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第22話 お茶の誘い

 私とロコは、アムルドさんとラナリアちゃんとの話し合いを終えて、部屋に戻って来ていた。

 今日は、アムルドさんの仕事の手伝いもいらないらしいので、部屋で休んでいるのだ。


「うん?」

「クゥン?」


 そんな私達の部屋の戸を叩く音が聞こえてきた。

 誰かが、私の部屋に来たようである。

 恐らく、ネセーラさん辺りではないだろうか。私の部屋に来るのは、ネセーラさんくらいである。私についているメイドさんのため、知らせがあると基本的にネセーラさんが来るのだ。


「はい……えっ?」

「お、お邪魔します……」


 そう思って戸を開けた私の目に入ってきたのは、ラナリアちゃんだった。

 てっきりネセーラさんだと思っていた私は、少し驚いてしまった。まさか、ラナリアちゃんが私の元を訪ねてくるなど、まったく思っていなかったことである。


「えっと、私達に何か用かな?」

「あ、はい……」


 私が聞いてみると、ラナリアちゃんはゆっくりと頷いた。

 どうやら、私達に何か用があるようだ。もしかしたら、ロコに会いに来たのかもしれない。ラナリアちゃんは、ロコのことが好きになったようなのでその可能性が高いのではないだろうか。


「何かな?」

「えっと、ミナコさんと話したくて……」

「私と?」


 私の質問に、ラナリアちゃんはそのように言ってきた。

 ラナリアちゃんは、私と話したかったようである。

 それは、中々意外なことだ。ロコに会いに来たのかと思ったが、そういう訳ではないようである。


「私に何か質問があるの?」

「あ、質問という訳ではないのです。単純にお茶でもどうかと思いまして……」

「お茶……ああ、そういうことか」


 ラナリアちゃんの言葉で、私は少しだけ理解した。

 ラナリアちゃんは、具体的に質問がしたいという訳ではなく、お茶がしたいというだけなのである。


「わかった。それなら、お茶にしようか? といっても、どうすればいいのか私はよくわからないけど……」

「中庭に行きましょう。そこで、お茶の用意をしています」

「あ、そうなんだ」


 どうやら、中庭にお茶の準備が既にされているようだ。

 恐らく、私が来ても来なくてもお茶にしようと思っていたのだろう。


「それじゃあ、中庭に行かないとね。ロコ、行こう」

「ワン!」


 私の呼びかけに応えて、ロコがこちらにやって来た。

 私は、そんなロコの体をゆっくりと持ち上げる。

 すると、そんな光景にラナリアちゃんは少し羨ましそうな視線を向けてきた。もしかしたら、ロコを抱っこしてみたいのだろうか。


「抱っこしてみる?」

「え? いいのですか?」

「うん、もちろん」


 私の言葉に、ラナリアちゃんはそう答えてきた。やはり、抱っこしてみたかったようだ。

 私は少し体勢を低くして、ラナリアちゃんと高さを合わせる。


「えっと、片手はロコの体に回すようにして、片手はお尻を支えるようにして抱っこするんだ。今、私がやっているようにしたらいいよ」

「あ、はい……」


 説明を終えて、私はロコをラナリアちゃんの腕の中へと渡す。

 すると、ラナリアちゃんは私の説明通りにロコを抱きかかえてくれた。よく説明を聞いている証拠である。


「わ……」

「クゥン……」


 ラナリアちゃんは、ロコの重さに驚いているようだ。

 だが、それでもきちんと支えている。ロコのことを、きちんと思ってくれているからだろう。


「ロコ、大丈夫?」

「クゥン」


 ラナリアちゃんは、さらにロコにそう問いかけてくれた。

 ロコは、ラナリアちゃんの腕の中で大人しくしている。それは、ラナリアちゃんに身を任せてもいいと安心しているからだろう。

 これなら、きっとラナリアちゃんに任せても大丈夫だ。


「ロコも、大丈夫だと言っているから、大丈夫だよ」

「え? 言っていることがわかるの?」

「うん、わかるよ。長く接していれば、なんとなくわかってくるんだ」

「そうなんだ。すごいね……」


 私の言葉に、ラナリアちゃんは感心してくれていた。

 しかし、長く接しているとなんとなく言葉がわかるようになるのは、恐らく当たり前のことであるはずだ。

 きっと、ラナリアちゃんもロコとしばらく接していればわかるようになるのではないだろうか。


「きっと、ラナリアちゃんもロコの言葉がわかるようになるよ」

「そうなの?」

「うん。ラナリアちゃんみたいに、ロコのことを好きという気持ちが溢れていれば、きっとわかるようになるはずだよ」

「そうなんだ……」


 私の言葉に、ラナリアちゃんは少し驚いたようにロコを見ていた。

 本当にわかるようになるのだろうかなどと思っているのだろう。だが、きっといつかはわかるはずだ。

 そんな話をしながら、私達は中庭に向かうのだった。

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