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6/12

 「あははは。彼氏を奪うのなんて簡単だなぁ」


 私は家に帰って笑い転げていた。


 『見てましたよ。楽しそうでしたね』


 『ああ、キュー。見てたの? 面白かったでしょう。あの宇海さんの顔。怒っていいのか泣いていいのか、わからなくなってたよ。あははは』 


 私の恋路を邪魔し続けた女が、あんなに悔しい顔をして喚き散らしていた。

 ずっと好きでアプローチをしていた男子が、あっさり私のものとなった。

 これが笑わずにいられようか。


 『あ~面白い。あんたの申し出を受けてよかったよ。最高にすっきりした』


 『それはよかったです。でも、あの矢沢とかいう男の子には、まだ恋の矢を刺してないですからね? 条件クリアにはなりませんよ?』


 『わかってる。でも、いつでもできるじゃない。それに刺したら一年間、恋の奴隷になっちゃうんでしょう? 面倒くさいわよ』


 『ですね。まあ、気が向いたときでいいですよ。こっちは急いでないですし』


 恋の矢を刺せば、相手を一年間恋の奴隷にできる。

 一年ずっと付きまとわれるのは、さすがに鬱陶しい。

 だから、「なんでも願いを叶えてくれる」というキューの力を使いたいときに、条件である恋の矢を刺せばいい。

 焦る必要はない。


 「明日も楽しみだなぁ。次はやっぱりあの人かな……」


 私はさっそく次のターゲットを定めた。


◇ ◇ ◇


 次の日、私の足は図書館へと向かっている。

 ここには、私のことを振った二人目の男子がいる。

 遠藤徹えんどうとおる。学年一の秀才かつイケメンだ。


 「遠藤くんは図書館だよね~」


 彼はこの学校で一番モテる。

 頭が良すぎてイエール大学から籍を置くように打診があるほどだ。

 彼の提出した物理学の論文は世界中の人たちに衝撃を与え、その頭脳を世界が欲している。

 

 みんなが彼の遺伝子を欲しがっている。

 優秀な子孫を残したいと考えるのは動物としての本能なのだとか。

 私もご多分に漏れず彼にアプローチしたことがある。

 「自分よりバカな人と付き合いたくない」と言われ、あえなく撃沈したが。


 彼は女性や恋愛に興味がない。

 曰く、「愛などという感情は単なる脳の勘違いだ」という持論をもっているらしい。

 ずいぶんと達観したご意見をお持ちなようだ。


 いたいた。

 また図書館で勉強している。

 眼鏡をかけた爽やかイケメンの遠藤くんだ。


 私は彼の前の席に座って適当に本を開く。

 そして、前髪を捻ってフェロモンを全開にした。


 くくく。

 さあさあ、話しかけてきなさい。

 

 私は髪の毛を揺らしてフェロモンを飛ばし、足を組み替えて誘惑した。

 だが、一向に話しかけてこない。


 『ちょっと。どうゆうことなのよ。キュー』


 『僕にもわからないです』


 彼はこちらを一瞥することもなく熱心に勉強し続けている。


 『ひょっとすると、女の子には興味がないのかもしれませんね……』


 なるほど、彼が過去に女性と付き合ったという話は聞かない。

 「自分よりバカな人と付き合いたくない」などと言っていたが、そもそも女性に興味がないだけだったのか。

 しかし、これは厄介だ。

 これでは自分に惚れさせて恋の矢を刺すことができない。

 


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