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「え~、今日から我が校に転校してきた恋塚天音さんだ。みんな、仲良くするように」
「恋塚天音です。よろしくお願いいたします」
クラスがどよめく。
男子だけではない、女子もだ。
私のあまりの美しさに男女ともに目を丸くしている。
一時間目が終わり、休み時間になると、クラス中の生徒から質問攻めにあった。
男子からは「どこに住んでるの?」「好きなタイプは?」と聞かれ、女子からは「肌のお手入れどうしてるの?」「芸能人なの?」と聞かれる。
でも、一番多いのは質問ではなく「めちゃくちゃく可愛いね」というただの感想だ。
特に男子は、鼻息が荒くなり、目の瞳孔が開いている。
キュー曰く、フェロモンが通常より多めに出ているらしい。
どうりで何人かの男子がすでに前かがみになっているわけだ。
なんだか大変なことになってしまった。
どうも、私です。
現在、空前絶後のモテキに強制突入しております。
ですが、あまりにカオスな現状に若干引いています。
結局、キューの力で超絶美少女として生まれ変わった私は、生前通っていた学校の同じクラスに通うこととなった。
ちょうど私の席が空いていたので、生前と同じ席に座る。
同じクラスの同じ席に座っていることになるとは、なんとも皮肉である。
しかし、大丈夫なのだろうか。
授業中はクラスの男子がこちらをチラチラと見ていて集中できていないし、休み時間になると教室の外には私を一目見ようと群がる男子生徒でごった返している。
学級崩壊を起こす寸前だ。
仕方がないので、念話でキューに話しかける。
『ちょっと、キュー。まずいわよ。どうにかならないの?』
『えーっと、ちょっと待ってくださいね。魅力の調整方法は何ページだったかなぁ』
どうやら取扱説明書を見ているらしい。
私は電化製品かい。
『あー、あった。前髪を捻ってみてください。多少は魅力を下げられますよ』
『多少なの? 一気に下げられない?』
『う~ん。なにせ、見た目からしてあの妲己を軽く越えてますから、調整できるのはフェロモン関係だけです』
『これじゃ不良品じゃない。クーリングオフできないの?』
『できません。それに美貌が半端なくて困るなんて、女冥利につきるでしょう』
それはそうなのだが、こう不便だとなぁ。
今はいいけど、夜道なんて怖くて歩けない。
『ご安心を。今は私が見守っています』
『説得力ゼロね』
私の自殺を放置してた人に言われてもね。
『それよりも、恋塚さん。約束を忘れないでくださいよ』
『急かさないでよ。放課後になったらやるから』
私はため息をつく。
気乗りしない。
だが、やらなければならない。
それがキューと交わした約束なのだ。
キューが私に提案した『なんでも一個、お願いごとを叶える』について、実は条件が課せられている。
その条件が、私にとってはかなりのハードルなのだ。
そもそも、それが原因で自殺したのだから。
『まさか、私のことを振った五人の男たちを恋の奴隷にすることが条件だなんて……』
もう顔も見たくないと思っていた五人の男たち。
彼らを私に惚れさせ、恋の矢を刺すことが、キューの提示した条件だった。