第1話
僕は、小さい頃から何でもできた。
スポーツも、勉強も、なにもかも。
だから国内でトップクラスの大学にもいけたし、サッカー部ではキャプテンを務め全国大会にも出場することができた。
人生って簡単だ。
なんて、生意気なことを思っていた時期もある。
だからといってなんで、僕の手が青色に光っているんだ。
僕に人なんか殺せない……
──ひとりも人を殺さなかった場合は——
——あなたを殺します──
殺さないと、殺される。
「さらに細かいルールがあるのですが、時間がないので後日、説明書を送ります。よく読んでおいてください。えーでは、この一年みなさまに幸せが訪れますように──さようなら」
テレビ画面が変わり、鐘の音が聞こえる。
このことをまだ知らない人の幸せそうな顔が、いつにも増して際立って見えた。
「冗談だよね?」
僕は最後の望みをかけて、いつも冷静沈着で、聡明な両親にきいた。
「……………」
その、冷静沈着であるはずの両親は、茫然自失と虚ろにテレビの方向を見ていた。
「父さんっ!
これはフェイクニュースかなにか、なんだよね?」
父は、青い顔をして、言った。
「まさと……これは恐らく事実だ」
僕も薄々は気づいていた。フェイクニュースにしてはリアルだった。それに公共放送がそんなふざけたことをするわけがない。
でも、その事実受け入れることがどうしても出来なかった。
──あなたを殺します。
その夜、僕の鼓膜にこびりついたように、その声がリフレインしていた。
ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー
説明書 No.1
下記に記されたことはすべて、国の最高法規とする。