第6話:小隊編成ができました
いつもより早めの更新です。
なるほど、こう見えるわけですね。
うーん、今更ながらですが、我が軍は2個小隊のみですか……少々寂しいですね。
──総軍リスト──
【レンカ軍】
本陣 / 未設定
小隊1 / GbSwS1
小隊2 / GbMxS2
──────────────
しかし、これでは強いのか弱いのか分かりませんね。
どう判断すれば、良いのでしょうか?
「レンカ様、【軍隊詳細】と念じれば、各小隊の詳細画面に移動できますわ」
「ん? こう」
──軍隊詳細──
【小隊1】
名称:GbSwS1
兵科:剣士 / 機動補正
武力:D
魔力:F
機動:E
戦気:1470/1470
隊長スキル:
【鼓舞/1部隊】
指揮スキル:
【物理耐性上昇(小)】
【突撃】
【隠密】
【鉄壁】
【小隊2】
名称:GbMxS2
兵科:混成 / 補正なし
武力:F
魔力:E
機動:F
戦気:920/920
隊長スキル:
【威圧/敵1部隊】
指揮スキル:
【槍衾】
【ファイヤー/単体】
【ウオーターパレット/範囲】
【治療】
──────────────
おお! さすがは、気配りの魔人、イーロインね。
言葉に出して質問しなくても “痒いところに手が届く仕様” でちゃんと答えてくれますね。
これなら、よく分かります。
それにしても、指揮スキルが凄いことになっていますね。
これも、加護スキル【指揮スキル / ランダム】の影響でしょうか。
隊長の個人スキルは小隊になっても使えるようですね。
それは良い情報ですが……なるほどなるほど、イーロインが強いと言った意味がわかりました。
注目すべきは指揮スキルですね。
指揮スキルは、隊長でなくても隊員が持っていれば、委譲して使えるみたいです。
あらためて見ると、指揮スキルの種類の豊富さが凄いことになっていますね。
もちろん敵軍も同じシステムだと思いますが、恐らく私が創る部隊はスキルの面でかなり有利になるのでしょう。
これなら私の加護が、飛び抜けて有用という意味も分かります。
同ランクの小隊同士なら、戦闘で負ける気がしません。
しかし、この配分はいかがでしょうか?
小隊1は武力系に、小隊2は魔法系に偏っていますね。
これはこれで悪くはないのでしょうが……
「どうでしょうか? レンカ様」
「戦力としては悪くはないと思うけど……この、2個小隊の役割は、拠点の防衛だったよね? 壁越しに一時的に守りを固めて、その隙にゴバブリンが各個撃破するのよね」
イーロインが、したり顔で頷く。
今回の作戦は、ゴバブリンが敵の3個小隊を撃破するための時間を、いかに、新しく作った2小隊が、稼げるかがキーになる。
「はい、その通りですわ」
「それだったら、小隊2の方が武力が低いのは、チョット心配かな」
ステータスを見ると、パラメーターは武力、魔力、知力しかありませんね。
恐らく、攻撃力と防御力はマスクされていて、トータル評価として武力が表示されるのだと推測できます。
同様に、魔法による攻撃力と防御力は魔力として表示されているはずです。
そして、今回の相手はゴブリン歩兵だから魔法は使わないと聞きました。
そう考えると、小隊1に比べて小隊2は接敵したときに武力が低いので不安になりますね。
せっかく産み出した魔人なのだから、できれば――と言うより、絶対に――失いたくない。
これから過酷な戦を強いる味方に対して、適当に配置を決めるのは、女王としてまずい気がします。
ここはゲームみたいな世界だけど、私も、魔人達も、本当に生きているのですから……
「さすがはレンカ様、ご明察ですわ。確かに、この配置はバランスが悪いですわ。そう言うときは【編成】をやり直すと、上手くいく場合がありますわ」
「難しいのね」
肩をすぼめる私に対して、イーロインは、かぶりを振って答える。
安心してください、とばかりに笑顔で一呼吸おく。
「コツがありますから心配しなくても大丈夫ですわ。1つは、なるべく小隊長と隊員の兵科も合わせるやり方です。初めのうちは、それだけでも構いません。兵科を合わせると、部隊の相性がよくなって、連携も取りやすくなるので、部隊補正がつきます。これは、【編成】上級になっても使えるテクニックですわ。もう一つは、スキルのコンボを考える方法ですが、こちらは追い追い身につけて行けば良いと思いますわ」
「なるほどね……」
兵科を合わせて部隊補正を狙うのが基本で、スキル同士のコンボを狙うのが応用ってことですね。
コンボスキルは何が発現するかわからないので、今回は保留ですね。
「では、チュートリアルの続きですわ。ツリーの画面で隊員を入れ替えてみましょう」
「ん? これは、チュートリアルだったの? まぁ良いわ。それなら、えっーと……さっきの要領で良いかしら」
再び【編成】ボードを開いて、小隊1の鉄壁持ちの槍士と、小隊2のファイヤー持ちの術兵を入れ替える。
そして【軍隊詳細】に戻ると、情報が更新されていた。
──軍隊詳細──
【小隊1】
名称:GbSwS1
兵科:剣士 / 機動補正
武力:D
魔力:F
機動:E
戦気:1140/1140
隊長スキル:
【鼓舞/1部隊】
部隊スキル:
【物理耐性上昇(小)】
【突撃】
【隠密】
【ファイヤー/単体】
【小隊2】
名称:GbSpS2
兵科:槍士 / 防御補正
武力:D
魔力:E
機動:F
戦気:1140/1140
隊長スキル:
【威圧/敵1部隊】
部隊スキル:
【槍衾】
【鉄壁】
【ウオーターパレット/範囲】
【治療】
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バランスは良くなりましたね。
小隊2の武力がFからDに跳ね上がったのは、兵科が混成(Mx)から槍士(Sp)に変わって防御補正がついた所為ですかね?
