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 「あなたは異性にモテずに死んでしまいました。僕がいながらこの結果ではあまりにも不憫。そこで、美少女として新たな人生をやり直すチャンスをあげます」

 

 美少女として、やり直すチャンス?


 キューは得意げに話を進める。


 「誰もがうらやむような完璧な美貌で、新たな人生を歩ませてあげましょう。ご安心ください。戸籍やら住む場所やら、そのあたりの面倒な部分は僕のほうで手配しますから」


 なるほど。それがお詫びってわけか。

 でも……。


 「パス。別にいいわ。さっさと天国に連れてって」


 「はっはっは。嬉しいですか。天国に……って、えええええ? なんで、どうして!」


 「いや、もう美少女とかイケメンとか彼氏とか彼女とか、そういうのいいから。もうそっとしておいてよ」


 キューは信じられないという顔をしているが、私は本気だ。

 生前、イケメンたちとそれに群がる女たちの争いに巻き込まれ、挙句の果てに逆告白して四連敗。

 もう恋愛とかそういうものに希望なんて持てない。

 というか、持ちたくない。


 「ちょちょちょ、ちょっとまってください。美少女ですよ!? めちゃくちゃモテるんですよ!? なんなら歳の取り方も緩やかにしておきますから!」


 「しつこい。いいから天国連れてって」


 「ご再考を! こちらの資料をご覧ください! 当社調べで顧客満足度100パーセントです! 美少女の造形レベルも前年度より4パーセントアップ(当社比)なんですよ!」


 「……私がそのサービスを利用しないと、なんか不都合でもあるわけ?」


 「ぎくっ!」


 「いや、『ぎくっ!』じゃないわよ! なんか隠してるなら言いなさい! 殴るわよ!」


 「ひいいいいい! いや、あの、恋のキューピッドがついてたのに失恋で身投げしちゃったとか、洒落にならないじゃないですか。こんなことがバレたら僕は天界に居られなくなって路頭に迷うことに……」


 そんなことだろうと思った。

 どっちみち、こいつの言うことなんて聞いてやる義理はない。


 「さあ、天国に連れて行きなさい」

 

 「いいえ! 僕と契約してもらいますよ。美少女に生まれ変わって幸せな人生を歩んでください。じゃないと、困ります!」


 「知らないわよ! 自分のケツは自分で拭いて。私はあなたのママじゃないの」


 「だ、だいたい、天国に行けるかはわかりませんよ! 自殺ですからね。黒縄地獄こくじょうじごくに落ちて、火を吐く地獄の犬に食べられちゃいますよ」


 「いいわよ。どうせもう死んでるんだから。犬も好きだし」


 私は頑として譲らなかった。

 キューはほとほと困り果て、最後は懇願し始めた。


 「お、お願いします。どうか、この哀れなキューピッドを助けると思って……」


 もう半泣き状態でふにゃふにゃになっている。

 だんだん可哀想になってきた。

 ここらで少し譲歩してやるか。


 「じゃあ、さっき言ってたのに加えて、もうちょっとサービスしてよ」


 「は、はい! え~~っと! じゃあ、この『恋の矢』を差し上げます。恋に落とした相手に刺せば、一年間はずっと両想い。無条件で恋の奴隷にできます」


 「ええ? 恋に落としてから使うんじゃ、あまり意味ないじゃない。もう一声!」


 「え~っと、僕の写真集なんてどうですか!? オーディオコメンタリー付きです!」


 「いらん! ふざけてると地獄に行っちゃうからね!」


 「ええ~い! なら、なんでも一個、お願いごとを叶えちゃいます! 赤字覚悟! これ以上は無理ですよ! どうですか!」


 ここらで手を打つか。


 「乗った!」


 私は指をパチリと鳴らし、キューの提案に合意した。



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