第4話:レンカ様の加護スキル
朝眠くて起きられません。
皆さんはいかがですか?
「では、魔人を召喚します」
「はっはー」
シャレードは、左足を後ろに下げると、右手をくるっと一回転させて左の脇まで伸ばしてから、上体を腰から丁寧に曲げる。
美しい流れだとは思いますが、今は臨戦です。
宰相だから貴族然とした態度も良いですが、もう少しお手柔らかにしてもらいたいですね。
「レンカ様、その前に少々よろしいでしょうか」
「は、はい? なんでしょうか」
イーロインさんも、ですか? これは焦らしプレイでしょうか。
もうすぐ敵が来てしまうのですが、少しは焦りませんか?
「レンカ様は加護スキルをお持ちでしょうか」
「はい?」
加護スキルときましたか……てゆうか、重要そうな話ですが、できれば軍議前に教えて欲しかったですね。
「あのぉ、加護スキルって何ですか? ないとまずいのですか」
「これは失礼いたしました。それではスキルについて説明させていただきます。私たち魔人は、大抵スキルを1個か2個持って生まれてきます。そこまでは良いですか?」
「ええ、まぁスキル自体が初耳ですが……もう良いです」
「し、失礼しました」
話が急展開すぎるのがいけないのでしょうが……
仕方がありませんね。
「レンカ様のような魔人の召喚主は、稀に召喚時にスキルを付与できる加護スキルというのを持った方がいらっしゃいます。そう言った召喚主から生み出された魔人は、他の魔人よりスキルが多くなりますので、自然と強い魔人になります」
この世界は、スキルの多さが強さの目安になるということでしょうか?
であるなら、加護スキルってやつは欲しいですね。
「つまり、召喚主によって魔人の強さが変わるってことですか?」
「その通りです。魔人の強さにはステータスによるものと、スキルによるものがあります。そして、スキルはとても強力な武器になります」
なるほど、ステータスよりスキル優先の仕様ですね。
ならば、ステータスはあまり関係ないのでしょうか?
「それでは、スキルが多い魔人が強い魔人ということですか?」
「スキルは、1日の使用回数に制限がありますので、スキル数を多く持った魔人の方が有利ではありますが、必ずしも強いと言うわけではありません」
うーん、この話……
重要ですよね。
なぜ、この話がいままで出てこなかったのでしょうか?
私が強い魔人を生み出せれば良いのですが、そうでなかったら、作戦の練り直しが必要ですよね。
頭が痛いですね。
私の役割って結構重要な気がしてきました。
「えーっと、それはどうやって調べれば良いのですか?」
「レンカ様の場合、聖痕の王笏を具現化させて、自分に向けて『ステータス』と意識すれば見えます」
後から後から、色々と重要情報が出てきますね。
しかし、仕方がないですね……どうせ一度に全てを理解するのは難しいでしょうから、都度都度でもちゃんと教えてくれれば結構です。
「分かったわ、やってみます。えーっと、具現化ね……」
「「「おお」」」
手の甲から青白く光輝く杖のようなものが出てきました。
これが王笏なのですね。
おっと! 3人が恭しく最敬礼しています。
これが私の力の源であり、存在意義そのものなのですね。
「レンカ様、その王笏をお手に持って『ステータス』と念じるのです」
「分かったわ」
さてさて、何が出ますかね。
『ステータス』
おお、出てきました。
これが私の情報ですか……
────ステータス────
名前:
レンカ・ラ・セプティミス
種族:人間
属性:聖
職種:女王 / 大元帥
装備:王笏 / 女王のドレス
/ 女王のティアラ
生命:❤︎❤︎❤︎❤︎❤︎❤︎❤︎❤︎❤︎
武力:D
魔力:S
知力:C
運気:B
特性:【神の祝福】
功績:――
スキル:
【ホーリーアロー/単体×3】
【治療/範囲×2】
ユニーク:
【魔人新化】
【魔人コイン合成】
指揮スキル:
【ホーリーアロー/範囲×2】
加護スキル:
【指揮スキル付与/ランダム】
──────────────
なんか、一気に情報が溢れましたね。
色々と吸収しきれません。
えーっと、私の名前がセプティミス・ラ・レンカとなっていますが気にしたら負けなのでしょうか。
それと、特性の【神の祝福】とかユニークスキルの2つとかも重要な気がしますが……
今は加護スキルが問題なのですよね。
おっ!
加護スキルあるじゃないですか!
