2-7 ジェラスの物語⑦
すると、ジェラスは、とにかく躊躇なく、アンシャンテの家の住所を聞いた。
それを聞いて、驚いたような表情になったエンドリア、
「ああ、あの、アンシャンテね、、、、。」
ちょっと口ごもってしまったエンドリア。何か、とても言いにくそうにしている。
すると、やっと、口を開いた。
「アンシャンテね。あの子はね、、、実はね、、、ジェラス。驚かないで聞いてちょうだい。あなたが、学校を辞めてからね、そう2か月くらいたった頃だったかしら。あの子、自殺してしまったのよ。」
あまりのことにショックで息が詰まりそうになるジェラス、
「なんですって!!うそでしょ!信じられないわ!」
「ある時ね、学校が終わって、放課後、同じクラスの子がね、たしか、あれは、オリメラだったわ。アンシャンテが、いつもの自宅までとは、違う道に歩いていくのを見たんですって。それで、どこに行くのかなと思って、跡をつけたら、エンドア川がよく見える橋まで行くと、そこから、身を投げたそうよ。
その日は、前の日にすごい嵐で、エンドア川は、水位もかなり上がっていて、すごい流れが激しくて、あっという間に見えなくなったそうよ。オリメラは、すぐに警察に知らせて、捜索したんだけど、結局、遺体も見つからなかったそうよ。警察に連絡したあと、すぐに学校にも連絡がきたんだけど、本当に悲しいことだわ。」
なんということ。まさか、あの子が自殺するなんて、信じられない。あんなに美人で、頭も良くて、何一つ嫌なことなどなかったはずよ。いったい、あの子に、何があったというの。それにしても、あの美貌を吸収できなかったなんて、本当にもったいないことをした。くるのが遅すぎた。残念すぎるわ。
すると、ジェラスは、
「まさか、そんなことになっていたなんて、知らなかった。悲しすぎて、言葉がないわ。」
「そうよね。私も、それを聞いてショックだったわ。」
その知らせを聞いて、ジェラスは、もはや、言葉に詰まってしまった。
「先生、、、、それじゃ、私、帰りますね。」
すると、ジェラスは、究極の美貌を手に入れられなかった無念の気持ちを抑えて、先生と別れていった。
だが、しかし、ジェラスが出ていくと、ため息をつくエンドリア、
ええ!あれは、やっぱり、うわさ通りだったわ。ジェラスったら、あんなにも綺麗になって、なんか変な薬か何か使ってたのか、わからないけど、人から美貌を奪ってるのは、間違いない。そんな信じられないこと、ありえないとは思っていたけど、たった今、あの娘の顔を見たら、怖いことになっていたわ。あの顔は、綺麗すぎて、ありえないわ。それにしても、私より綺麗になるなんて、、、この、学校一綺麗な私より綺麗だなんて、身の程知らずにもほどがある!いつか、絶対に後悔させてやるから!
これまで、人の美貌など、全く気にしなかったナリント人たちであったが、ジェラスから生み出されてきた、人を羨む気持ちは、多くの女性たちに広まりつつあった。
そして、ジェラスの顔を見て、羨む気持ちから、少し苛立ったエンドリアは、その窓から、ジェラスの行った方に視線をやると、その窓に映った自身に気がついた。
ああっ!!なんてこと!!!
そこには、もはや、美人という表現には程遠い顔になったエンドリアの姿があった。
だが、その、ショックを受けて発した言葉は、ただ生まれて初めて、ここまで低レベルの顔を目撃したことに対して驚いた瞬間の言葉であり、それが、自身の顔であるという認識は、その数秒後に、彼女を襲った。
あああああーっ!!!!、、、、はっはっはっはっ!!ああっ、はっはっはっはっはっはっ!!、、、、、
今までかつて見たことのない低レベルの顔が自身のものだとわかった瞬間の、そのショックは、計り知れず、エンドリアの精神を破壊してしまった。狂人と化したエンドリアは、いつまでも笑い続けるのであった。
実は、エンドリアが、その美貌に驚き、ジェラスの頬に手を当てた時、すでに、彼女の美貌を、すべて吸収していたのであった。
一方、学校から帰る途中のジェラスは、アンシャンテに会えなかった気持ちを、どうにも処理できずにいた。そして、その気持ちをまぎらわすため、美人のいそうなところを訪れては、次々と、その美しさを吸収していった。
そして、ジェラスは、度重なる美の吸収をする中で、美貌というのは、その、個としてのエネルギーであることに気づき始めた。
ということは、吸収することもできるならば、外に放出することもできるに違いないと思い、あることを思いついた。
それは、オーヴェロンが黒い花をつけていることを哀れんでいたジェラスは、自ら蓄えてきた美貌のエネルギーを分け与えてみた。すると、その花は、鮮やかな赤い花をつけて、これまでとは全く違った、世にも珍しい美しい植物となっていった。だが、そのことから、オーヴェロンは、美のエネルギーを吸収する喜びを覚えてしまったのであった。
そして、そのことをきっかけに、オーヴェロンは、その自らの枝に実をつけて、それをばらまいて、人に食べさせることから、自らも美人から美貌を吸収することができるようになり、その時から、美植物オーヴェロンとなってしまったのである。そして、その吸収した美のエネルギーは、自らの美に変えるだけではなく、ジェラスへの恩返しとして、その実から吸収したエネルギーを、ジェラスにも分け与えるようになっていた。
この頃には、すでに、数百人以上の美人のエネルギーを、吸収したジェラスは、これまでにない美貌の自分を手に入れていた。
そして、ある日、とある学校の正門にきたジェラスは、ある少女を探していた。
学校は、授業が終わり、その放課後、多くの生徒たちが帰る中、1人の元気のない、悲しそうな少女が出てきた。その少女は、ゼミール・ガルバッド・ブラスターといった。




