プロローグ:セプティミス国女王との邂逅
初投稿です。
今年は令和元年だし自分にとってもアニバーサリーな年なので、ギリギリすべり込みですが勇気をふりしぼって投稿します。もし読んでいただける人がいらしたらとても嬉しいです。
プロローグ
「あーもー、遅くなちゃった〜。何で私が遅刻したバイトの穴埋めしなきゃなんないのよ! 私だってバイトだっつーの」
無責任な大学生バイトとブラック店長をディスりながら、街灯のほとんどない夜の田舎道を一人寂しく自転車をこいでいると、それは突然やってきた。
ドッゴーーーン
「キャー」
急ブレーキをかけながらの緊急回避が見事に決まる……しかし、その後にバランスを崩してコテっと転がってしまう。
我ながら、最後の最後でしまらないです。
「痛たたた、なな、何! 何なのよ!」
今夜は快晴で満月だった。
そのため、夜中の割にけっこう明るい。
目の前では、何かが爆発したようで、紫煙が立ち上っている。
恐らくコレって、結構なハプニングなのでしょう。
よくよく目を凝らしてみると、煙の向こうに何かが見えた。
人の形をした黒い影がユラユラしているように見える。
「あのぉ、誰かいますか?」
返事がない……てゆうか、できないのかもしれない。
ゲガをしているかも、と心配になる。
「大丈夫ですか?」
「※△◇……✖️◎□。げふん、げふん」
煙の向こうの人は、相当動揺しているようで、何を言っているかわかりません。
それとも、外国の方でしょうか。
恐る恐る近づいて見ると、かなり埃っぽい。
幸いなのは、熱波もなく薬品臭もしないので、二次被害はなさそうです。
「あのー、本当に大丈夫ですか?」
「※∞〆△×◇……だ…い…じょう……ぶ?」
おお、日本語が話せますね!
外国語オンリーの方だと、ほぼ肉体言語に近いスーパーボディーランゲージを発動させなければならないので、日本語OKは嬉しい情報です。
ならばと思い、私もおどろおどろしい紫の煙の中に入っていく。
煙の中では視界が制限されたが、その方の近くまで寄っていく。
おっかなびっくりその方に近づくと、その姿をハッキリと視認できた。
感想は「コスプレですか?」で合っていると思う。
何と言うか、緑黄野菜の馬車から降りてきそうな、灰被り的なお姫様が、ゴージャスなプリンセスドレスを纏っていた。
テレビの中で、パレードとか迎賓館とかで見るアレですよね。
もしかしてコレって、高貴な方を狙ったテロとかですか?
いやいや、ここは関東平野の果ての果てですよ。
地元の方々は頑なに「ここは平野だ」と言い張っていますけど、地図上のカラーは緑色ではなく茶色です……つまり、結構な海抜と言うか標高を誇る、いわゆる山里、そう、田舎です。
過疎とまでは言いません。
しかし、豚さんがやたらと沢山いる割りに、人間の方には昼間でも滅多に会わないこの土地で、テロとかあまりメリットがないと思います。
昔流行った我が県からもたくさん排出されたビジュアル系ロックバンドの方々の一人でしょうか……うーん、世代が違いますね。
取り敢えず、失礼がないように対応しましょう。
私の敬語は大丈夫でしょうか?
小心者の私めは不安になってきました。
「あのー『SP』の方とか、いないんですか?」
「え……すぴ?」
いきなり失敗ですね。
無理して専門用語を使って恥をかいたパターンですね……ドラマの世界と現実を混同しました。
そもそもSPってなんでしょう?
スペシャルポリス……ではなさそうですね。
誤魔化しましょう。
「あっ、いえ、どこかの国の偉い方ですよね……えーっと、王族の方とか?」
「お……うぞく? ええ、私は、セプティミス国第6代女王のカミラです」
茶目っ気出して王族とか大袈裟に言ってみました。
本当はちょっとだけ嫌味が入った冗談だったんですよ。
しかし、いるもんですね……って、マジですか!
リアル女王様でしたか?
