第2話 少年よ、大志を抱け
こんばんは、みかんじゅーすです。
続きです。読んでくれると嬉しいです。
「あ、あの……」
「なに?」
「いまどこに向かってるんですか?」
「どこって、路地裏に決まってるじゃん」
「え?」
なぜ路地裏?と、柚希は疑問を抱きながら輝夜についていく。ちょっとして、路地裏についた。
「……んじゃあ、さっそく」
輝夜はそう言って、鞘から刀を抜いて柚希に見せた。
「え、輝夜さん……?」
柚希は輝夜を警戒して一歩後ずさる。
「あー、大丈夫、別に君を殺そうとはかけらも思ってないから。……ただちょっと霊封隊の者が持っている武器の紹介的な?ことを言うだけ」
「武器の紹介……?」
なぜ武器の紹介なんてするんだろうかと柚希は疑問に思う。
「この刀ね、『月下の輝剣』っていうんだけど、この刀、月に照らすと光るんだ。ほら」
輝夜はそう言うと、刀を月に照らす。輝夜の言った通り刀は月に照らされ、眩いかぎりに光っている。
「……綺麗」
刀もだが、その月に照らされている輝夜も綺麗だった。柚希はぽつりとそう呟いてすぐに口を押さえた。
「ねぇ、綺麗でしょ?」
輝夜に関しては全く気付いていないので柚希はホッと安心する。
「……あの、なんで路地裏に僕を連れてきたんですか?なにか大事な話をしたかったんですよね?」
輝夜は刀を鞘に閉まって、
「ん?大事な話?無いけど?」
と言った。
「……は?なにか話したいことがあるから、人気のない路地裏に来たんじゃないんですか?」
「んん?」
「……はい?」
ーあぁ!?この人、話にならないんですけど!?なんのために路地裏まで来たの!?意味が分からないよ!!
「はぁ……まさか輝夜さんがこんな人だとは思わなかった……」
この人はいわゆるポンコツなのか?と、柚希は頭を抱える。
「まぁ、強いで言うなら」
「……?」
「……霊封隊の秘密を……まぁ秘密ってまではないんだけど……霊封隊に入る条件、みたいなのがあるんだ」
「条件?」
「うん、霊封隊に入るには、絶対に悪霊が見えてないといけないんだ。……これはさすがに君も知ってるよね?」
「はい」
当たり前のことだ。そもそも悪霊が見えてないと、闘いようがない。
「私はさっき、君に霊封隊の勧誘をしたけど、ただでさえ霊封隊は人手が足りないんだ。悪霊が見えたっていうなら、君には強制的に霊封隊に入ってもらうしかないんだよ」
「……」
柚希の中に嬉しさと迷いと不安が混ざり合う。
ー霊封隊に入ったら、また輝夜さんに会える……、それは嬉しい。でも、僕に悪霊退治なんて出来るだろうか?ただえさえ戦闘能力皆無の僕が……。不安だ。僕にそんな大それたこと……。
「……不安?」
「……はい」
「無理もないね、分かるよ。いきなり悪霊退治なんてしろって言われたら、いくらでも迷いは生まれる。」
「……」
柚希が下を向いていると、輝夜が柚希の頭を撫で始めた。
「っ……輝夜さん?」
「……大丈夫、君はまだ若いんだから、いくらでも迷えば良い。……でも、霊封隊に入ることは強制だから、悪いけど君に拒否権はない」
「……」
「でも、困った時は力を貸すし応援もする。……だからこのことは、よく考えて欲しいんだ」
「……輝夜さん……」
この人はポンコツだけどその分優しくて暖かい人なんだと、柚希は思った。霊封隊に入る人は、産まれてから物心がつく三、四歳頃には霊封隊に入り、厳しい訓練を経て、命をかけて悪霊と闘わなくてはならない。だから柚希には後悔して欲しくなかった、霊封隊に入ったせいで、自分の命や、これからの未来を捨てにさせるような、そんな可哀想なことはさせたくなかったから。
「…………入ります」
柚希の中で決心がついた。
「っ……」
「入らせて下さい、霊封隊に」
「……良いの?もう少し考えた方が……」
「輝夜さん、僕の……僕がやりたいことは、霊封隊に入って悪霊退治をすることです」
「っっ!!」
柚希はとうに決めていた。さっきの輝夜の戦闘を見て、柚希は思ったのだ。
ー僕は、輝夜さんのようにかっこよくなりたい。まるで英雄のような、輝夜さんのように……!
