僕の色
「今日から一年間、皆様国民で殺し合ってもらいます」
テレビからのその無機質な声が聞こえた時、僕の手が青く光った──
* * *
その日、僕は大掃除をしていた。
家にあるゴミをまとめたり、掃除機をかけたり、本棚の整理をしたりしていた。
大晦日に大掃除なんてやりたくないが、大卒一年目、二十三歳の僕に、今日まで休暇がもらえなかったのだから仕方ない。その分、年始に休暇がもらえてるから文句は言えない。
大掃除が一通り終わり、すっかり日も暮れた頃、僕は近所にある実家に帰った。
「ただいまー」
「おかえりー、父さんが待ってるよ」
久しぶりに家に帰ったけど、やはり落ち着く。家の匂いが心地いい。
リビングに入ると、豪華な食事と父が待っていた。
「ただいま、父さん」
「おー、おかえり。仕事は順調か?」
「まあまあだね」
僕は椅子に座って、目の前の料理を見る。
どれも美味しそうで、すぐにお腹が鳴った。
「じゃあ食べよっか」
「いただきます!」
* * *
料理はどれも美味しかった。
満足感を感じて、寝てしまいそうになるが、年越しまでに寝るわけにはいけない。僕は紅白歌合戦を見ながら何とか目を開いた。
やがて、その紅白歌合戦も終わり、ゆく年くる年が始まった。
例年通り、ゆく年くる年で年を越す──はずだった。
丁度0時になった瞬間、テレビの画面が急に飛んだ。
「えー、新年あけましておめでとうございます」
画面には、総理大臣が映っていた。
「突然ですが、今日から一年間、皆様国民で殺し合ってもらいます」
何を言ってるんだ、と思ったその時、僕の手の甲が、青く強く光った。
──僕の始まりは青色だった。