さすがはレンカちゃんですね。
ひと安心です。
「あのぉ、これ皆さんにも見えてますか?」
「いいえ。レンカ様がお見えになっているステータスは私どもには見えません」
シャーレードが仰々しく頷く。
いちいち大げさなのはもう慣れました。
「でしたら、読み上げますけど、加護スキルの欄に【指揮スキル付与 / ランダム】と書いてありますが……これって、使えるスキルですか?」
「「「なんと(ゴブ)」」」
3人は顔を見合わせて絶句している。
その雰囲気から、私の加護が平凡なものではないことが理解できてしまった。
それが、良い方なのか、悪い方なのかはわかりませんが……
可能であれば、良い方に振れていると良いですね。
「あのぉ、皆さん大丈夫ですか? もしかして、がっかりとかされていませんか?」
「へっ? あっ! いやいや、女王様……失礼、レンカ様、これは驚きましたぞ!」
「その……どっちですか? 良い方なのか悪い方なのか……」
「もちろん、最高でございますよ! いやはやいやはや。こんな加護、初めて見ましたぞ。そ、そうですよね、イーロイン」
シャレードが珍しくキョドって、イーロインに話を振る。
イーロインは視点が定らないほど混乱していたが、急に何かが弾けたように、一気にまくし立ててきた。
「シャレード様の言うとおりですわ! レンカ様。これは凄いことですわ。 いいですか、加護にも格というものがあります。それは【素質付与】<【スキル付与 / 確率】<【スキル付与 / 系統】<【スキル付与 / ランダム】の順に格が上がっていきますの。その中でも、レンカ様の加護は、必ずスキルが付与されるスキル付与の中でも最高位のランダムですわ。しかもですよ、付与するスキルが指揮スキルに固定されているなんて初めて見ましたわ。普通付与されるスキルは、魔導系なら火魔法とか水魔法とかの1系統しかありません。武闘系統なら剣スキルとか槍スキルとかの、どれか1系統になります。そして、それらは全て魔人個人としての戦闘能力に反映されますが、逆に言ってしまえばそれだけです。しかし、指揮スキルとなると話が違いますわ。指揮スキルとは、指揮官……つまり、小隊長、中隊長はたまた大隊長などが、自分のスキルを隊全体の力として発動させるものですわ。そのため、単体スキルよりも数段上の威力を発生させることができる軍事用のスキルとなり得るのです。そんなことができるスキルが、全ての魔人に必ず付与されるのです。しかも、しかもですよ! ランダムなのです。ランダムということは、多種多様な強力な軍隊を作れる可能性があるということですわ。これは、本当に凄いことなのです。ちなみに指揮スキルですが、このスキルを自然に発現する魔人は、全体の10%しかいないのです。それでいて、もし発現したとしても召喚主の持っている属性に大きく依存するはずのなのです。ですから大国の軍には一定数指揮スキル持ちがいて、特色のある軍ができることが多いのですが、それはハマると強いのですが、その反面、弱点もあると言うことに繋がります。それに対して、レンカ様が生みだす魔人は、属性ランダムなので、軍隊同士が弱点を補完したり、相乗効果を持たせたりすることができますわ。つまり、軍の構成を戦略や相手の適性に合わせて思いのままに変化させることができるのですわ。これは、とてつもないアドバンテージなのですよ!」
「はぁ……そうですか」
うーん、今更で申し訳ありませんが読み飛ばし推奨とさせて下さい。
今後も、たまにこれをやらかしますので、くれぐれもご注意を。
要するに、軍隊には指揮スキルがとても重要で、私が召喚する魔人全員に、系統ランダムで指揮スキルがつくと言うことですね。
そんでもって、私が軍隊を作ると、他の国より強くなる可能性があるということですね。
でも、加護スキルなしで召喚しても、指揮スキルは10%程度の確率で発現するのですよね。
逆に言うと「今のピンチにはそれほど」ってことにならないでしょうか。
ランダムというのは、当たりもあれば、ハズレもあるってことですよね……
それに、敵が10人いたら、1人は指揮スキルを持ってるのですよ。
ハッキリ言って……そんなにレアとも思えないのですが?
うーん、指揮スキルが発現した人が、自然と隊長として育っていくならば、始めから全員が隊長候補というのは悪くはないかもしれませんね。
しかし、全員がエースっていうチームは、意外と脆いと言いますしね。
指揮スキルの性能が「どのくらい強力か?」ってことに依存するのかもしれませんね。
結論を言えば、アベレージを考えたら良いのかもしれないど、少数の兵士しか召喚できない今の状況に限って言うと、ハズレを引くリスクも高くて、決してプラスばかりではないと言うことでしょうか。
「分かったわ、イーロイン! 私の加護で召喚すれば有利になるのね!」
「はい! その通りです。レンカ様」
まぁ、何もないよりは有ったほうが良いのは確かですね。
少し勝機が見えてきただけでも良しとしますか。
要は雰囲気ですよね。
勢いが大切ですね。
「では、召喚しますが、良いですか?」
「「「レンカ様! よろしくお願いします(ゴブ)」」」
「いでよ!我がしもべよ、魔人召喚!」
あっ、これアドリブです。
雰囲気、雰囲気……多分、次からはやりません。
私が王笏を振ると、コインが弾けて地面に落ちて勝手に自転を始め、青白い光を発する。
その光が、水面にできた波紋のように大きく広がると、次第に模様を描きはじめ、終には魔法陣を完成させた。
魔法陣からミルククラウンのような光が漏れ出すと、下からシルエットがせり上がってきて、やがて魔人が姿を表した。
おお、魔人が一気に8体現れました。
なるほど、なるほど……こうしてみると立派な戦力ですね。
「ゴバブリン将軍! いかがですか? この兵たちは」
「ご立派でゴざいます。ゴブ」
ゴバブリン将軍のお墨付きももらったし、これで敵を迎え撃ちましょう。
たしか、作戦では2小隊を作って防衛するのでしたね。
そう言えば、小隊はどうやって作るのでしょうか?
号令すれば勝手に作ってくれるのでしょうか?
「だれか、小隊の作り方を教えてくださいな」
「はい! レンカ様、わたくしがお教えいたしますわ」
「ありがとう、イーロイン」
「はっ! それでは、まずは兵のステータスをご覧ください」
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【A little extra sweet】
ここまでお読みくださいました皆様、ありがとうございます。
明日も元気に更新します。