「イーロイン、兵科が混成から槍士に変わったのは、どう言う理由なの」
「さすがはレンカ様、よく気がつかれましわね」
イーロインが褒めてくれました。
なんだか、素直に喜べますね。
「そ、そう? 偶然よ」
「そんなことありませんわ、レンカ様。そうゆうことを気にしていただけるだけで、兵たちの生存率は上がりますから、これからもお願いしますわ」
「わ、わかったわ」
本当に、純粋に嬉しいです。
この正直さを、骨も見習って欲しいものです。
「それで、兵科のことでしたよね」
「はい!」
「兵科とは、個人なら兵種を表すものですが、部隊であるなら部隊の特性・特性を表したものですわ。部隊の人数の割合が、隊長と同じ兵科の隊員が50%以上を占めた場合、部隊は隊長と同じ兵科になりますわ。また、そのとき、兵科に応じた補正がかかりますが、この補正がけっこう強力なので、なるべく狙った方が良いのですわ」
「オーケーよ、理解しました」
イーロインの説明を聞いてスッキリしました。
後は “この部隊がどれだけ強いのか” ですが、なにぶん比較対象がないので分かりません。
しかし、イケてるのではないでしょうか?
敵のゴブリン歩兵小隊など、鎧袖一触な気がしてきました。
こればっかりは実戦投入してみないと、わかりませんが……
「うん! 良さそうね……でも」
「でも?」
イーロインの頭にハテナマークが点灯する。
「この女王は、何を言いだすのだろう」と、そんな顔をしています。
「何か……足らないのよね」
「何か? ですか」
パン!
思わず柏手が出ました。
そうです、アレが足らないのです! アレですよ。
「分かったわ! 名前よ! 名前がないのよ」
「名前? ですか……」
「そう、そう! それよ、足らないのは」
「名前なら、小隊1はGbSwS1で、小隊2はGbSpS2が、そのまま部隊名になりますが……」
「そう言うのじゃなくて! あっ、これね。ステータスオープン」
「あっ、いやそれは、ダメ!」
イーロインが慌てていますね。
コバブリンも口をパクパクして何かを言いたそうです。
鷹揚に構えていたシャレードさえ、とても焦った顔をしていますね。
でも……
間に合いそうにありません。
私には、皆さんが走馬灯のようにスローに見えます。
それは、私の思考が無茶苦茶に加速しているからだと思います。
あっ、これって、超常スキルとかではないですよ。
私には、たまにあるのです。
行動が先で、思考が後からついてくる現象が……
こういう状態になったら、勝手に体が動いてしまいます。
正確には、すでに動いてしまった後です。
そこに思考が追いつこうとして、凄い勢いで加速しているのだと思います。
よくわかりませんが……
なので、これはもう過去のことです。
今の私には止められません。
残念ながら、こっちサイドからは制御ができませんので……
頑張ってください、レンカさん。
果たして、今回は、何をしでかすのでしょうか。
「「「レンカ様! お待ちを(ゴブ)」」」
いま……
思考が追いつきました。
「えーっと、この人は『アルファ』、この人は『ブラボー』に決めました! 一度やってみたかったのよね、「こちら本部! アルファ隊、応答せよ」とか「ブラボー隊、援護にまわれ!」とかってやつ……ん?」
グニャ
あらら?
視界が歪みますね。
これはマズイかもしれません。
またもや、ブラックアウトってやつですか……
「「「レンカ様」」」
そこで、私は意識を手放してしまった。
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【A little extra sweet】
ここまで読んでいただいた皆様ありがとうございます。
明日も元気に更新します。