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魔人コインを集めて異世界領地ワォーズ! 最強国家を作るのだ。  作者: あーるCoA
【戦争フェーズ】はじまりの戦い
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第7話:降伏勧告を受けました

今日も寒いですね。

春の七草、全部言えますか?

 

 知らない天井……

 ちがう、見たことある。


 前と同じ景色……

 この場所は、心地がいい。


 何故なの?

 ここは……どこ?


 だめね……

 見事に記憶がぐちゃぐちゃ。


 みんなは?

 ん? みんなって……誰のこと。


 私は、何をしていたの。

 戦争……まさかね。


 か弱き乙女が戦争なんて……


 みんなが心配してくれてた。

 私を守るって……言ってくれた。


 嬉しかった!

 そう、嬉しかったの……


 あれは、夢だったの。

 そんな、はずない……


 違う!

 夢なんかじゃない!


 早く、戻らなくちゃ……

 みんなが待ってる!


「そうよ、戦争よ!」

「「レンカ様!」」


 不気味な骨とエロい小悪魔が、身を乗り出して、心配そうにこちらを見ている。

 恐ろしいモンスター……のはずなのに、不思議と恐怖心が湧いてこない。


 この人達……知っている。

 私は、この人達を大切だと思っている。


 なぜなの?

 守らなくちゃ!


 何を?


 私の中の記憶が不意に戻ってきた。


「そう! わたしは、この国の女王よ!」

「「おお、レンカ様」」


 ガバッと、ベッドから跳ね起きる。

 まわりを見回しても、戦争をしている気配はなく、静かなものだった。


「よかったぁ……やっぱり、戦争なんてなかったのね」

「はい、これからでございます」


 シャレードが、シレッと聞きたくない情報を伝えてくれた。

 もちろん、現実逃避では問題は解決しないことは理解しています。


 しかし……しかし、ですよ。

 無表情な骨を穿って見てしまうと、なんとなく意地悪そうに見てしまうのは、気のせいでしょうか?


 乙女の儚い期待を、オブラートに包むことなく、あっさりと打ち砕くとは……む、無体な。


 ん? なんでしょう。


 シャレードの手元に、A4ぐらいの大きさで、クルクルと巻かれた紙のようなものが見えます。

 このすました骨が、意味もなく紙切れを持っているはずもなく……ワザとらしいですね。


 重要なものなら、さっさと出せば良いのに。

 私が気づかなかったら、どうするつもりなのでしょう。


「やっぱりそうよね……えーっとね、シャレード、あなたの手に持っているそれは?」

「おお! これは、これは、私としたことが失礼いたしました。まずは、こちらをご覧ください」


 シャレードが優雅に左手を胸に当ててお辞儀をした後に、両手でその紙を差し出してきた。

 その紙を受け取った後も、腰を落としたまま、ツツツと小股で後ろに下がる姿が、何というか…… 


 本当にめんどくさいです。


 しかし、受け取ったその紙は、私の予想の斜め上を行っていた。

 それは、見た目以上に厚く上質な紙であった。


 差出人は、敵軍を取り仕切る将軍であり、その手紙の冒頭には “降伏勧告” と書いてあった。


「な、なに、これ……」

「カステリア軍のセコチビッチ将軍からの“降伏勧告”でございます」


 降伏勧告を読んでみると、その内容は受け入れ難いものであった。

 怒りが込み上がり、顔が熱くなるのが自分でも分かった。


 ──降伏勧告──


  【 告 】


 一、セプティミス国は直ちに無条件降伏を受け入れること。

 二、セプティミス国の女王はカステリア国に出頭すること。

 三、セプティミス国の領地はすべてカステリア国のものとする。

 四、上記の三項が守られた場合、セプティミス国女王の生命に限り保証する。


 本勧告の有効期限は、規約に従い、本勧告を譲渡してから一刻以内とする。


 カステリア軍 辺境方面軍

 将軍 セコチビッチ

 ──────────────


「なにこれ?」

「カステリア軍のセコチビッチ将軍からの“降伏勧告”でございます」


 思わず紙をクシャクシャに丸めてしまった。

 かなり頭にくる内容だった。


「それはもう、聞きました! そんなことじゃなく、なんなのよ、この無礼な手紙は」

「確かに、一国の将軍が書き留めたものにしては、いささか文面が稚拙にございますな。綴られた言葉に余韻がないばかりか、端々に卑しさが滲みでていて、貴族としての優雅さに欠けるつまらない手紙にございます」


 シャレードがご慧眼とばかりに頭を下げる。

 しかし、問題は “決して” そこではない。


 もう一度言います!

