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 放課後になった。

 私はクラスのみんなが一緒に遊ぼうというのを無視してグラウンドに走った。

 目的は一つ、私のことを振った矢沢啓介やざわけいすけに会うためだ。


 「あ~、会いたくないな」


 矢沢啓介はサッカー部のエースで、かなりのイケメンだ。

 彼はこの学校で一番モテる。

 バレンタインデーにはロッカーに入りきらないほどのチョコを貰っていたし、サッカーの試合には県外からもファンが押し寄せる。


 私もご多分に漏れず彼に惚れていた。

 生前はサッカー部のマネージャーとなり、彼との距離を縮めようとした。

 手作り弁当をあげたり、手編みマフラーを作ったり……ラブレターは三通送ったし、出雲大社には二回行った。

 私は私なりにできる限りのことをしたつもりだ。

 けっこういい線いっていたと思う。


 しかし、いかんせんライバルが多すぎた。

 中でも宇海日和うかいひよりという二組の女子の妨害は尋常ではなかった。

 彼女は矢沢くんに近づく女には必ずあとで不幸の手紙を送りつけていたし、話しかけようものならすぐに話を遮って自分の話題にしてしまう。

 挙句の果てには嘘までつきだす始末で、「私と矢沢くんは昔結婚の約束をしていた」とか「大病を患っているから最後の願いで彼女にさせて」など、なりふり構わず矢沢くんの奪取に向けて邁進した。

 そのおかげか、現在の矢沢くんの彼女は宇海さんだ。

 本人たちはほわほわの恋愛をしているように感じているかもしれないが、傍から見ればぐちゃぐちゃどろどろの恋愛だ。


 サッカーグラウンドに着いた。

 すでに多くの女子が集まっている。

 お目当てはもちろん矢沢くんだろう。


 私がグラウンドに現れると、周囲の人間がざわめきだす。


 「おい、転校生の美少女、恋塚さんが来てるぞ」


 「か、可愛すぎる。いや、美しすぎる」


 フェロモン調整で魅力を半減させていても、恋塚天音の私は注目されてしまう。


 「あんたさぁ。誰に断ってグラウンドの見学してんの?」


 さっそく宇海さんが現れた。

 妙にピリついている。


 「見学に許可が必要?」


 「矢沢くんを視界に入れるなら私の許可を取ってからにして」


 めちゃくちゃだ。

 彼女の顔には敵意がありありと浮かび上がっている。

 のっけから攻撃表示で召喚されたモンスターかよ。


 「矢沢くんのこと見に来たんでしょう? 転校早々、もう発情期なわけ? やだわ~、ちょっと見てくれがいいからって調子乗っちゃって。言っとくけど、矢沢くんと私は運命の赤い糸で結ばれてるんだからね。あなたの入り込む余地なんてないから」


 ああ、なんか懐かしいな。

 私が矢沢くんにお弁当を作ってきたときも同じような対応をされた。

 そして、私のお弁当を地面に叩き落として高笑いしたのだ。

 あのときの怒りを思い出してきた。


 「別に矢沢くんに興味なんてないよ。どこにでもいるサッカー少年じゃない」


 「あらら、強がっちゃって。好きなくせに」


 「強がっているのは宇海さんでしょ?」


 「はああ? 私はれっきとした彼女。あなたとの差は歴然よ。ジタバタしたって遅いんだから」


 宇海さんは勝ち誇ったように胸を張る。


 「ふ~ん、じゃあ、私、矢沢くんに告白しちゃおうかな~」


 「なっ! 冗談じゃないわよ! そんなことしたら許さないわよ!」


 「だって、今からジタバタしても遅いんでしょう。だったら告白してもいいよね。それともなに? 捨てられるかもしれないからやめてほしい?」


 「くっ……言わせておけば!」


 私たちが舌戦を繰り広げていると、一人の人物が割って入ってきた。

 矢沢くんだ。


 

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