柚希は英雄に憧れていた。産まれてからずっと。だから悪霊を倒していく霊封隊に憧れを抱いていた。でも自分には悪霊を見る力は備わっていなかった。悔しかった。でも今、どうしてかは分からないけど、悪霊が見えるようになった。それが柚希にとって、嬉しいことだった。
「輝夜さん、僕は霊封隊に入ることが夢だったんです!……もう死ぬまで叶わないと思ってましたけど……、僕、霊封隊に入れるようになって、嬉しんです!だから、霊封隊に入らせて下さいっ!」
「……はぁ、驚いた。まさか自ら霊封隊に入りたいなんて言ってくるなんて……。そんな人そうそういないよ」
輝夜はそう言ってさっきよりもより一層柚希の頭を撫でて、
「良いよ、霊封隊に入らせてあげる。……まぁ強制的に入ることは決まってるから、こんなこと言うのはおかしいけど」
輝夜がそう言うと柚希はパァと笑って、
「はいっ!よろしくお願いしますっ!」
と言った。
「……あ、あと……、輝夜さん?」
と、柚希は恥ずかしそうに輝夜に問う。
「ん?」
「なんでずっと僕の頭撫でてるんですか?」
そう、さっきからずっと輝夜は柚希の頭を撫でている。柚希はそれが気がかりなのだ。
「……ふふん♪いやぁ〜、君の髪、サラサラでモフモフだからつい手が離せなくなって〜、ごめんっ♪もっと触らせて?」
「もう十分触ったでしょ!!離して下さいぃいい!!」
柚希はそう言って輝夜の手を自分の頭から離そうとする。
「いーやっ!!……あ、ついでに抱きついて良い?良いよね!?どーん!!」
「ふぎゃっ!!」
許可なく輝夜は柚希に抱きついて柚希の髪の毛に顔を突っ込んでスリスリする。
「んーっ可愛い〜!」
「もうなんなんだこの人おおおおおおっ!!」
路地裏を離れて、今度はどこに向かうつもりなのかと柚希は思う。
「あの……、今度はどこに行くんですか?」
「ん?霊封隊の本部」
「えぇ!?ほっ、本部!?」
「そんな驚くことないじゃん。君は紛れもなく、今日から霊封隊の一員になるんだから」
「そっ、それは……そうですけど……」
今日から霊封隊になることは柚希も理解はしていた。でももう永遠に霊封隊の、ましては本部に行くことなんてないだろうと思っていたのだ。いちいち驚くのも無理はない。
「そういえば、まだ君の名前とか、ご両親のこと、聞いてなかったね」
本部に行くことにそわそわしていた柚希に、輝夜は突然話を振ってきた。
「……え?あー……、はい。……柚希です。両親は……僕が五歳の時に盗賊に遭って、死にました」
「っ……、そう……なんだね」
輝夜はほんの少し悲しそうな顔をしてから、切り替えてニッコリ笑って、
「……じゃあ、ご両親と生き別れる心配はないわけだ」
「え?」
「……霊封隊になる人は絶対に両親と離れ離れにならないといけないんだ。……霊封隊の、厳しい訓練のために」
「……」
輝夜は、心なしか悲しそうな顔をする。それに対して柚希は心配そうな顔をするが、輝夜はすぐに表情を変えて笑ってみせる。
「さっ、本部についたよ」
「ほわぁあ……!」
柚希の目の前には、お寺のような屋敷があった。建物を一周するのにも時間がかかりそうなぐらいの大きさだ。目を輝かせる柚希を見て、輝夜は微笑み、柚希の手を取って屋敷の中に入った。
屋敷の中は、長い廊下が広がっていた。それを柚希と輝夜は歩いていく。
「あの……、今更思ったんですけど、輝夜さんはともかく、僕はこの屋敷に入って良かったんですか?」
「大丈夫。私といる限り、柚希は殺されることはないから」
「こっ、殺され……!?」
なかなか物騒なことを言う輝夜に対して、柚希は顔面を蒼白させる。
「輝夜、その男は誰だ」
「ひっ!!」
突然男の声が後ろから聞こえた。本当に殺されるのではないかと、柚希は肩をビクッとさせた。
「あー、隊長ー」
輝夜はなんてことない顔で、柚希をその隊長という者の前に出して、
「この子、霊封隊に入ることになりました。名前は柚希。理由は分からないらしいですけど……、今日、悪霊が見えるようになったらしいです」
「……」
隊長という男は、澄ました顔で柚希をジッと見ている。
「……ついてこい」
男はそう言って、柚希や輝夜の前を歩いていく。殺されずにすんだとホッとした柚希とは裏腹に、輝夜はニコニコ笑って柚希を引っ張って男に付いていく。
輝夜さんがポンコツすぎて可愛いです。
続きます。少々お待ちを。