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140文字で軌跡を振り返れば、一年分の花束に

作者: 並木空

2024年度に旧twitterで発表した140文字小説のまとめ。

ユーザー企画などの「お題」は不使用です。

『冬空の下、君と手を繋ぐための準備』

月間天気予報を見て君は嬉しそうに笑った。「今年はホワイトクリスマスになるかもしれない」と心地の良い声が弾んでいた。雪が滅多に降らない地域だからミゾレ程度の降雪でも、その可能性が楽しみなのだろう。君が凍えないように大きなビニール傘とマフラーを用意しよう。ホッカイロと手袋は必要ない。


『贅沢は値段で決めるものじゃないと知っている』

コンビニで買った弁当を食べていたら、君が作ってくれたトーストとコンソメ味のスープを思い出した。6枚切りで180円の食パン。半端な野菜とキッチンバサミで切った豆苗を顆粒のコンソメで煮て塩コショウで整えたスープ。コンビニで買った弁当よりも安かったけど、あたたかい味がして今は懐かしい。


『満月だから狼の耳が生えたのかもしれない』

毛布を被って部屋の隅っこにいた。静かな足音が近づいてきて私のすぐ側に座った。お説教でもされるのかな、身構えた。「広い世界で独りぼっちだって思ったの」一人じゃないくせに私は口に出していた。毛布の端をぎゅっと握りしめて。「そうか。もう大人になってしまったんだな」とだけその人は言った。


『生き地獄に君はいる』

「死んだら天国に行けるって本当だと思う」君は唐突に話し始めた。ビー玉のような瞳が僕を見ていた。君は神様なんて信じていない、と思っていた。細い腕から伸びた管越しに「君だったら天国に行けるよ」と僕は頷く。「誰でも行けるよ。だってここは地獄だよ。死んだら解放されるんだ」君は淡く笑った。


『桜が美しいのは散るからだ、君は笑った』

二人で見よう、と約束したのは死にたがりな僕のためだと思っていた。君は素敵な場所を知っていたから、任せっぱなしだった。だから少し北にある名所で花見をしようと君が言い出したのは自然なことだと思っていた。ねぇ、まだここでも桜は咲くどころから蕾すら硬い。一緒に見るんじゃないかったのかい?


『遠き春。あの日の言葉を振り返る』

あなたは「あいしている」と言った。この耳で聞いた音を勝手に漢字を当てはめていた。恋の続きの「愛」だと思っていた。私たちはあの時、恋人同士だったのだから、それが自然だった。でも今になって独りで考えてみる。「哀している」という意味を含んでいた、と。私の家族になってくれたあなただから。

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