新たなる挑戦④
暴走したエンドロールはわれを忘れたかのようにひたすらに突進する。レース中にもかかわらずただまっすぐに突き進む。
そんな様子を見た観客たちが騒ぎ出す。だが彼らは何もできはしない。ただこれから起こることを目にするだけである。
「おい、なんかおかしいぞ」
騎手の一人がおもわず叫ぶ。ただ今はレース中、彼らはレースに集中するのみである。
馬群は3コーナーに差し掛かる。騎手たちはそろそろかなと仕掛けるタイミングをはかる。
「先輩なにやっているんですか」
イワザワはこのときエンドロールの異常な動きが気になって仕掛けのタイミングが若干ズレた。
「しまった」
その焦りが馬に伝わった。馬群から離されてしまった。その時、観客席から悲鳴にも似た叫びが聞こえたような気がした。ふと後ろを振り返ってみると彼の目に映っていたのは3コーナーを曲がらずに直進してしまったエンドロール、彼は暴走したあげくコーナーを曲がることなくそのまま3コーナーの外ラチギリギリまで逸走してようやく止まった。
誰がどう見ても競走中止である。だがイソダはこんな状態でもまだ諦めてはいなかった。
「落ち着いたか? さあ、行こうか」
その声に促されるかのようにエンドロールは再び走り始めた。
先頭の2頭は誰にもかわされることなく直線に入った。こうなると鞍上の騎手に欲が出てくる。その欲によってしなくてもいい余計な行動をおこしたりするものである。
「行けるぞ、行けるぞ」
まだゴールもしていないのに彼らはこの先に起こるであろう出来事を想像して浮かれだした。そのせいで手元が狂い出す。
「おい、何してんだ。ちゃんとまっすぐ走らせろ」
「それはこっちのセリフだ」
互いにふらつき出した先頭の二頭を避けるように外に持ち出した後続集団のさらに後ろにいたイワザワはそんな様子を見てうんざりしていた。
「何だよこれ。なんてくだらないレースなんだ」
彼はもうやる気をなくしていた。だが彼は再びやる気を取り戻す。
ふと何気なしに後ろを振り返るとそこにはエンドロールが全力でゴール目指して走り込んできていた。
「全くあなたって人は……」
「すまんな、でももう大丈夫だ」
エンドロールがイワザワの騎乗馬を交わしていく際、イソダがそう言ったように思えた。
「これ以上あなたの好きにはさせませんよ」
猛追するエンドロール追いかける。
彼ら二頭だけがまるで別のレースをしているように周りが思ってしまうほどに他とは脚色が違っていた。
あっさりと馬群を外から抜き去ると先頭の二頭に追いつく。そして差したところがゴールであった




