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第4話 新たなる世界

 私は、ゆっくりと目を覚ました。

 神様の放った光に包まれた私は、新たなる世界に来たはずだ。

 そのため、ここは新たなる世界なのだろう。


「それっぽいかも……」


 周りを見渡してみると、緑に囲まれた平原だった。

 なんというか、私がいた世界とはまったく別の世界のような気がする。

 いや、もしかしたら、ただ山の中にいるだけなのかもしれないが、それはいずれわかることだろう。


「その前に……」


 私は、ゆっくりと下を向く。

 すると、そこには見知った犬がいる。


「ロコ!」

「ワン!」


 私の呼びかけに、ロコは元気よく答えてくれた。

 わかっていたことだが、実際に見るととても安心できる。やはり、ロコもこちらに来ていたのだ。


「というか、私達は本当にそのままの姿でこの世界に来たんだね?」

「ワン」


 次に私が気づいたのは、自身の姿に関することである。

 私もロコも、あちらの世界での姿とまったく変わっていない。つまり、生前の記憶と肉体を持ちながら、こちらに来たのだ。

 もしかしたら、これも神様からの贈り物なのだろうか。


「でも、どうしよう? こっちには知り合いもいないし、家も何もないよね?」

「クゥン……」


 ここで、とある問題が発生した。

 私達は、こちらの世界には家も何もない。それどころか、身分を証明するものすらないのだ。

 つまり、私達はこちらの世界でとても暮らしにくい状態である。そこまでは、神様も考慮してくれなかったのだろう。


「ワン!」

「うん?」


 私がそんなことを考えていると、ロコが吠えた。

 どうやら、何かがこちらに来ているらしい。


「あれは……馬車?」


 ロコが吠えた方向を見てみると、馬車が走っているのが見えた。

 馬車が走っている時点で、ここが私の知っている世界と大きくかけ離れていることが予想できる。だが、今はそれを気にしている場合ではない。

 重要なのは、人がいるということだ。とりあえず、誰かにこの世界のことを教えてもらった方がいいはずである。


「ロコ、行こう」

「ワン!」


 私は、ロコを抱きかかえて馬車の前に出ることにした。

 こちらの存在に気づけば、流石に馬車も止まってくれるだろう。

 ロコを抱きかかえたのは、相手が犬嫌いの可能性を考慮したからだ。リードもない今の状態で、ロコを自由にさせていると不快に思うかもしれないだろう。


「す、すみません」

「む? なんだ、お前は」


 馬車の前に出た私は、とりあえず呼びかけてみた。

 すると、御者らしき人物から、知っている言語で言葉が返ってきた。

 どうやら、この世界でも言葉は通じるようだ。その辺りは、神様がなんとかしてくれたのかもしれない。

 とにかく、馬車を止めることには成功した。ここから、何を話そうか。


「この馬車が、シェルドラーン家の馬車であることを知っての狼藉か? 場合によっては、容赦しないぞ」

「え?」


 そう思っていた私だったが、御者らしき人物は剣を抜いてきた。

 この世界で、剣が一般的なことに驚きだ。だが、それは今関係ないことである。

 問題は、剣を向けられていることだ。もしかして、この馬車の前に立つ行為はとても無礼な行為だったのだろうか。


「グルル……」

「あ、ロコ、待って……」


 剣を抜いてきた御者に反応したのか、ロコが私の手の中から抜け出した。

 その小さな体で、御者を威嚇しているのだ。しかし、いくらロコの身体能力でも、剣を持った男には対抗できないはずである。

 とにかく、なんとか説得しなければ、まずいことになるだろう。


「待て、ブルーガ」

「え?」


 そんなことを考えていると、馬車の中から一人の男性が出てきた。

 なんというか、とても格好いい人だ。整った顔立ちもそうだが、その立ち振る舞いから高貴な印象を受ける。年齢的には、私と変わらないくらいだろうか。

 先程、御者が言っていたことも考えると、この人は高い地位にいる人なのだろう。この周りの様子から、王子や貴族といった地位だと考えるのが妥当かもしれない。


「アムルド様……」

「剣を下してくれ、ブルーガ。この人達は、僕に敵意を向けてきている訳ではないはずだ。何か困っているから、出てきたといったところだろう」

「む……」


 アムルドと呼ばれた人物の言葉に、ブルーガと呼ばれた御者は剣を下した。

 どうやら、アムルドさんは私がどうして馬車の前に出てきたかを理解してくれているらしい。

 そのことに、私は安心した。これで、あの剣で斬られるということもないだろう。


「クゥン……」


 私の足元で、ロコも安心していた。

 警戒を完全に解いたわけではないが、それでも少し大人しくなっている。


「さて……」


 そんな私達の元に、アムルドさんがゆっくりと歩いてきた。

 きっと、話を聞いてくれるのだろう。

 こうして、私は異世界の住人と出会ったのだった。

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