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全12話。必ず完結します。
ある夏の日、私は駅近くの小高い丘から身を投げた。
もう生きていたくない。
こんな世界に未練なんてない。
男なんてみんな死んじゃえばいいのに。くだらない男ばっかり。
でも、そんなくだらない男たちに振られた私はもっとくだらない。
地面がぐんぐん近づいてくる。
神様、次に生まれ変わるなら、虫でお願いします。
◇ ◇ ◇
「どうも~。お目覚めですかぁ?」
「あれ? ここどこ? 私って死んだんじゃないの?」
「死にましたよ~」
あたりを見回すと、何もない白い空間が広がっている。
そして、目の前には学ランを着た男の子が立っていた。
ちょっとイケメンかも。
「あ、あなた、誰? 私は飛び降り自殺したはずなのに」
「ですから、死にましたよ。ちゃんとね。地面に激突してぐしゃぐしゃのパアです」
あ~なるほど、ここは天国か。
それでこの人は天使なのね。
天使が学生服を来てるのはおかしいけど、そういうものだと納得しよう。
「そっか。天使様なのね。じゃ、さっさと天国に連れってくれる? 三途の川はどこ?」
「ぶっぶー。僕は天使ではありませ~ん。まあ、似たような職業ではありますが……」
「もったいつけないでよ。時間の無駄」
死んでるのに、時間もなにもないのだが。
私がせっつくと、男の子は胸を張って答えた。
「何を隠そう、僕がかの有名な『恋のキューピッド』なのですよ。特別に親しみを込めてキューと呼ぶことを許可します!」
え? 恋のキューピッド?
「はっはっは。どうです。僕、意外とイケメンでしょう? なんなら、天国に行く前にちょっとお茶でも……」
「どの面下げて出てきたテメエこらああああああああ!!!」
「どふぇ!」
私は恋のキューピッドにラリアットを食らわせた。
「んな! なにするんですかあああああ!」
「それはこっちのセリフじゃあああああ! そこへなおれ、このドグサレがあああああ!」
私は烈火の如く切れた。切れ散らかした。
キューピッドこと『キュー』は私の迫力に「ひいいいい」と言いながら後ずさりした。
「今更やってきて何のつもりよ! 私はねぇ、男の人から振られまくったことがショック過ぎて身投げしたのよ!? 見てたんでしょう!?」
「は、はい。ですから、こうやってお詫びにですね……」
「死んでからお詫びされても困るんわよ! 餌あげるの忘れて死んじゃった金魚の水槽に餌を投げ込んでるのと一緒じゃない!」
「え? その例えはちょっと意味が……」
「あぁん?」
生意気なことを言うので拳を構えると、キューは「暴力反対」のプラカードを持って後ずさりした。
同い年くらいの男の子が涙目で震えているのを見て、さすがに毒気を抜かれる。
「はあ、もういいわよ。全部済んだことだし。で、本当に何の用なのよ」
「あ、それなんですが」
キューは立ち上がり、キリリとした顔で言い放った。
「あなたは異性にモテずに死んでしまいました。僕がいながらこの結果ではあまりにも不憫。そこで、美少女として新たな人生をやり直すチャンスをあげます」
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