を飲んでいった。何回か確認しながら、増えた分だけを飲み干したコトールは、その水の味をよく味わっていったのだが、意外なことに驚きをかくせなかった。




