2-3ジェラスの物語③
すると、ジェラスは、少しずつ、アンシャンテに、自分の美しさを否定されているような妄想まで抱くようになっていた。これまで、自身の美しさを、一つの生きがいのようにして、生きてきたジェラスにとって、それはとても残酷な感覚であった。
それに、アンシャンテには、自身が美しいと感じているような気持ちが、周りからみていて、微塵も感じられない。だが、逆に、その振る舞いが、ジェラスの気持ちを逆撫でしてしまう。つまり、アンシャンテは、何も悪くはないし、その上、自身の美しさを誇示することもしない。
だが、逆に、それが、さらに、ジェラスの気持ちを傷つける。それなら、自身の美しさを誇示してほしいのだろうか、いや、決してそんなことはない。というよりも、もはや、何をされても、アンシャンテに対して、好意的な気持ちにはなれない。それが、ジェラスに、初めて生まれた感情なのであり、ナリント人として、初めて生まれ始めた、濁った気持ちであった。これは、アンシャンテが、どんなにジェラスの容姿を褒めようとも、たとえば、自身の容姿のことを、否定したとしても、ジェラスの気持ちは変わらない。その気持ちが変わるのは、自身がさらに、その上に行くか、アンシャンテが下がっていく時しかありえないのである。そして、次に、ジェラスの気持ちの変化した先にあるもの。それは、対抗意識であった。
その日以来、ジェラスは、もやもやが、おさまらなかった。そして、今日もその気持ちを落ち着かせようと、散歩に出かけた。すると、道端に咲いている、とても小さな花に目をやった。とても小さな黒い花であり、その姿は、とてもきれいとは言えず、誰にも見向きもされない。
だが、皆から綺麗だと思われているアンシャンテのことを考えると、この黒くて小さな花は、皆に嫌われても、自分だけは、好きになってやりたいと、アンシャンテに対する反発心から、とても愛らしく思ってしまった。気に入ってしまったジェラスは、それを根ごと掘り起こして、家に持って帰ってしまう。
鉢に植え替えて、面倒をみるジェラス。色々と面倒をみるようになって、とても愛着を持つようになった。
「私は、この花が本当に大好き。だって、とても小さかったのに、こんなに大きくなってきて、なんだか、本当に愛着が湧いてきたわ。私、これに、オーヴェロンと名付けるわ。」
その花は、これまで、その見た目から、皆から嫌われ、踏みつけられ、人間でいう、いじめのような日々を送っていたのだが、ジェラスからの愛情を受けて、もちろん言葉を発することはできないが、とてもジェラスに感謝していて、その気持ちに応えたいと、その花は、いつも思っていた。




