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神に願えば

作者: ヒレカツ寺本

1〜2分て読めてしまう短い話です。


 窓を全開にした六畳の部屋で布団に仰向けになっている男。

 ヨレヨレのシャツに短パン、四十過ぎだと思われるその顔からは汗が吹き出している。

 古い扇風機が首を振りながらカラカラと建てつけの悪い音を出している。

 外ではミーンミーンとセミがせわしなく鳴いて、茹だるような暑さにこの鳴き声は不愉快が増す。

 耳元で小さなプーーンという音、蚊である。男はすでに数か所刺されているらしく、腕や足を掻きむしっている。眉間にシワを寄せて起き上がる。


「あーーもー暑いし痒いし! 」


 頭をかきだす。


「うるせえ! 」


 窓の外を見ながらセミに八つ当たりしている。



 

 畑の前で立ち尽くす年配の男性。


「またか」

 

 落胆した様子で周りを見渡す。大切に育てていたであろう野菜が何者かに荒らされている。

 そこに落ちていた大根を拾い上げてみると、がっつり歯型が付いている。


「猪か鹿か! 」


 対策用の網も簡単に壊されてしまっている。




 家のキッチンで鼻歌を歌いながら料理をしている若い女性。

 コンロの上で野菜炒めの入ったフライパンを上手に振っている。

 火を止めて皿に盛り付けようとした時、視界の右下に影が動いた。カサカサッと音を立てて素早く動く、ゴキブリだ。


「きゃーー! 」


 なんともオーソドックスな悲鳴と共にフライパンが宙を舞い、出来たて熱々の野菜炒めは床に散らばった。

 この惨劇を起こす原因となった奴はすぐに食器棚の隙間に退避した。


「んもーー! 」


 食事が食べられない悔しさと、これから片付けと、奴との対決を考えて、怒りが込み上がり叫ぶ。


「あんたなんて、必要ない生き物なんだから、地球上から全部消えて! 」



 蚊刺され男も叫ぶ

「この世に必要ない害虫全部消えろ! 」


 畑荒らされじいさんも叫ぶ

「いらん事する奴全部消えろ! 」


 

 六畳の部屋を自由に飛ぶ蚊。

 畑の野菜を自由に食べあさる猪。

 キッチンを自由に走り回るゴキブリ。


 世界中どこにももう人間の姿はない。

 神様が願いを叶えてくれたようです。


めでたしめでたし

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