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出来れば美女がいい

作者: 大島ケロ

 僕を麦畑ででも捕まえてほしい。そして殺してほしい。出来れば美女がいい。

 17才だったと思う。そんな願い叶うはずもなく、下校後の晴れた昼下がり、自室のベットに横たわり、タオルで首を絞めてみた。たいして力を入れることは出来ず、怖くなり辞めた。自殺未遂ともいえないほど半端で薄い出来事。

 常に体と頭は鈍っていて、思考は働かず、昼は常に眠い。深夜はロックンローラーだかがラジオで楽しそうに話をしているのを聴いている。この深夜の時間が一番頭が冴えている。高校の微分積分が理解できない僕は、高度成長期のこの国には必要とされていないのだ。それなら深夜のロックンローラーになろうか。ギターは弾けないし、バンド組む友達もいないけど。ではラジオの構成作家はどうだ。そうしよう。だが、微分積分の授業は、僕の向かうこういう将来では確実に役立たないだろう。構成作家のなり方みたいな授業はないのか。ないならないでいい。世間はそういうシステムらしい。

 高校は男子校。モテない男子高校生なんて地獄だ。もう懲役3年間をこの牢獄みたいな学校で過ごす。心は常にどんよりしていて、色んな邪念が体中渦巻いている。青春を美化するのはやめてくれ。間違いなく、この先もこの頃に戻りたいなんて思わないだろう。むしろ刑務所の方が満たされているんじゃないか。

 大人は分かってくれないなんてことはない。割と分かってくれる。本にもわりと真実が書いてある。平和なはずの世の中。ただ分かってくれたところで何も解決しないのだ。本当にあの時、思いっきり力を入れて首を絞めればよかった。いっそ、少女になって放課後の女子高に迷い込み、病的な思考渦巻く放課後の女子たちに囲まれたい。そこは夢なのかなんなのか知らないが、そこから帰ってこられなくなればいい。もう性で苦しむのは嫌なんだ。

 時は経ち、社会人になったら、以外に悩みは少ない。色々便利だ。ラーメン屋行っても気兼ねなくフルトッピングなんかしちゃうし、しかも大盛で頼んじゃう。レストランでいっちょ前に女の子のお会計までしちゃったり。昔死のうとしていたのに、一転、いや、もうなんか、成功者だ。実家暮らしで家賃払ってないからだけど。会社では上司やお客さんから怒られたりするけど、両親からは怒られなくなった。なんか、背中がむず痒い。学生の頃から何も成長していないはずなのに。そしてその後、結婚してから自分が貧乏だと気が付いた。いや、周りが稼ぎすぎだ。そんな金要らないだろう。

 美女を抱きたいなんて思わない。美女に抱かれたいと思っているのだ。だからきっと駄目なんだ。





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