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第3話 業火の炎刀

こんばんは、みかんじゅーすです。

続きです。

「……ここだ」

男はそう言って、ある和室の戸を開ける。

「……!」

あまりの和室の広さに柚希は驚愕する。おそらく二十人程度は入れるぐらいの部屋だ。その部屋には、たくさんの刀が、まるで展示物のように置かれていた。

「ここは霊封隊の武器を保管しておく、いわゆる武器庫ってとこ」

輝夜が柚希に顔を覗かせて説明する。対して男は、輝夜や柚希よりも先に部屋の奥へ進み、

「……お前ならこの刀が最適だろう」

男はそう言って、一本の刀を手に取って柚希に差し出す。

「……え?」

柚希が困った顔になると、輝夜が二人の間に入って話す。

「隊長駄目ですよー、こういうのはちゃんと本人が選ばないとー」

「……そうだな。忘れていた」

男はそう言って、取った刀を元に戻した。

「え?刀って、自分で選ぶんですか?」

「うん。別に刀が生きてるって訳じゃないけど、手にした者によって、いろんな力が発揮されるんだ。ようは相性ってやつだね。相性が良ければ、刀の本来の力を発揮出来るし、逆に相性が悪ければ、力は発揮されない。」

「へぇ……」

柚希はそう言った後、とある刀が目に移った。

「……あの」

柚希はその刀の方に指を刺して、

「あの刀、触ってもいいですか?」

「え?」

輝夜や男はきょとんとした顔になる。

「あの赤っぽい刀です。……良いですか?」

「……良いけど……」

輝夜がそう言うと、柚希はその刀の方に近寄り、刀を手に取った。

「わぁあ……!」

見ただけで分かる。とても綺麗な刀だ。刀に詳しくない柚希でも分かる。

鞘の部分は細かい飾り付けがされていて、色は赤、というより赤と橙色がうまく重なった色合いになっている。柚希が目を輝かせていると、輝夜が話しかけてきた。

「その刀がいいの?」

「はい……!」

柚希がそう言うと、輝夜は微笑んだ。

「そっか……。それじゃあいっちょ、相性診断だね!」

「え?」

「言ったでしょ?刀を持つには相性があるって。相性が良ければ刀の本来の力を発揮できるって」

「あ……」


ーそうだ。僕とこの刀、相性が良くないと、全く意味がないんだ。


「さっ、その刀を抜いてごらん。もし抜けたら君はその刀に選ばれた、ということになる」

輝夜のその言葉を聞いて、柚希は刀を鞘から抜く。対して輝夜と男は柚希をジッと見ている。

「っっ!!?」

刹那、その刀からとてつもないオーラを感じた。瞬間、暴風が吹き荒れる。他の刀が一気に飛ばされる。あまりの暴風に、輝夜や男も目を伏せている。

「っっ……!?ちょっ、なに!?この風!!こんなの、今までなかったよ!?」

「……やはりあの男……、神が備わっている……」

「え!?かっ、神!?」

男からとんでもない単語が飛んできて、輝夜は驚愕する。

「…………」

依然柚希は黙って、抜いたままの刀の刀身を見ているだけだ。

「っ……柚希っ!!その刀、鞘にしまって!!……柚希っっ!!」

「……」

輝夜が大声で柚希に言うが、柚希は黙ったままその刀の刀身を見ている。


 ーこれは……この感覚は……なんだろう?分からない……。分からないけど……。この刀が僕を望んでる……?


ー良いの?僕、まだ戦闘能力とかないし、あるのは度胸だけだよ?本当に良いの?


