エッホ危ない事はさせたくないって伝えなきゃ
侯爵家を追放されたこの子マリアと並んで王都を歩いた。
マリアを画角に入れながら街並みを映すだけで私の配信では見たこともない速さでチャンネル登録が伸びていく。
噴水広場でドワーフやエルフを映した時はコメントが爆速だったな。
私は演者ではなく裏方、カメラマンになってもやりがいを感じていた。やっぱり配信は楽しい!
気分はマリアのマネージャーだ。
彼女の好きな事をしてもらい、それを配信してリスナーに見て貰いたい。
まずは登録者数百人その為なら何でもしよう。
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湯浴み配信はやり過ぎてしまったな。
ギリギリを攻めてみたんだけどなぁ。
あんなに怒るなんて。
でも登録者数百人超えてコメントも見られるようになったから悔いは無い。
ホーンラビットのステーキなんて飯テロにはもってこいの絵だったのに。なぜ私まで正座をさせられているのだろう。
リスナーも手のひらクルクルだったし。
まぁその掛け合いを見ているのも楽しかったな。
マリアが銀髪美少女になる頃にはリスナーとの会話を楽しんでいるようで嬉しくなる。
もう、本当に悪意のあるコメント以外は流しても大丈夫だろう。
この世界の夜は早いのでリスナーに楽しんで貰うために部屋を飛びだした。
夜の王都観光だ。しかし街灯も少ないので明るい所に行く事にした。
宿屋の食堂、商人ギルド、キャバクラ。
深読みするリスナー達の考察が止まらない。
私はただ明るい所に来ただけなのに…
王城にも行ってみればバカ王妃の企みを聞いてしまった。
ハイシンさんの中身が私だと知られたら復讐したいからこの場面を見せたのだと思われる?
全部が裏目に出ている気がする。
第二王妃に復讐したい気が無い訳では無い。
でもマリアの安全が第一だ。それが一番大事。
復讐なんてしなくていい。
やるにしてもリスナー達が話している社交界での美容ザマァくらいでちょうどいい。
暗殺を止めるとかにはならないで欲しい。
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今、私はイエスノー枕の上を行ったり来たりしている。
エッホエッホ、マリアに危ない事はさせたくないって伝えなきゃ!
エッホエッホ、私は裏方に徹するって伝えなきゃ!
今の流行りでは伝える時はこう言うらしい…
歌う事は出来ないのだけど…これだけはちゃんと伝えないと。伝われ~!
まあウチのリスナー優秀過ぎるから良い質問がバンバン飛んで来る。
枕の上を行ったり来たりしているだけでも私の思いが伝わっていると思う。
私の事はいいから、マリアの好きなように配信して欲しい。それで配信を楽しんで欲しい。
それが私の願い。
◇◇◇◇
「なるほどね…これでだいたいハイシンさんの気持ちは分かったわ。マリアちゃんも分かった?危ない事はさせたくないし、ハイシンさんの事も気にしないで好きなように行動すればいいんだって」
「うん。ハイシンさんの気持ちは分かったわ。それでも私はこの世界の観光配信をするわ!私の見た目を変えてくれたハイシンさんとコメントの皆さんには感謝してるもの」
コメント
・マリアちゃん
・こっちも楽しませてくれて感謝だよ
・俺たちやハイシンさんの事は気にしないで楽しんでね
・友達みたいなもんだろ
「友達?コメントの皆さんは何言ってるの?私達はもう相棒でしょ!サトシと電気ネズミ、ポテチとコーラ、私にはハイシンさんとコメントの皆よ!」
コメント
・うぅマリア~
・嬉しい事言ってくれるぜ
・ハイシンさんも泣いてる(たぶん)
・このネタが言いたいだけじゃないの?
・杉下右京と亀山薫
・ルルーシュとスザク
・掘&宮村ホリミヤな
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「ちょっと!マリアちゃん!相棒と言ったらエドワード・エルリックとアルフォンス・エルリックよ!もうこの二人はね、亡くなった母を蘇らせようとして人体錬成を試みたが失敗~~~」
コメント
・ああ
・これは長くなるヤツや
・マリアちゃん眠くなったら寝てもいいのよ
・後は俺たちが魔王様の話聞くから
・いいのいいの
・おやすみ~
・おやすみ
・また明日ね~




