あれぇ?
それぞれがそれぞれの方法を用い次の戦いに備えるなか、もう一つの戦いが始まろうとしていた。
「経験しているから、いや、経験しているからこそなのかな。この雰囲気なんか嫌だ」
再びこの地にやってきたミヤナカ、着いた途端にこんなことを口にした。
「これから戦おうっていうのに……。お前は何を口走っているんだ」
そんなミヤナカに苦言を呈するイソダ。大舞台に立つ後輩を後押しにしようと帯同してきた。
「別に来てもらわなくとも。先輩だって……」
「俺にもここに来なければならない理由があるってわかっているだろう。ここは別格だ。言い方は悪いがお前には実験台になってもらおうか」
彼らがいるのは競馬の聖地、競馬に関わるすべての人々が憧れるオークスやダービーが行われる夢の舞台。出走権を得た彼らは下見に来ていたのだが地方競馬に所属する彼らはまだ誰もいない会場にも関わらずすっかり舞い上がっていた。
「相変わらず仲がよろしいようで」
そんな二人を苦々しく思うかのように話しかけてきたのはキタイとシバヤマの両名、
「いまから言い訳でも考えていたのか。お前らには似つかわしくないもんな。せいぜい惨めな目に遭わないように身の丈に合った展開を考えておくがいい」
煽るように言い放つとそそくさとその場を離れようとする。
「なんだぁ、あんたがたも不安だらけなんだね。こんな事でも言ってないと心がもたないんだ」
そんな二人にミヤナカが言い返す。なかなかいい度胸をしている。
「実はさ、オレも乗ることになったんだけどね。何か言ったほうがいいのかな」
そうイソダも言い返す。
「そんなの初耳です」
「あれ、言ってなかった?」
「おい、俺ら無視して痴話喧嘩してるんじゃねぇ」
「あら、痴話喧嘩だなんて。私達そんな関係じゃないですから」
言い争いになりそうな雰囲気にいらついた二人の言葉につい反論するミヤナカ
「ふん、羨ましいか」
とイソダも煽りだす。
「そういうことを言っているんじゃねえんだ」
そう言い残し二人は去っていく。
「なんか誤解されてませんか」
「俺はそう思われてもいいけどな」
「ちょっと……、なに言っているんですか」
照れているような表情でそう言うミヤナカに対し
「なに本気にしているんだ」
そう言い返すイソダ
「……、ばかぁ!!」
それ以上何も言えないミヤナカに
「ほら、弱気なお前は消えただろう。これで大丈夫だろう」
「ああ、そういうことだったんですか。まあ、戦えそうなきがしてきました」
そうは言ったもののミヤナカの心にはべつの気持ちが湧いてきた。
(もしかして……)




