この花を、あなたに捧げる
シンシアがガザニアと結ばれた時の話です。「祝福の少女」の話ですね。
士官学校時代にもこんな話をしていて、子供に「アザレア」と名付けていたらいいなと思って書きました。
温室に行くと、いつものようにガザニアがいた。
「ガザニアさん、今日もお世話をしているんですか?」
シンシアが隣に座ると、ガザニアは「あぁ。世話をするのは好きだからな」と笑いかけた。
「何かお手伝いしますよ」
「助かる。なら、水をやってほしい」
シンシアの申し出に、ガザニアはそう頼んだ。シンシアは「分かりました」と頷き、水を汲みに行く。
水をあげていると、一つの花が目に入った。
「これ……」
「あぁ、綺麗な花だ。俺も、名前は知らないが」
シンシアがどれを見ているのか分かったガザニアは短めの感想を告げた。それだけでも、シンシアには伝わって。
「これ、アザレアって言うんです」
白いその花の名前を、シンシアは答えた。
「アザレア……」
「えぇ。色ごとに違うんですけど、白いアザレアの花言葉は……」
――あなたに愛されて幸せ。
そう言って、微笑む少女は美しかった。ガザニアはシンシアの髪に、アザレアをさした。
「どうしたんですか?」
「いや、ただやりたくなっただけだ」
「なんですか、もう」
――それは、お前に対する気持ちだ。
フレット人である自分を一人の男として愛してくれる。それだけで、どれ程幸せか。
ガザニアは、シンシアを抱きしめた。
「……ありがとう、愛してくれて」
「これからだって、愛するよ」
そう言って、二人は笑い合った。
花達は、それを静かに見守っていた。