「ちょ、ちょっと待って下さい。いま……えーと、あっ! け、警察に連絡しますね。私スマホ持ってますから」
「けーさつ?」
「オー、ソーリー。えーと、ポ、ポリス、ワタシ、テルする、オーケー?」
「憲兵のことですか?」
「イエス、イエス、アー、ジャパン、ケンペイ、それがカムする、あ違ったカムズ ね!」
「それには及びません」
3単元のSを気にするところではなかったですね。
お陰で、女王様の言葉に対して理解が遅れました。
それにしても、色白、ブロンドヘアー、ブルーアイの西洋美人にビビってテンパってしまいましたが、この方日本語ペラペラですね。
今になって思いました。
「え? あ、そうですか。そ、それじゃぁ、どこに連絡すれば……」
「ここは地球ですか?」
かなり食い気味にザックリした質問がきました。
この質問に「ノー」と答えられる日本人がいるでしょうか……特殊な方々を除いて。
「まぁ、そうですね。普通はそう答……」
「だったら『聖地』に連れて行って下さい」
食い食いですね。
それに、聖地ときましたか。
「あのぉ、聖地と言うと、メッカとか……もう少しハードルが上がる紛争地的なアソコですか?」
「ん? ここは地球ではないのですか?」
「……いえ、地球です」
「では、聖地に行くことを所望します」
ループになりました。
困りましたね、こういう場合は大使館とかに連絡するのが良いのでしょうか。
まさかと思いますが、○○国の王、女愛の逃避行! なんてゴシップ記事に、王女を助けた謎の美少女とかで登場しませんよね。
すみません、私のフレーバーテキストを少し盛りました……少しですよ。
それにしても、これはいささか女子高生にはハードルが高いですね。
「オーケー、オーケーです。心配ご無用でぇす。あなたぁにぃ、必要な場所がぁ、わぁかりました! ポリースゥステェーション、ジャパンセイ、コーバンっていうのがぁ、あーりまぁす! そこまぁでぇ、私が案内しますぅ」
「あなた、お名前は?」
あっ、日本語ペラでしたね……どうも、この方の容姿につられてしまいます。
てゆうか、私の話は無視ですか? この方は。
「えーっと、私は姫宮恋華と言い、あっ、申されます。女王様? 陛下ですか?」
「ここは聖地『アキバ』に近いのですか? レンカ」
そうきましたか!
海外貴族様のアキバ巡礼でしたか……そちらがご所望とは意外でした。
それにしても、どこをどう間違えたらアキバを目指してここに辿り着くのでしょうか。
時計を見ると夜の10時を回っています。明日の宿題も終わっていないのに、さすがに面倒臭くなりました。
「えーっと、アキバまでですよね? ここからバス亭まで結構遠いので、徒歩で15分くらいかかって、あっ!でもこの時間だとバスないですよ。歩きだと駅まで2時間くらいかかります。そこから電車と言っても、アキバとは逆方向になってしまいますが40分ぐらいかけて大きな街に出ます。その駅から上野行き……えーっと、東京方面ですね。それに乗り換えると2時間ぐらいで上野に着きますから、後は山手線に乗り換えなんですが、もう終電とか終わってる感じがしないでも……あのー、ですから今日中に着くのは難しいですよ、女王様?」
「そうですか……」
女王様は落ち込んだように見えたけど、私の顔をチラリと見て、さらに二度見してきた。
目がキラキラと光るのが分かるぐらい、瞳孔が開いています。嫌な予感しかしませんね。
「なななな、何でしょうか? 」
「私には時間がありません。仕方がありません」
そうですよね。
諦めていただくと助かります……主に私のために。
大人しくお縄に……違いましたね、警察に保護されてください。
逆に心配なのは、地元の警察の方々が「ぼっち女王様がいるから保護して欲しい」と、言っても信じていただけない可能性が多々あることですね。
「はいはい」とか言って、通報スルーされないでしょうか。
ならば、酔っ払い事象として処理してもらうのもアリかもしれません。
とにかく国家権力様が来るまでは付き合いますが、そこからは国に任せましょう。
「レンカ! 簡易ではありますが、今ここで禅譲の儀をとり行います」
「そうそう、いまここで、ぜんじょー??」
はい?
なんて!
「左手を出して下さい」
「えっ? こ、こうですか?」
私の左手に女王様の左手が重なる。
世が世なら「恐れおおい」となるのでしょうが、今は開かれた王室ってやつでしょうか、フレンドリーに触れられます。
突然、女王様の左手が光りだしました。
なんのトリックでしょうか……かなりの光量なので少しビックリですね。
「え? 何コレ、熱い……いや、やめて! 怖い」
「動かないで!」
いやいや、無理無理、痛い痛い、ちょっとやめて!
左手の甲が焼けるように痛い。
光の強さが最高点に達すると、今度は一気に弱まって、終には夜の静寂さを取り戻す。
それに伴い、私の手の甲の痛みも収まった。
しかし、私の怒りは収まらないですね……どうしてくれましょうか。
国際問題ですよこれは!
「いったい何をしたんですか! いくら偉い人だからって許されませんよ!」
「ごっめんーんね! てへ」
あれ? 相変わらず美しい女王様には相違ないのですが、雰囲気がずいぶんと変わりましたね。
だからと言って許す気にはなれませんが。
「あのですね!」
「それでは、行ってらっしゃい、新しい女王様! 楽しんできてね。バイバイー」
一瞬の浮遊感を感じた刹那、人生で初めて意識がトビました。
さてさて、どうなるのでしょう。
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【A little extra sweet】
ここまでお読みになられて大変ありがとうございます。
ついに投稿してしまいました。
かなりビビってますが、しばらく毎日投稿しますのでよろしくお願いします。