商人ギルド
リスナーさんお休み回
「ギルドの中に入ったら話せなくなるけどコメントは見えるようにしてあるからね」
そう皆に言ってから商人ギルドの扉をあけた。
左側はロビーで二人の商人風の男性が話をしている。商談中なんだろうな。
右側が受付になっているようで、カウンターには三人の受付嬢が座っている。
それにしても人少なくない?
受付に誰も並んでいないし、居るのはさっきの商人風の二人だけだ。東区のギルドはもっと賑わっていた気がするのに。
「どの受付にしようかな?」
右からエルフ、猫獣人、人間。
コメントでは猫獣人が多いみたいだね。
モフモフ好きだね本当に。
それとボンキュッボンなお姉さんは冒険者ギルドに行かないと会えないかな。
「こちらにどうぞ」
「あっ、はい」
立ち止まっていたら左の受付嬢から声を掛けられた。
皆そんなに落ち込まないでよ。
そんなに猫獣人さんが良かったの?
この人だって美人さんなんだからいいでしょ?
「初めてのご利用ですか?」
「はい」
「では初めにギルドカードを作りましょう。水晶に手を乗せてください。はい、いいですよ。犯罪歴は無いようですね。ではこちらにお名前をお願いしますね。私はカードの準備をしてきますので」
受付のお姉さんが退席したところで私の思いを聞いてもらおう。
「名前か。私、肌も髪も変わったじゃない?その時に思ったの。生まれ変わったんだって。でね、名前も変えてみようと思うの。マリアエレーナからただのマリアに。どうかな?いい?変わらない?ふふっそうだね皆マリアちゃんって呼んでるもんね」
お姉さんもう戻ってきた。
もう少し皆と話していたかったな。
「マリア様ですか。なるほど。ではこちらのカードに血を一滴お願いします。少々お待ちくださいね。はい登録できました。こちら身分証にもなりますので失くさないでくださいね。あとお金のやり取りもカードで行えます。お給金や売買のお金ですね。ギルドならどこでも引き出す事ができます。何かご不明な点はありますか?」
「ええと、登録料は」
「すでにセバス様から頂いておりますので心配いりませんよマリアエレーナ様。失礼、今はマリア様でしたか」
「…………なんで分かったの?名前も髪も違うでしょ」
「セバス様から白髪のカワイイ少女で名前はマリー、エレーナ、エレナ、マリアを名乗るだろうと。それと独り言を言う癖があると伺っております」
「セバスが恐ろしいわ」
「ではギルドマスターがお呼びですので部屋までご案内致します。どうぞこちらへ」
なんだかこのままだと受付イベントが終わってしまうわ。それはまずい。
「ちょっと待って!待ってください!私まだやる事があるのよ。やる気の無い無知な受付嬢はどこ?」
「居ないですよ。そんなやる気の無い者を雇う訳ないでしょう。ただでさえ東区のギルドに差を付けられているというのに」
「違うのよ!今日登録したばかりの小娘が何を塩だ砂糖だとバカにしてくるの。そこで私がドーンと物を出してもこんな白い塩は偽物だの砂糖はもっと黄色いとか言ってくるの。そこにギルマス登場で『どうぞこちらへ』なのよ」
「どうぞこちらへ」
そうなんだけども、言ってる事は同じなんだけど。
「だから!皆も草生やしてないでよ!これじゃ大草原だよ。皆だって今から受付嬢のポカーン顔が楽しみだって言ってたでしょ?皆がアドバイスしてくれたんじゃない」
皆が言ってきたのよ、なのに。
なろうの知識だから?
異世界あるある?
テンプレ?
また訳の分からないことを。
「行きますにゃ」
「行きましょうか」
「猫獣人さん?エルフさんまで?両腕をがっちりホールドしないで!行くから、当たってるから!」
「当ててるのにゃ」
「当てる程ない」
エルフさんは言わなくていいの。
それより。
「なぜ私はギルマスに呼ばれてるのでしょうか」
「それはセバス様からの依頼で身元のしっかりとしたホワイトな職場を探していたからです。できれば雑貨屋か花屋を探して欲しいとのことでした」
ああ私の事よく知っているわね。
だいぶ前にしたそんな話を覚えてるなんて。
「やるわねセバス。そこまでお見通しだとは。だが私には『ハイシン』きゃっ、行くから押し付けないでよ~」
てえてえ尊い萌えって何なのよ~
リスナーさんとのやり取りで進んでいく方がいいのでしょうか?悩み中です。