ーありがとう。じゃあ、君を使わせてもらうね。


「……ゅず……き!」

「……?」

「柚希っ!!」

柚希の意識が戻った。手には鞘に仕舞われた刀があった。

「……輝夜さん?」

「そうだよ。……はぁ、良かったぁ〜、君が鞘から刀を抜いたと思ったら、急に暴風が吹き荒れるんだもん」

「え!?そっ、そんなことがあったんですか!?」

「うん。……君、本当に何者なの?」

「えぇ?そっ、そう言われましても……」

「……まぁいいや。とりあえず、君にはその刀が合ったみたいだね」

「あ……はい」

再び刀を鞘から抜いてみると、刀身部分は、鞘以上に綺麗だった。刃こぼれ一つない刀だ。刀身には薄っすらと太陽の紋章が見える。

「……『業火の炎刀』だな」

「え?」

男が柚希にそう言う。

「今まで霊封隊が所持してきた刀よりも最も優れた刀だ。……おそらく、輝夜が持っている『月下の輝剣』よりもおぞましい代物だ」

「……」

柚希が黙ったままでいると、輝夜が柚希に話しかける。

「……柚希、しばらくここにいててくれないかな?」

「え?」

「ちょっと、隊長と話したいから」

「……はい」

心なしか、輝夜の顔が渋くなっているのを柚希は疑問に思ったが、問いただす前に、輝夜と男は部屋から出て行った。

 「……隊長、さっきの言葉って、どういう意味ですか?」

「……と、いうと?」

「誤魔化さないでくださいっ!……あの子は……柚希には『神が備わっている』と、そう言ったじゃありませんか!」

「……」

男は黙ったままだったが、すぐに口を開き、

「……ただの比喩表現だ。……あの男のこと、ちゃんと観てやれよ」

男はそう言って、どこかへ行ってしまった。

「……」

輝夜は去っていく男をただ見つめていた。





 「…………あの……僕もう疲れてきたんですが……」

とうとう疲れてきた柚希は、ゼエゼエと息を切らしていた。

「このぐらいで疲れてたら霊封隊の仕事は務まらないよー」

「う……はい……」

意外と厳しい輝夜に対して、柚希の顔が渋くなる。

「……次はどこに向かってるんですか?」

柚希がそう言うと、輝夜は「んー」と、声を唸らせる。

「まぁ、これから分かるよ」

「……?」

これから分かるとはどういうことなのかと、柚希は首を傾げる。

「さっ、ついたよ!」

輝夜はそう言って、目の前の屋敷を柚希に見せる。

「……」

さっきの霊封隊の本部と比べれば、まだ小さい方だが、それでも普通の屋敷とは思えない大きさを誇っている。

「……ここって、もしかして誰かの家だったりしますか?」

柚希が輝夜に問う。豪邸だが、どこか生活感のある家のようにも見えたのである。

「ん?私の家」

「はっ!?」

「あーごめん、正しくは私の幼馴染みの家だよ」

「幼馴染み……?」

どうしてその幼馴染みの家に自分が連れてこられたのか、些か疑問を持ちながら、大きな門を通り抜けた途端、『何か』を通り抜けたような感覚になり、その後屋敷全体に大量の札が貼られていることに気付く。少し気味悪く思い輝夜に聞こうとしたが、すぐに玄関前の戸にたどり着いてしまい、聞きそびれてしまう。

 大きな玄関に入ると、たくさんの使用人が出迎えた。

『おかえりなさいませ、輝夜様』

使用人全員が息を揃えてそう言ったので、柚希は少し驚く。

「うん、ただいま」

輝夜は何食わむ顔で返事をする。と、一人の使用人が口を出す。

「輝夜様、そちらの方は?」

「ん?あー、……瑞稀の次の……」

そこまでは柚希には聞こえたが、その後のことは聞き取れなかった。使用人は首を縦に振って、柚希を笑顔で歓迎した。

 使用人たちに連れられ、ついたのは屋敷の最上階。綺麗なふすまの戸の前で輝夜は、「瑞稀、入るね」と言って、戸を開けた。

「……なに?輝夜」

少々めんどくさそうな声を放ったその少女こそが瑞稀。輝夜と同じ、黒髪で、薄紅色の目をしていた。

「わぁ……」

瑞稀に見られない範囲のところにいた柚希が、小さな声でそう言った。柚希が感激するほど、瑞稀は美少女だった。輝夜も美しいが、瑞稀はそれ以上だ。まだ幼さはあるが、どこか神秘的な容姿もしており、長く伸びた髪が、より瑞稀を美しくさせている。

「ちょっと瑞稀に紹介したい子がいてね。……来て」

輝夜がそう言うと、使用人たちは柚希の背中を押し、瑞稀のもとに行かす。使用人たちは「失礼しました」と言って戸を閉め、残されたのは輝夜と柚希と瑞稀だけとなった。瑞稀は柚希を見た瞬間、顔を蒼白させて、柚希から離れる。

「かっ、輝夜!!ここここっ、こいつって……!」

「うん、男の子だよ」

「ひぃ!!……い……いいいいんややややあああああああああああああ!!」

どうやら柚希は他とは何か違うみたいで……

続きます。少々お待ちを。

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