6.突然変異の代償
とりあえずまとまったところまで書けたので更新してまた書きます。ほんとに遅れてすいません!
目を覚ますと妙に身体が暖かい、冷えた身体の表面を液体が撫でるように流れ落ちていく感触に心地良さすら感じながら、自分が何時起きたのかを思い出していた。視界の全面に広がる天井を眺めていると、ふと絶え間なく全身を撫で続けていた液体が自分の身体からから発せられているものだと理解した。瞬間、全身を嫌な汗が伝う感覚が支配し、焦燥感と共に持ち上げた腕には無数に皮膚を爪でえぐったような跡が残されていた。
「がッ!ああああぁぁぁぁぁ!?」
意味不明な声を上げながら地面を転がる。腕からの流血、肉を抉った痛みよりも鋭くくどい痛みが全身を駆け巡っていることに気づいたからだった。例えるなら裁縫用の針で全身の神経を幾度となく直接串刺し、抉り出されているような耐え難い痛み、それが永遠に続いていた。おそらく俺はその痛みに耐えかねて腕を抉るほど掻きむしり、そのまま気を失ったんだろう。何が激痛だ、そんな言葉で表せるほどのレベルではなかった。全身を貫く陰湿な痛みの刺激に悶えながら再び気を失いそうになるのをなんとか食い止める。どれほど時間が経ったのだろうか、長いように感じられたが案外短かったのかもしれない。あの少女は今日も食事を運んできてくれたのだろうか。揺らいだ視界の中、ただそれだけを考えていた。痛みは未だに治まっていない。この微睡みが晴れれば、またいつ気を失うかも分からない激痛に再び耐えなければならないという現実に吐き気がした。啖呵を切った手前諦めるつもりはないが、このままでは共生する前に俺の方が死んでしまうだろう。いまいちキレの悪い思考回路をどうすることもせず仰向けで天井を眺めていると、視界の隅に人がたっているのが見えた。なんとか力を振り絞って少しだけ首をずらす、その足元がやけに明るいのを見て、流子だと確信する。
「どうした?随分派手に消耗してるみてぇじゃねぇか」
「何しにきたんだ………」
ほとんど声も出ないまま返事をする。
「経過観察ってやつだ。手前がくたばってねぇかあたしが定期的に確認するんだよ」
くたばっているかそうでないかと言われればほとんどくたばっているようなものだがと自虐する気力も湧かず、彼女の言葉は右から左へと流れていった。
「まぁ最初は誰だってそんなもんだ、手前に限った話じゃねぇ。今のあたしらだってここには長く居られねぇ、そんな場所に手前はもう二日以上居る」
朧気な視界を何とか動かし、正面に流子を捉える。相変わらず視界はぼやけたままだった。
「手前は強えよ。今死んでねぇのがその証拠だ、あたしの見る目は間違ってなかった」
視界から明かりが消え、階段を登る音が微かに響く。心が熱いのはきっと出血多量のせいではないだろう、今までの人生においてここまで誰かに努力を買ってもらえたことは無かった筈だ。不思議と全身に力が入り、痛みは少し和らいだ。靄がかかったような意識のまま立ち上がり、ふと辺りを見回すとそこにはいつも食事が乗せられていたトレイがおかれていた。なんだ、今日も来ていたのかと手を伸ばそうとした瞬間に違和感で全身が硬直する。
「なんでトレイが真っ二つになってんだ……?」
瞬間、怖気が全身を駆け抜けた。
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