 私の怒りと余韻がないのは関係ありません!


「そうじゃなくって。 ああ、もう! この内容が受け入れられないって言ってるの!」

「ふむ……左様でございますか。しかしながら、“降伏勧告”を受け入れれば、レンカ様のお命はお守りできます。文面は美しくありませんが、条件は悪くないかと存じます」


 シャレードの言葉に、傍で聞いていたイーロインさえも異を発しない。

 無表情に直立したまま目を伏せ、佇んでいるだけであった。


「もし、もしもの話だからね……私がこれを受け入れるとして! 私は、助かるのよね……でも、あなた達はどうなるの?」

「処刑されますな」


 シャレードは、まるで他人事のように答えた。

 後ろのイーロインもまた、シャレードの受け入れ難い言葉に対して、ピクリとも反応をしなかった。


 無関心を装うことが、逆に確固たる意志を示しているようにも感じられる。

 シャレードもイーロインも、自分たちの処遇は二の次……まずは、私の命が最優先ということなのでしょうか。


 全然ダメですね!

 この人たちは!


 倒置法って、勢いで書いちゃうけど、後から見直すと、なんか恥ずかしくて平文に直しちゃうんですよね。

 なんとなく……


「なんで! あなた達はそれで平気なの」

「我らの命が果てることになっても、レンカ様をお守りする……我らは、そう言った存在でございます」


 思わず、ベッドの上に仁王立ちになってしまった。

 怒りでシャレードとイーロインを見下ろす。


 こんなに怒ったのは生まれて初めてかもしれません。

 教育的指導です!


()()()()()()! こうなったら戦争よ」

「「はっ!」」


 あらあら、私としたことが、随分と感情的になってしまいましたね。

 あまりお利口な選択とは思いませんが……好きですよ、こういうときのレンカは。


 ただ、もう少し落ち着きましょうか。

 冷静に、冷静に……


 まずは、状況把握が必要ですね。


「ふぅ……その前にお願い、何があったか説明して」

「はっは! レンカ様、承知いたしました」


 シャレードが優雅にお辞儀をする。

 こんな時でも貴族然とした態度がブレないのは流石だと思うが、まどろっこしい。


「簡潔にね!」

「はは! 仰せのままに」


 再度、お辞儀をされてしまった。

 もう “嫌がらせ” としか思えない。


「では、簡潔に……現在、我がセプティミス国は、カステリア国軍、24個小隊により半包囲されています。そして、ふむ……あと、四半刻ほどで開戦でございます」


 シャレードは、懐のポケットから、意匠の凝ったいかにも高価そうな懐中時計を取り出して眺めていた。

 その、表情は――骨なので、表情は分からいから雰囲気ですが――平素と変わらないように見える。


「な、な、なんて言ったの? ちょっと聞き間違いかなぁ……だって、相手は3個小隊だったはずなのに、なんか――24個小隊――って、聞こえちゃった! あはは、なんか、まだ寝ぼけているのかもしれないわ……」

「おお、これはこれは私としたことが、大変失礼いたしました。カステリア軍は――24個小隊――で間違いないでございます。それと、総攻撃が始まるまでの正確な時間は、私の時計では、あと28分25秒ほどでございます」


 大物貴族然とした、相変わらずの余裕な態度ですね。

 私より偉そうなのは……それは、良いのです。


 全く気になりません!


 何てったってシャレードは、私と違って生え抜きのリアル貴族なのだから、卑屈になられても、逆に恐縮してしまいます。

 しかし、できれば、皆んなで協力して、この国を盛り上げていきたいと思っています。


 だから、余計に腹が立ちます!

 何を、シレッと最重要情報を “今ごろ“ ぶち込んでくるのですか!


 このアホ骨は!


 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


【A little extra sweet】

 ここまで読んでいただき、ありがとうございます。

 明日も元気に投稿します。


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